新二法に思うこと

提
言
新 二
法
に 思
う こ
と
中 野
和 仁
昨年6月 農林 水 産 省 は 「
新 しい食 料 ・農 業
2条 に始 めて 出て くる。 そ れ を具 体 化 しよ う
・農村 政 策 」 を 明 らか に し、 それ を 具 体 化 す
と した のが 国 が 直 接 農 地 の 売 買 等 に優 先 的 に
るた め 、 農 政審 議 会 で の今 年1月
「
農業構造
介 入 す る農 地 管 理 事 業 団法 案 で あ ったが 、 二
経 営 の 課 題 と対 応 の方 向 」 と 「
今 後 の 中山 間
度 の 廃案 とな った 。 私 は その 法 案 の成 立 にか
地 域 対 策 の 方 向 」 とい う中 間 と りま とめ を経
か わった が、 それ が 通 らな い な らば と思 っ た
て、 「
農 業経営基 盤の強 化のた めの関係法律
こと、 農 地事 情 は地 域 に よ って 異 な るので 、
の整 備 に関 す る法 律 」案(農 用 地 利 用増 進 法
県 や市 町 村段 階 に農 地 の 中 間保 有 機 能 を もっ
の 一部 改 正=農 業 経 営 基 盤 強 化 促 進 法 、 農地
機 関 を設 けた 方が よ い と考 えて 、 農 地 法改 正
法 の 一 部 改正 等7法 律 の 改 正)と
「
特定農山
に よ って 農 地 保 有 合理 化 法 人 を設 け る こ と と
村 地 域 にお け る農 林 業 等 の活 性 化 の ため の 基
した。 それ か ら20有 余年 、 農 地法 に よ る農 地
盤 整 備 の 促進 に 関 す る法 律 」案 と して 国 会 に
保 有 合 理化 促 進 事 業 は 新 法 で そ の事 業 範 囲 を
提 出 した 。(こ の 冊 子 の で る 頃 に は成 立 して
農 地 の売 買、 貸 借 の ほか 、 農 地 信託 事 業 、 農
い る こ と と思 う。)そ の ね らい や 内容 に つ い
業 生 産 法 人 出 資育 成 事 業 、 研 修 事 業 を加 え て
て は多 くの 紹 介 や 解 説 が あ るの で 、 それ に譲
農 業 経 営 体 を総 合 的 に育 成 す る 「
農地 保 有 合
り、 こ こで は これ ら二 法 との 関連 で私 の関 心
理 化 事 業 」 とな り、 そ の事 業 を行 な う農地 保
事 に若 干 ふ れて み た い と思 う。
有 合 理 化 法 人 は新 法 で 規 定 され る こ と とな っ
た。 この 事 業 に か か わ って きた私 に と って こ
農 業経 営 基 盤 強 化 促 進 法 で 「
農 地 保 有合 理
化 事 業 」 は 農用 地 の 利 用 集 積 の ため の 手 段 と
れ ま での 経 緯 を頼 りみ て 感 無量 の もの が あ る。
して 重 要 な 位 置づ けが 与 え られ た。 この 事 業
農 地保 有 合 理 化 促進 事 業20有 余年 の 実 績 を
は昭 和45年 農 地 法 改正 に よ って農 地 保 有 合 理
み る と、 東京 都 を 最 後 に全 都 道 府 県 に設 立 さ
化 促 進 事 業 が 創 設 さ れ た こ とに始 ま る。 「
農
れ た 農 業 公社 は平 成4年 度 まで に農 用地 の 買
地 保 有 の 合 理 化 」 と い う言 葉 は農 業 基 本法 第
入16万9千ha、
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売 渡14万9千ha(平
成4年
度 末 融 資 残 高755億 円)、 借 入3万6千ha、
が 、新 法 で 農 地 信 託 事 業 等農 地 保 有 合 理 化 事
貸 付3万haを
行 な い、 当初 の 未 墾 地 中 心 か
業 が拡 充 され るの で 、 末端 との つ なが りを ど
ら既 墾 地 に重 点 を 移 し、 事業 内容 は、 一 般 、
う緊密 化 す るか 抜 本 的 な体 制 づ く りが 必 要 で
特 別事 業 を 中心 に担 い 手 確保 、 中 山間 地 域 特
あ る。 ま た地 域 に よ って は市 町村 公 社 や 農 協
別 事業 その 他 の 関 連 事 業 等 に拡 充 され て 、 総
が合 理 化 事 業 に参 入 して く るの で 、 県 公 社 と
体 と して はか な りの 業績 を 挙 げて きた と思 う。
それ ら との 事 業 分 野 調整 を明 確 にす る ことが
しか し農 地 保 有 合 理 化 事 業 の 実態 は県 に よ り
必 要 とな る。 その 三 は農 地 保 有 合 理 化 事 業 で
地 域 に よ りその 格 差 は余 り に も甚 だ しい。A
は農 地 を 買 い入 れ て 一 時保 有 した後 に売 渡 す
ラ ン クは北 海 道 、 東 北 、 九 州 等 の農 業 地 帯 に、
こ とに な るの で 、 地 価 が下 落 す る場 合 な ど公
Cラ ン クは 関東 、 東 海 、 近 畿 等 の都 市 近 郊 地
社 に損 失 を生 ず る ことが あ る。 その 補 て ん の
帯 に 多 く、 最 近 設 立 の 公 社 で は実 績 が な い。
問題 が あ る。 新 法 の 農 地信 託 事 業 は それ に配
地 価 が 高 く、 兼 業 農 家 が 多 く、 農 地が 動 き に
慮 した ものの よ うで あ るが 、今 後 よ り基 本 的
くい こ とが その 理 由 とされ る。
な 損失 補 てん の 仕 組 を 検 討 す べ きで あ ろ う。
しか し、 この よ うな格 差 はそ れ だ けが 理 由
そ の 四 は公 社 の 公 的 性格 を強 め る こ とが 前 提
で はな い よ うに思 う。 公 社 の あ りか た につ い
にな るが 、 農 地 の 売 買 に 先買 権 あ る い は優 先
て 気 づ い た点 を挙 げて み た い。 そ の一 つ は県
協議 権 を公 社 に与 え る こ との検 討 で あ る。 農
公 社 の体 制 の未 整 備 に よ る こ とで あ る。 特 別
地 移動 の方 向 付 け を よ り適 確 に行 な うた め、
事 業 の 利子 助 成 が 県 を通 じな い こ と もあ り、
有 効 な制 度 だ と思 わ れ るか らで あ る。
県 の 力 の入 れ方 に 差が あ る、 公 社 役 員が 短 期
次 に中 山間 地 域 の 新 立 法 につ いて で あ る。
間 に交 替 す る、担 当職 員 が 少 な い公社 が み ら
この地 域 は、 農 林 業 を 中 心 に人 々が 定 住 す る
れ る。 新 法 で重 要 な位 置 づ けが 与 え られ、 特
こ と、 そ の条 件 を 整 備 す る こ とが 何 よ り も大
別 事 業 の助 成 が総 合再 編 され て 国 、地 方 農 政
事 で あ る。 過 疎 化 、 高齢 化 が 進 む 中山 間 地 域
局 、 県 の ル ー トに な る機 会 に、 国 や 県 の指 導
につ い て従 来 か ら山 村振 興 法 、 過 疎 地 域 活 性
助 成 を 強 化 し、 県 公社 の体 制 が 整 備 され る こ
化 特 別措 置法 や 公 共 事 業 等で 農 林 漁 業 振 興 、
とが 何 よ り も望 まれ る。 なお 体 制 の整 備 に は
道路 、文 教 、 医 療 、 福 祉 等種 々ハ ー ド面 か ら
県 公 社 が 現 在 の よ うに社 団 や 財 団 の ま ま で よ
の 整 備 が進 め られ て きた 。 これ に対 し新 法 は
いの か 将 来 の 検討 課題 で あ る。 その二 は県公
収 益性 の 高 い新 規 作 物 の 導 入 等 の営 農 改 善 、
社 が 末 端 に足 場 が な い こ とにつ いて で あ る。
農 林 地 の 一体 的 な保 全 利 用 、就 業機 会 の増 大 、
農 業 委 員 会 へ の 業 務委 託 、 市 町村 や 農 協 との
都 市 との 交流 等 ソフ ト面 の 計 画 と整 備 に 重点
連 携 が 県 に よ って いろ い ろ と工 夫 され て い る
が 置 か れ て い る。 この よ う な ソ フ ト面 か らの
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計 画 と実 施 には 市 町村 が 重 要 な役 割 を果 す が 、
適 疎 で あ る といえ ば 、 今 春訪 れ た宮 崎 県 諸
それ が 単 に上 か らの行 政 主 導 で な く、 集 落 を
塚村(農 林 水 産 祭 の 村 づ くり と林 業 で 天 皇 杯
基 礎 と した 地 域 ぐる みの 話 し合 い の 中か ら積
受賞)で
み 上 げ た もの で あ る こ とが肝 要で あ る。 私 は
村 は95%が 森 林 、 農 地 は1%で
この 「
土 地 と農 業(No.22号 、 平 成4年)」
で林 業立 村 を 図 って お り、 農業 は補 足 的 で あ
の
も村 長 さん か ら同 じ言 葉 を きい た。
、用 材 と椎 茸
提言で 「
集 落 複 合経 営 」 に つ いて 述 べ た。 長
る。 人 口 は8千 人 か ら3千 人 に減 少 、 平 均1
野 県 飯 田市 の 例 を あ げ て 、 「集 落 複 合 経 営 と
戸 当 た り25haの 経 営 で 、 林 地 村 外 流 出 防 止
は農 業 だ け で な く、 そ こに住 む 人 々が 共 同 の
条例 が あ る。 平 成2年 に若 い林 業 労 働 の 確 立
財 産 で あ る土 地 と人 を生 か し、 地 域 の 活 性 化
と中核 林 家 の 育 成 を 目的 と して 「
国土保全森
を 図 る こ とで あ る。 中山 間地 域 の きび しい状
林 作 業 隊 」 を 設 立 した。 現 在10人(女
況 に対 して 、 それ ぞ れ の 地 域 で 集 落 を 基 礎 と
人)で 平 均 年 齢23才 、 造 林 、育 林 、 間伐 、 道
子1
して 、 今 一度 何 が で き るか を 考 え て 貰 うこ と、
路 整 備 等 を業 務 と して お り、待 遇 は役 場 並 み 、
そ して そ れ を助 長 す る こ とか ら始 め る ことが
健保 、雇 用 、 労 災 保 険 、 厚生 年 金 に加 入 して
大事 だ と痛 感 した 」 と記 して い る。
い る。ECば
りの 直 接 所 得 補 償 は ど うか との
新 潟 県 高柳 町 は人 口が4割 減 、3千 人 の 中
私 の 問 い に対 して 、 所 得 が 足 りな い か らただ
山 間 の 町 で あ る。 昨 年 国 土 庁 、(財
農 村 開発企
あ げ る と うい うの は駄 目で 、林 業 労 働 の 賃 金
画委 員会 共 催 の農 村 ア メ ニ テ ィー コ ン クール
単価 の 引上 が で き る よ うに す る こ とが 、 望 ま
で最 優 秀 賞 を受 賞 した。 各 集 落 の 世 話 役 、 青
しい との こ とだ っ た。 宮 崎 県 で は この諸 塚 村
年 、 町 役場 職 員が 結 集 し 「
ふ る さ と開 発 協 議
を 含 む 県北5町 村 の 圏 域 を 指定 し、 フ ォ レス
会 」 を発 足 させて 、 住 ん で よ し、 訪 れ て よ し、
トピア構 想 を 推 進 して い る。今 年 か ら避 地 育
自然 を生 か した大 資 本 に依 存 しな い農 山 村 滞
英基 金 を拡 充 した 。 明 年 か らは この 森 の 中 に
在型 交流 観 光拠 点 施 設 整 備 構 想 」 を着 々 と進
全 寮 制 の 中高 一 貫 学 校 を 開校 す る とい う。
め て い る。 安 全 ・安 心 の 高 付 加 価 値 型 農 業 一
以 上 の2つ の 例 の よ うに 中 山 間地 域 の 町 村
み ょ うが 、 糸 う り、 栽 培 ゼ ンマ イ な ど-を 営
はそ れ ぞれ に地 域 の 実 態 に 即 して過 疎 化 、 高
み 、若 者 の 自立経 営 農 業 者 会 議 もあれ ば 、 住
齢 化 に対 応 す る努 力 を して い る。 今 な ら殆 ど
環 境 整 備 の た め の通 勤 協 議 会 を作 ろ う と して
の 中 山 間地 域 は対 応 が 可 能 だ と思 う。 農 林 業
い る。 一 夕 、 町 と協 議 会 の メ ンバ ー と懇 談 し
を 中心 に人 々が 定 住 で き る よ う新 立 法 に よ る
た 際 に きい た 高柳 は 「
過 疎 で は な く、 ゆ った
「
農 林 業 等 活 性 化 基 盤 整 備 計 画 」の 樹 立 が 先
り した 「
適 疎 」 で あ る 」 とい う言 葉 が 印象 深
づ 急 が れ る。 この 場 合 、 農 業経 営 基 盤 強 化 促
い。
進 法 によ る規 模 の 大 き な経 営 感覚 に優 れ た農
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業 経 営体 が 生 産 の 大半 を 担 うこ とを 目標 とす
る 「
市 町 村 の 基 本構 想 」 とどの よ うに整 合性
を もた せ るか 、 両 者が ち ぐは ぐに な らな いよ
う、 中 山 間 地 域 立 法 の計 画を 優 先 す る場 合 も
あ る と考 え られ る。 画一 的 に な らな い よ う地
域 の 実 態 に即 した新法 の き め こま かい 適 切 な
運用 を 期 待 した い。
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