北海道の自然学散歩-5 北海道の自然学散歩- 5 「 黄金道路と襟裳岬 黄金道路 と襟裳岬」 と襟裳岬 」 襟裳岬から十勝方面に向かう海岸線沿いに国道 336 号が通ってい て、その内 33kmに亘って断崖絶壁が続く難所を通称「黄金道路」 と呼んでいます。この道路は昭和 2 年に着工され、8 年間を要する 難工事で費用が予定を大幅に上回り、道路に黄金を敷き詰めるほど の金額になったため、この様な名前が付いたそうです。 この地は日高山脈が海岸に沈み込む位置にあり、前報のプレート の衝突によって隆起してきた堆積岩や花崗岩などが混在する複雑な地層で、地層が隆起しながら太 平洋の荒波に波蝕を受けた結果、100m前後の急崖が形成されています。 この様な所に道路を造るのですから費用が掛かるのは当然であり、海岸線に残された旧道のトンネ ルや崩れた道路の遺構を見ると、往時の難工事の様子を窺い知ることが出来ます。 しかし完成後も、崖の自然崩落と地震・台風・雪崩等による道路破壊で、たびたび長期の交通止 めや人災が発生し、次々に多大な改修工事や新たな覆道工事 を余儀なくされました。 中でも平成 23 年に完成した「えりも黄金トンネル」(全長 4,322m)は北海道一の長さであり、正 にそれを象徴している名前です。また現在でも建設後間もないように見える覆道のその内側に、な ぜか新しいトンネルが次々に建設されており、黄金道路の名に相応しい金喰い道路といえましょう。 襟裳岬の周辺は黄金道路一帯の地層とは対照的に、砂岩・泥岩・礫岩で構成された堆積岩です。 しかも半島状となっているため周囲に急峻な海食崖はあるものの、河川に依る削剥がないので岬周 辺は標高 60m内外の広い海岸段丘 となっています。その上この地は一年を通じて岬特有の強い 風が吹く風衝地となっているため高い木が育たない実に殺伐とした風景です。 森進一の歌にもある「襟裳の春は何もない春です」がそのまま実感として伝わってきました。 この様な断崖絶壁や風衝台地が続く最果ての地であっても、小さな入江や風下のわずかな平地に は漁業を生業とする人々が住んでいます。厳冬・強風の季節での暮らしは、想像を絶するものでは なかろうかと思いを巡らしながらこの地を去ったのです。 黄金道路の覆道脇に新設中のトンネル 襟裳岬より延びる広大な海岸段丘面 襟裳岬の沖合に沈み込む岩礁群
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