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研究の背景及び目的
地方病性牛白血病(EBL)は、牛白血病ウイルス(BLV)の感染によって引き起こされる牛の白血病である。本疾病に対するワクチンや治療
法はない。そのため、本疾病のコントロールには持続感染牛から非感染牛へのウイルスの伝播を防ぎ、新たな感染牛を発生させないこと
が肝要である。そのため農場レベルのみならず、地域レベルのBLV対策が必要である。そこで本研究は、五ヶ瀬町を含む西臼杵郡におけ
るBLVの疫学調査と持続可能な監視プログラムの開発を目的とする。
実施状況
1.疫学調査の結果
西臼杵郡内全戸全母牛4881頭のBLV抗体検査を実施し、陽性を示した個体は43頭で有病率は個体レベルで0.88%、農場レベルで2.1%であっ
た。
3.監視プログラム案
2.遺伝子系統樹解析の結果
今回検出されたウイル
スのうち88%(22/25)が
同一のサブグループに
属していた(●で示した
個体)。残る3株もそれ
ぞれわずか一塩基異な
るだけであった。ほとん
どの陽性農家で遺伝的
に非常に近いウイルス
が検出されていることか
ら、多様な侵入経路でこ
の地域に入ってきたの
ではなく、地域内の牛の
移動で農家から農家へ
広がっていったことが推
測された。
【案1】無作為抽出法
西臼杵郡の繁殖牛約4800頭において、0.2%(500頭に一頭)の感染
牛を99%正確に摘発するために、無作為抽出で毎年1921頭を検
査。
【案2】感染の危険度に基づいた抽出法
危険度の高い農場を重点的に検査することで、調査の精度を維持
しつつ全体のサンプル数を少なくする方法。
【案3】小規模モニタリングの繰り返しによる抽出検査法
危険度の高い農場を重点的に検査するこ
とで、調査の精度を維持しつつ全体のサ
ンプル数を少なくする方法。現時点で西臼
杵郡がBLVフリーである可能性が50%であ
るとすると、毎年60戸抽出検査してすべて
抗体陰性だった場合、各年のBLVフリーで
ある可能性は以下のようになる。
・1年目:53.0%
・5年目:64.5%
・10年目:76.7%
【案4】と畜場出荷牛やJA肥育センターの導入牛を対象にした検査
と畜場採材の場合、3年前の繁殖農家の状態が検査結果に反映されるため、現状把握にはなら
ない。子牛出荷頭数の多い大規模農家に偏った抽出となるため、モニタリングの精度が低い。
一斉検査で検出された母子感染(垂直・水平含む)の発生率が36.0%(9/25)だったことから、同
じ精度で調査する場合は母牛を対象とした調査の倍以上の頭数を検査する必要がある。
【結論】宮崎県延岡家畜保健衛生所との協議により、全戸巡回の際に、無作為抽出サンプリングを実施すること
になった。2年間で全800戸を巡回することから、各農家平均1頭採材した場合、年間400頭の抽出検査が可能。
目標の達成度及び成果
当初の目標である牛白血病清浄化のた
めの持続可能な監視プログラムの作成に
成功した。この研究成果は下記の国際学
会で発表した。
14th International Symposia on Veterinary Epidemiology and
Economics. Eradication of bovine leukaemia virus infection at
a regional level in Kyushu, Japan: Scenario tree modelling of
the surveillance system (14ht ISVEE), 2015年11月,メキシコ
・所属:農学部獣医学科産業動物伝染病防疫学研究室
・名前:関口敏
・地域志向教育研究経費区分:地域課題解決型
・対象となる領域:B
今後の課題及び展開
清浄化によってもたらされる経済効果は一部関係者の間で取り
沙汰されているものの、体系的な調査や分析は行われていな
い。清浄化によるブランド価値や健常牛の需要動向を把握し、情
報を見える化することは、組織経営体や個別経営体の出口戦略
や様々な意思決定に欠かせない材料となり得る。今後は牛白血
病を清浄化することによって得られる牛のブランド価値を評価す
るための調査研究が必要である。
<問い合わせ先>
みやだい COC 推進機構
住所:宮崎市学園木花台西1-1
Tel: 0985-58-7250
E-mail: [email protected]