VivaC team TSUCHIYA 第3戦レポート

VivaC team TSUCHIYA
レースレポート
2015SUPER GT Rd.3 Chang インターナショナルサーキット
■日時
2015 年 6 月 20-21 日
■車両名
VivaC 86 MC
■場所
Chang インターナショナルサーキット (タイ)
■ゼッケン
25
■監督
土屋春雄
■ドライバー
土屋武士/松井孝允
■チーム
VivaC team TSUCHIYA
■リザルト
予選 1 位/決勝 7 位
第3タイラウンドに向けて……
トムスの東條エンジニアからの鶴の一言⁉
「やるならとことん、やっちゃえば!」
マシントラブルの為リタイヤした富士ラウンドを終えて、すぐに次戦、第3戦となるタイラウンドに向けてマシ
ンのメンテナンスと修復、そして高温のタイ対策のアップデートを施しました。これは主にボンネットやコクピ
ット内の冷却系の改造と、ちょっとした空力のアップデートです。富士のレース後、船出しまで 2 週間ほどしか
なかったのでやりたいことの半分も手を入れられなかったですが、それでもここまでの 2 戦で見えてきた方向性
から、タイではかなり勝負ができるレベルに行ける手ごたえがありました。そして私、土屋もようやく時間を作
ることができ、トレーニングができたことでドライバーとしての準備も進み、灼熱のタイでも充分に戦える感触
を持てたことが大きな変化の一つでした。健康な心は健康な身体に宿る、とは正にこのことですね。この時点で
今回のタイラウンドが順調に進むような予感がありました。
そして今回はセットアップでもこれまで以上に攻めていくことにしました。通常は事前テストで得たデータに基
づいて持ち込みセットアップを決めます。でも今回は事前テストなしでいきなり本番。松井も初めてのサーキッ
トということもあり、最初はコンサバなベースセットでいつも通りのランプランを考えていたのですが、現場に
来ていつもアドバイスを貰っているトムスの東條エンジニアから「やるならやっちゃえば!」とはっぱをかけら
れ、松井も「練習時間はなくなってもいいです」という心強い反応もあり、それならば“やっちゃおう”という
ことで、これまで手を入れたかったジオメトリーの変更を施すことにしました。
攻めるマシンでポールを獲得
やっぱり、事前準備は嘘をつかない
土曜日は10:00からフリー走行が開始され、いつも通り私が最初にマシンバランスの確認からスタート。今
回はエアコンが装着されすごく期待していたのですが、
「お、冷える!」と思ったのもつかの間、すぐに問題が発
生してしまい使えなくなってしまいました。それでもクールスーツが充分に効いていたので問題なしです。そし
てバランスのほうは思った通り狙っている方向にはいったものの、コンディションとタイヤのマッチングが悪く
うまくグリップしなかったので、まずロール剛性を変えるところからセット変更を開始しました。その後は松井
の練習時間を考えながらアウトインを繰り返し、ちょこちょこいじってバランスを整えていきました。最終的に
は予定通りのプランを消化でき、アンダーステアが残っていたものの、フリー走行はトップからコンマ6秒落ち
の 1 分34秒507の3番手で終了しました。
そして予選Q1は松井が担当。初めてのサーキットでほとんど練習できていないでQ1を走るのは荷が重いと思
いましたが、フリー走行では 34 秒8を出していたので問題ないだろうと思っていました。しかし、路面コンディ
ションの変化とドライビングの修正とセット変更がかみ合わず、自己ベストからコンマ 7 秒遅い 1 分35秒57
1しか出ず、危うくQ1落ちかと思いましたが、何とか10位でQ2へ進むことができました。松井も走り終わ
った後に悩んでいましたが、これにはジオメトリー変更が少なからず関与していて、これまでの 2 戦とは違い攻
めることの出来るマシンになっていたので、一発のタイムの出し方が変わってしまいリズムに乗り切れなかった
ことが原因でした。それでもQ2へ進めたことと、バランス変更をすべきところを拾ってくるなどしっかりと仕
事をこなしてくれたと思います。
そしてQ2はそのコメントを聞いてアンダーステア対策を施し、私がアタックに向かいました。まず 1 分34秒
5のタイムを出した後、本格的なアタックの開始。後半セクションは攻めれば攻めるほどタイムアップするコー
ナーが多数あるので、このマザーシャシー(MC)にとってチャンスがあると思い、かなり攻めて走りました。
そのアタック2周目はちょっと曲がり切れず、途中で止めて仕切り直してタイヤを冷やし、次のアタックした周
で、1 分33秒915でトップを奪取!
ポールポジションを獲得することができました!!「やった、曲がれ
た!」っていうような走りだったので運が良かったです(笑)
でもフォーミュラニッポンやGT500でポール
を獲った時も大体ポールを獲るときの感覚は同じような感じだったので(笑)、やっぱり準備(ドライバーとして
のトレーニングを施したコト)は嘘つかないんだなぁ~と思いました。
データロガー、使用禁止⁉
レース屋の魂でどこまでいけるのか?
僕にとっては実験だった。
そしてポールか優勝したら告白しようと思っていたことが一つ。実はここまで、一切データロガーを使わないで
セッティングをしてきました。私の乗ったフィーリングのみで100%セットアップを施していたのです。スピ
ードとかエンジン回転数とかブレーキ踏力などのドライビングが見られるセンサー類は付いていますが、ストロ
ークセンサーなどのエンジニアが見たいものは一切なし。で、どうせならトップをとれるまで昔ながらのやりか
たで行けるかどうかトライアルしてみよう!ということで、エンジニアの私は一切データロガーを見ていません。
この最先端の技術が結集しているスーパーGTの争いの中で、これまでの経験と探求心、そしてレース屋の魂で
どこまでいけるのか……、そしてこの環境の中で果たして若い職人は育ってくれるか?――――そんなテーマを
胸に秘め挑戦してきました。その結果はポールポジションという結果で残ったので「あれがないからダメ、これ
がないからダメ」というようなことは一切ないと証明できたと思います。やる気さえあれば何とかなるというこ
とを。ということで、トライアルを無事に終えたので、次戦からはストロークセンサーを付けてエンジニアとし
ての勉強に勤しみたいと思います(笑)
気温が 38 度にもあがった決勝日。朝のフリー走行では決勝セットアップを試し、まずまずのバランスを得ること
がきました。スタート前にも小変更をして準備は万端。最低でも表彰台は獲れるんじゃないかという感触を得る
ことができました。
今回は最初のスティントを私が担当し、後半スティントを松井が担当しました。そしてスタートはばっちり決ま
ってトップで 1 コーナーへ。しかしミラーを見ていると 3 コーナーまでのストレートで#3GTRがみるみる近
づいてきました。正直、想像していたより加速力が違いすぎ、後ろの 2 台のGTRは抑えきれないことを悟りま
した。案の定 2 周目には 3 番手に落ち、そこからは前のGTR2台には離されましたが、後方4番手のグループに
はジワリと差をつけることができたので、単独3番手の走行を30周目まで続けました。
無難に走り切ったファーストスティントを終えた後は事件の連続です。まずピットインでは作戦通り左側のタイ
ヤのみの2輪交換。ガス給油を終えて順調にいけば2番手#10GTRの前後でピットアウトできるはずでした。
しかしここでエンジンの再始動に時間がかかってしまいました。パーコレーションです(ガソリンが熱の影響で
泡立ち、通常通りガソリンが噴射できなくなること)。そこでのタイムロスにより、2番手に上がるチャンスは無
くなってしまいました。それでも3番手で走行を続けていたところ次の事件が発生。普通なら1分35秒台で走
っている松井ですが、周回遅れの影響が出始めて時折39秒台という極端に遅いタイムに。我々のマシンは他の
マシンに比べて、コーナーが速くストレートが遅いため、譲ってくれない限りタイムが3秒遅いマシンでも抜く
ことができません。今回は3周も39秒台があり、私が30周で作った14秒のマージンがたったの3周でほと
んどなくなってしまった計算になります。周回遅れのマシンにはレース後、青旗違反のペナルティーが科せられ
ましたが、その影響で#7BMWに抜かれてしまい4位にポジションダウンしてしまいました。
抜かれた後も#7BMWを上回る34秒台の速いタイムで追いたてましたが、ここで「エンジンが息つく」と松
井から無線が入りました。走行中にもパーコレーションが起きてガソリンが時折正常に噴射せず、次第に症状は
酷くなってきました。燃料補給の際には燃料タンクの内圧が熱により上がってしまい、想定よりも燃料が入らな
かったこともあり、計算上はギリギリ走りきれる状況でしたが念のためもう一度燃料補給をするためにピットに
入れました。そしてここでもパーコレーションが起きエンジンがかかりません。10数秒をロスして何とかコー
スに復帰したものの、期待はずれの7位という順位でチェッカーを受けました。
人間力を磨き、更なる高みに挑みます!
結果的には非常に残念という思いが残ったタイ戦になりましたが、3戦目を前半戦の節目として考えて準備して
きたので、ポールポジションという結果を残せたことには非常に勇気づけられました。若いドライバーとメカニ
ックが成長できる環境を作るということをプライオリティーに置き、人間力で勝負を挑むという昭和の時代臭プ
ンプンなチームカラーの中で、産まれたばかりのマシンを育てながらメーカーワークスもいるこのスーパーGT
でポールを獲れたということを誇りに思います。
私自身もエンジニアとしては経験が浅いのでこの環境で成長させてもらっていますが、ポールをとった瞬間、ど
ちらかというとドライバーの自分としてではなく、エンジニアの自分にすごく達成感を感じました。というか、
快感ですね(笑) この瞬間のためにガレージからずっと準備しイメージして、実際に走行しアジャストして結果
が出るという一連の流れをやりきるっていうこの仕事が非常に面白く感じています。
ただチームオーナーとしては、決勝の結果が出なければ全く満足できません。というか、むしろストレスにしか
ならない!(泣) 決勝で 1 番を取らない限りどこにも安息の場所はないっていうことも最近よくわかってきま
した。ドライバーやエンジニアには自己満足ができる瞬間があるけれど、チームオーナーっていうポジションに
は皆無ですね。
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それでも松井やチームスタッフの成長を感じることができて、それが結果に表れて充実感を感じることもできる
ので、大変だけどやめられません(笑)
このチームでの3戦目ですが、レースをする度にやるべきことがどんど
ん目の前にやってきます。まだまだトラブルが出る可能性はありますが、それも「次代の若者を育てる」という
このチームのテーマにはうってつけなので、トラブルもしっかりと肥やしにして成長していきたいと思っていま
す。今後も私たちの挑戦を見守っていてくださいね!
応援ありがとうございました!!
【松井孝允コメント】
今回のタイは初めてのサーキットでしたが走り始めから後半セクションはテクニカルで面白いコースだと感じま
した。フリー走行の感触ではコースに馴れたくらいで終わり正直予選に向けて不安がないわけではありませんで
した。その中、予選で自分の課題が明確になりました。タイヤの温め方から攻め方、燃料が軽いときが顕著に悪
い部分が出てしまいました。その後の武士さんのアタックを見ていてタイヤの使い方のところで、内圧を徐々に
上げていく部分などは気温・路温を考えていると感じました。
決勝はエンジンスタートに少し時間がかかってしまいましたが 3 位でコースに復帰することが出来ましたが周回
遅れに詰まってしまい追いつかれてしまいフラストレーションがたまりました。4 位に下がった後はとにかく前だ
け見て走りましたが終盤にトラブルが起きてしまい本当に悔しかったです。
今回タイという遠いところまで応援に来てくださった皆様、日本で応援してくださった皆様、本当にありがとう
ございました。次回に向けてしっかりと成長し一戦一戦進歩していきます。
これからも応援宜しくお願い致します。
つちやエンジニアリング合同会社
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担当:土屋