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研究の背景及び目的
アジア地域において安全・安心で健康的な日本の農畜産物に対する需要が高まる中，陸上・海上輸送時の温度管理は，農産物の鮮度や生体
家畜の健全性を保持する上で，重要な課題である．一方で，コンテナ内の冷蔵・空調負荷は，農畜産物の輸送コストの増加につながる．
本研究では，輸送用コンテナに遮熱塗料を塗布することにより得られるコンテナ内への熱流およびコンテナの内部の温度上昇の抑制効果を
調査する．そして，冷蔵や空調負荷を低減し，低輸送コストで農畜産物の鮮度や健全性を保つ適温輸送のためのコンテナ壁部材の開発を目的
とする．
実施状況
日射を受けるコンテナの熱流，温度，湿度の測定
遮熱塗装試験板の表面温度と熱流の測定
外壁板に通常塗料が塗布された実物のコンテナの天井パネルと
扉パネルを通過する熱流，天井パネルと扉パネルの表面温度，コ
ンテナの内部における温度と湿度を測定する．
塗料の種類と塗装方法の異なる３種類の試験板（縦150mm×横
300mm×板厚1mm）を用いて，ハロゲン光による照射試験を行い，
試験板の表面温度と熱流に及ぼす遮熱効果を調査する．
◆測定対象
2014年 8月27日(木)，宮崎港コンテナヤードにおいて，図１に
示す実物の12フィートコンテナについて測定を行った．コンテナ
の外壁板は青色の通常塗料により塗装されている．
◆試験板
塗装Ａ通常塗料を２回塗布した試験板
塗装Ｂ遮熱塗料を２回塗布した試験板
塗装Ｃ遮熱プライマー（下塗り）を１回塗布した上に，
遮熱塗料を１回塗布した試験板
表１に，コンテナの天井パネルと扉パネルの表面における最高
温度および最低温度を示す．扉パネルの内表面における最高温度
は天井パネルの内表面における最高温度よりも高い．
図２に，天井パネルと扉パネルの内表面における熱流束の時間
変化を示す．扉パネルの内表面における熱流束は正値から負値に
変化する．12：10以前では，扉パネルの外側から内側へ熱が流入
し，12：10以降では，扉パネルの内側から外側へ熱が流出してい
る．一方，天井パネルの内表面における熱流束の値は 8～20W/m2
であり，天井パネルの内表面における熱流束の時間変化は扉パネ
ルの内表面における熱流束の時間変化よりも小さい．コンテナに
おける熱の流入には扉パネルの影響が大きいことがわかる．
図３に，コンテナの内部における温度の時間変化を示す．コン
テナの内部における温度は40℃程度である．
図４に示すように，発泡スチレン製ブロックからできた試験板
台に試験板を置いて，500 Ｗのハロゲン光を600 秒間照射した．
図５に，各試験板の裏面温度の時間変化を示す．照射開始時，
試験板の裏面温度は25℃程度である．照射開始後600 秒経過後に，
塗装Ａでは55℃，塗装Ｂでは53℃，塗装Ｃでは51℃である．塗装
Ｂ，Ｃにおいて遮熱塗装による温度上昇抑制効果を確認できる．
塗装Ｃにおいて温度上昇抑制効果が最も大きい．
図６に，各試験板の裏面における熱流束の時間変化を示す．照
射開始20秒経過後に，塗装Ａでは 100W/m2，塗装Ｂ及び塗装Ｃで
は85W/m2，また，600秒経過後に塗装Ａでは200W/m2，塗装Ｂでは
190W/m2，塗装Ｃでは185W/m2である．塗装Ｃでは，裏面における
熱流束が最も低く，温度上昇抑制効果が最も高いことがわかる．
表１天井パネルと扉パネルの表面における
最高温度および最低温度
位置
天井パネルの外表面
天井パネルの内表面
扉パネルの外表面
扉パネルの内表面
最高温度(℃)
最低温度(℃)
60.5
43.6
48.4
46.0
49.4
42.1
34.4
37.1
図１ 12フィートコンテナの外観
図２天井パネルと扉パネルの内表面に
おける熱流束の時間変化
図4 試験板のハロゲン光照射実験
図３コンテナの内部における温度の
時間変化
目標の達成度及び成果
外壁板に通常塗料が塗布された実物の12フィートコンテナにおけ
る天井パネルと扉パネルを通過する熱流，表面温度，コンテナの内
部における温度および湿度を測定した．
そして，塗料の種類と塗装方法の異なる試験板に対して，ハロゲ
ン光照射試験を行い，試験板の表面温度と熱流束を測定し，遮熱塗
料による温度上昇抑制効果を明らかにした．
遮熱塗料を塗布した試験板の表面温度は，通常塗料を塗布したもの
よりも低く，試験板を通過する熱流束も小さい．さらに，遮熱塗料
の塗装方法により表面温度の上昇抑制および通過熱流束の低減が可
能であることが明らかになった．
・工学部機械設計システム工学科
・河村隆介(代表者)，吉田卓史，久保宏志(研究学生),
村杜英秋，荻原英範((株)宮防,研究協力者)
・Ⅲ．自由公募型
・地域志向研究領域
図5 試験板の裏面温度の時間変化
図6 試験板の裏面における熱流束の
時間変化
今後の課題及び展開
 コンテナの通常塗装と遮熱塗装による熱流束，表面温度および
コンテナの内部における温度と湿度を比較するための小型コン
テナ模型の試作
 コンテナにおける遮熱塗装による熱流束および温度上昇の抑制
効果を高めるための壁材の開発
 通常塗装および遮熱塗装された小型コンテナ模型を用いた農産
物の鮮度の比較
＜問い合わせ先＞
みやだい COC 推進機構
住所：宮崎市学園木花台西１－１
Tel: 0985-58-7250
E-mail: [email protected]

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