親や親戚がいない「孤児」や「みなし子」を英語では「オーファン」と言いますが、薬 でも「オーファンドラッグ」と呼ばれる一群の薬があります。患者数の少ない難病等の治 療薬で開発リスクの高いことや発売しても利益の見込みがないなどの理由により開発が進 まない物を「オーファンドラッグ」と呼んでいます。日本語では希少疾病医薬品になりま す。 オーファンドラッグに指定されると国は「税制上の優遇」や「優先的な審査」の特例を 設け、希少疾病に対する薬の開発を促進しています。オーファンドラッグに指定される基 準は ① 日本での対象患者数が5万人未満 ② 難病などの重篤な疾患 ③ 開発の可能性が高い であり、新規成分に限らず適応追加でも指定を受けることができます。 平成5年から 300 成分が指定され、192 成分が製造販売承認を受けています。 当院でも「試用期間」を経ないで直接採用申請が出来るなど、薬事委員会規則でも優遇 しています。今年に入って悪性軟部腫瘍に用いるヴォトリエント®錠や Dravet 症候群に対 する抗てんかん薬のディアコミット®ドライシロップ、悪性神経膠腫の術後に留置するギリ アデル®脳内留置用剤がオーファンドラッグとして採用されています。また、患者さんが著 しく少ない場合は臨時購入で対応する場合もあります。 この制度により難病に対して多くの薬が開発されていることは大変喜ばしいことですが、 対象患者が日本で 1000 人未満の「ウルトラオーファンドラッグ」では高薬価になるため年 間数千万円の薬代になるなどの問題を抱えています。医療機関にとっては医薬品購入費が 増加することや製薬会社から医療機関までの流通経路が複雑かつ制限されるなど医療機関 側の負担も大きくなることから、希少疾病の治療を積極的に進める医療機関に対しても国 から何らかの優遇措置があればと良いと思います。
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