【第 117 回スライドカンファレンス 座長コメント】 S2562 肺病変 胃の印環

【第 117 回スライドカンファレンス
S2562
座長コメント】
肺病変
胃の印環細胞癌、および肺癌性リンパ管症〒PTTM (Pulmonary tumor thrombotic
microangiopathy)で剖検となった一症例について、組織所見から発症機序、死因の考察まで簡
潔にまとめられていた。医学部 5 年生の学生の発表であり、今後に期待したい。
S2563
鼻腔腫瘍
鼻腔 Low-grade nonintestinal adenocarcinoma の典型例を提示していただいた。鑑別には良
性腫瘍や過誤腫(特に Respiratory epithelial adenomatoid hamartoma, REAH)が挙げられ
た。本症例では一部で REAH 様の所見があり、REAH を背景病変として発生した腫瘍であると
考えられ、示唆に富む症例であった。
S2564
耳下腺腫瘍
診断投票では大多数が Lymphoepithelial carcinoma であったが、演者は腫瘍の上皮成分が扁
平上皮への分化を示しており、未分化ではない点、および EBER の発現が認められなかったこ
と を 根 拠 に 、 Nonsebaceous lymphoadenoma の Malignant counterpart と し て の
Nonsebaceous lymphoadenocarcinoma と診断された。診断名をどうするかについてはさら
に検討の余地があると考えられる。
S2565
耳下腺腫瘍
典型的な Epithelial-myoepithelial carcinoma の成分と、Schwannoma-like な形態を示す成分
からなる腫瘍で、両者には移行像がみられ、MIB-1 labeling index はともに 10%未満で
Low-grade の範囲の腫瘍であるということを説明された。後者の成分が優位であり、どこまで
EMC の診断名が許容されるかという点が議論になったが、免疫染色なども併せてわかりやすく
解説していただいた。
S2566
胃病変
胃粘膜に発生した限局性の Russel body gastritis の症例である。除菌に反応があり、H.pylori
との関連が示唆された。会場からは追加治療の有無について質問があり、ESD がなされたとの
ことである。投票の大半を占めた MALT リンパ腫、Plasmacytoma、Granular cell tumor など
は免疫染色結果から否定的であった。
S2567
膵腫瘍
膵尾部に発生した Solitary fibrous tumor の一例である。間質を占める patternless
pattern の構造、免疫染色結果より典型的な症例であった。
S2568
腎盂腫瘍
腎盂より発生した肉腫型浸潤性尿路上皮癌の症例である。肉腫成分には、骨肉腫および軟骨肉腫
成分が見られた。腎盂粘膜には上皮内癌を伴っていたが、通常型の浸潤性尿路上皮癌成分は含ま
れていないが、免疫染色結果から、尿路上皮由来であると考えられた。
S2569
前立腺腫瘍
前立腺由来の平滑筋肉腫の一例。細胞像から平滑筋系腫瘍が示唆された。良悪性については、核
分裂像が不明瞭であり、MIB-1 標識率から悪性が示唆された。また、発生部位は膀胱および前
立腺の境界部であり、どちらとも決めかねる印象を受けた。診断に関しては、会場から特に異議
は出ず、演者の診断どおりであった。
S2570
脳腫瘍
小脳半球に発生した小児脳腫瘍。腫瘍の間質には storiform pattern を思わせる fibrillar
stroma が見られることから、desmoplastic infantile ganglioglioma も鑑別に挙がった。間質
は Reticulin 染色と Masson trichrome 染色には陰性であり ganglioglioma と診断された。
Dysplastic ganglion cell が BRAF 陽性を示した点は興味深く感じられた。
S2571
左前頭葉病変
Meningioangiomatosis に関連して発生した meningioma の1例。鑑別としては angiocentric
glioma が挙げられたが、
皮質内病変の血管周囲の紡錘形細胞は EMA 陽性の meningothelial cell
であることが示された。
S2572
多発性脳病変
高齢者の小脳に発生した Cryptococcosis の1例。ホルマリン固定パラフィン切片を用いた HE
及び Grocott 染色標本からの病理組織診断は容易と思われた。しかし血管内リンパ腫疑いとい
う臨床診断の元、術中迅速標本による診断は困難と考えた。本例のような病変も念頭の置きなが
ら迅速診断を行うことが必要だと感じた。
S2573
腎腫瘍
腎癌組織内に脂肪細胞成分がみられた症例。腎癌は淡明細胞型で、CAⅨ陽性であった。癌組織
内の脂肪細胞には一部に CA Ⅸ陽性像がみられた。脂肪の成り立ちとしては、癌の化生により
できたということである。また、演者は本例のような所見を過剰にとらないことを強調し、反対
に過小評価となる危険性も指摘された。
S2574
腎腫瘍
乳頭状増殖に加えて肉腫様組織像を示した腎腫瘍について、腫瘍の組織像や免疫染色パネルを用
いて丁寧な鑑別診断が行われた。HMWCK〃UEA-1 一部陽性、p63 陰性。また、非腫瘍部の集
合管上皮の異形成、間質線維化など、collecting duct carcinoma の WHO 診断基準をほぼ満た
していることが示された。
S2575
腎腫瘍
TFE-3 陽性を示す転座型腎癌の例。FISH で転座が確認された。やや大型の核と核小体を有する
淡明な細胞が乳頭状増殖を示しており、石灰化を伴っている。また少量ながらメラニンが観察さ
れた。ASPL や PRCC 転座ではメラニンはみられない。NonO は FISH 所見から否定的。PSF や。
その他の転座であろうとのことであった。
S2576
左大腿軟部腫瘍
かなり稀な腫瘍であるが、病歴と HE 標本のみに基づく診断投票で、92%以上の一致率を示し
た。本例が臨床病理的事項や組織像において典型的であることが伺われる。また、免疫染色や腫
瘍特異的遺伝子についてのデータも十二分に揃えられており、この腫瘍のリファレンスとなりう
る標本と発表内容であった。
S2577
左卵巣腫瘍
follicular pattern, pseudopapillary pattern を示す juvenile GCT 症例。
40 歳代と年齢が高く、
組織像としては多形、濃染の強い核が見られないこと、さらには、対側に今回と類似した組織像
の既往がみられるなどが、この症例の特徴として挙げられる。Adult GCT との鑑別では、coffee
bean をとる核がみられない、Call-Exner body がない、FOXCL 変異がないことが挙げられた。
S2578
卵巣腫瘍
Homologous type の carcinosarcoma 症例。
上皮成分は serous carcinoma と解釈されていた。
Neuroendocrine feature も窺われ、CD56 陽性をもって neuroendocrine differentiation との
ことであったが、Synaptophysin, Chromogranin は陰性で、やや evidence としては弱いか。
なお、neuroendocrine としても予後不良の因子となるかはまだ不明とのこと。
S2579
右付属器腫瘤
卵管間膜を主座とする腫瘍。Wolffian tumor は比較的組織像に variation が多く、特異的な
marker もないが、
Serous adenocarcinoma をはじめとした卵巣由来の腫瘍が除外されており、
本症例はそれに合致すると考える。壊死、うっ血など、捻転が組織像に影響しているものと考え
られた。
S2580
全身リンパ節腫大
Plasma cell type の Castleman's disease(CD)の組織像をとる TAFRO 症候群の1例。演者
が血管硬化像と示していたものは、通常の硝子化血管とは異なり、内皮腫大も顕著な印象を受け
た。ただし、TAFRO 症候群の有無が CD において組織像の違いとして認識できるか否かは現在
のところわからないようである。なお、骨髄生検はなされておらず、骨髄の線維化は不明。