27P-pm176

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p-DDAP のマウス皮膚への優れた効果とその作用機構
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◯藤生 泰範 1 ,
高橋 典子(
星薬大・医薬研・病態機能制御学)
皮膚は外界刺激に対する体の保護、新陳代謝産物の体外へ排泄、体温調節といっ
た重要な役割を担っている。皮膚において、表皮にはケラチン、真皮にはコラー
ゲン、エラスチン、及びヒアルロン酸等の細胞外マトリックス (ECM)、並びにそ
れらを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ群 (MMPs) 等の ECM 分解酵素
が存在し、正常な皮膚機能の調節に関与している。一方、レチノイン酸 (RA) は、
表皮細胞の分化抑制作用を示し皮膚改善効果を現すことが知られている。その作
用機構は、RA 核内受容体を介する機構で説明されるが、受容体に結合しないレチ
ノイドでも RA と同等の作用を示すことから不明な点も多い。そこで本研究では、
RA に代わる化合物として新規に合成したレチノイド p-DDAP の皮膚における効
果をマウス皮膚を用いて検討した。皮膚に RA あるいは p-DDAP を塗布した場合、
RA では炎症が観察されたが、p-DDAP では見られなかった。また、組織切片をヘ
マトキシリン・エオシンで染色後顕微鏡下観察したところ、対照群と比較して両
化合物塗布群では表皮過形成が見られた。さらに、両化合物を塗布した皮膚の粗
抽出液中の MMPs 及びヒアルロニダーゼ活性は対照群に比べ有意に減少していた。
また、両化合物塗布群では対照群と比較して発現量の異なる蛋白質が認められ、
両者ともケラチン 16 の発現量が増加していた。以上の結果から、p-DDAP は RA
と同様に、ECM 分解酵素及び表皮細胞の分化に対する抑制作用を示し、炎症作用
のない p-DDAP は RA より優れた皮膚改善薬となる可能性が示唆された。また、両
者の共通の効果にケラチン 16 が関与している可能性が示された。