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論
文
内
容
の
要
旨
与える影響についても検討した。10 週齢雄 SD ラットを去勢し 28 日後に新鮮凍結切片を作
成、免疫組織化学法ならびに Alcian blue 染色を行って、sham 群と比較した。去勢により
論文提出者氏名
論
文
題
椋代
茂之
目
Differential responses to steroid hormones in fibroblasts from the vocal fold,
trachea and esophagus
声帯線維芽細胞の AR 発現は細胞全体に分布した。粘膜固有層内の ECM の分布に大きな変化
はなかったが、ECM 発現が低下する傾向を認めた。
以上からステロイドホルモンは声帯・気管・食道の線維芽細胞に対して、直接受容体を
介して作用し、細胞増殖や ECM 発現に影響を与えることが示された。また線維芽細胞は部
位により ECM 関連遺伝子の発現が異なり、ステロイドホルモンに対して様々な反応性を有
論文内容の要旨
線維芽細胞は結合組織に存在して細胞外マトリックス(ECM)を分泌し、多くの組織の構
造を維持する役割を果たしている。これまでの研究で線維芽細胞は性ホルモンやグルココ
することが示された。特に声帯線維芽細胞は気管・食道線維芽細胞に比べて AR を強く発現
しているためにテストステロンの強い影響を受けている可能性が示唆された。これらの結
果は、声変わりや変声障害の基礎的解明につながるものと考えられた。
ルチコイド等のステロイドホルモンの標的であることがわかっている。また全身に存在す
る線維芽細胞は組織や臓器によってその性質が異なるとされる。しかしながら部位による
線維芽細胞のステロイドホルモンへの反応性の違いやその作用機序を詳細に検討した報告
は少ない。声帯は、思春期の声変わりや、声帯瘢痕がグルココルチコイド投与により改善
することなどが示すように、ステロイドホルモンの重要な標的と考えられる。本研究では、
声帯の線維芽細胞とそれに隣接した気管・食道の線維芽細胞に対するステロイドホルモン
の作用やその機序について比較検討した。
実験には 10 週齢雄 SD ラットを用いた。声帯・気管・食道の線維芽細胞を培養し、免疫
染色によりアンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体α、グルココルチコイド受容
体の発現と 10-8M の各種ホルモン(テストステロン(T)、エストラジオール(E2)、コル
チコステロン(CORT))添加による細胞内分布の変化を調べた。エストロゲン受容体αは
全ての線維芽細胞で陽性であり、E2 添加の有無に関わらず主に核に存在した。グルココル
チコイド受容体は全ての線維芽細胞で陽性であり、主に核に存在したが、CORT の添加によ
り核に限局した。AR は一部の線維芽細胞で陽性であり、T の添加により核に集積した。声
帯・気管・食道の線維芽細胞における AR の発現を免疫陽性率と Real time RT-PCR 法を用
いて比較した。その結果、声帯線維芽細胞に最も強い発現がみられた。組織切片の免疫染
色でも、声帯線維芽細胞の約 37.5%が AR 陽性であったのに対して気管・食道線維芽細胞は
AR の発現を認めず、この結果と矛盾しなかった。またこれら 3 種類の線維芽細胞における
ECM 関連遺伝子(プロコラーゲン I・III・エラスチン・ヒアルロン酸合成酵素 I)の発現を
Real time RT-PCR 法を用いて比較した。部位によりその発現が異なり、特にエラスチンは
声帯線維芽細胞で、ヒアルロン酸合成酵素 I は気管線維芽細胞で強い発現を認めた。次い
で 3 種類の線維芽細胞に 10-8・10-9M の T・E2・CORT を添加し 48 時間後に細胞増殖能と ECM
関連遺伝子の発現を調べた。全ての群で細胞増殖は抑制された。ECM 関連遺伝子の発現は T
を添加した声帯線維芽細胞でのみ全て増加し、E2 や CORT を添加した群では抑制された。
去勢が声帯組織の AR や ECM(コラーゲン I・III・エラスチン・ヒアルロン酸)の発現に
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