VivaC team TSUCHIYA レースレポート 2015SUPER GT Rd.4 富士スピードウェイ ■日時 2015 年 8 月 8-9 日 ■車両名 VivaC 86 MC ■場所 富士スピードウェイ ■ゼッケン 25 ■監督 土屋春雄 ■ドライバー 土屋武士/松井孝允 ■チーム VivaC team TSUCHIYA ■リザルト 予選 6 位/決勝 5 位 経営者vs職人の闘いが勃発! 理屈じゃない、計算じゃない。 「何が何でもやる!」という情熱に 対向するにはそれを上回る情熱でしかない。 前戦タイラウンドでポールポジションを獲得したことで、マザーシャシーとチームのポテンシャルを示すことが 出来て、これから落ち着いてレースを戦えるかなと思っていたのですが、なにやらガレージではオヤジ……もと い、春雄監督が何かをやりたい様子でソワソワしていました。私、土屋武士としては急速にマシン開発をしてし まったおかげで、予算が充分とはいえないプライベーターの資金的な問題に頭を抱えているところに、そんな懐 事情は置いておいて更に何かをやろうと企んでいる春雄監督が一人暴走をしないように見張っていなければなら ないという、非常にストレスがたまる状況でレース前の準備をしていました。 結果から言うと(親子喧嘩の後)フロント周りを一新するアップデートを施すということになりました。 これには沢山の人の協力があったりして、やらないわけにはいかない状況だったのですが、詳細説明が無いまま に進められていたのでこっちもイライラ。で、やっぱり、喧嘩になるわけですが、この一連のくだりを振り返る と、昔のメカさんたちがどうやってこのレース業界を作り上げてきたのかが、ちょこっと見ることができました。 “つまり、情熱だけ” 。 何が何でもやるっ!ていう気持ちが突き動かしているんだってことがよく分かりました。予算が~、段取りは~、 必要性をプレゼンするなんていういわゆるノーマルなやり方が無い。ほとばしる情熱のみ! そしてマザーシャ シーにはそういう昔ながらのメカさんたちが興味をもって集まってくる魅力があるマシンだっていうことも再確 認。できの悪い子ほどかわいいってやつですね(笑) そんなわけで、新規で出来上がったフロントアームの取り付けが終わったのはサーキット設営日の金曜夜、23 時。 昔の人にとっては「早く終わったね~」って感じで朝飯前という雰囲気。楽しそうに作業をしてくれて私もほん のり嬉しさはこみ上げたけど、本音は、経営者とドライバーとエンジニアを兼任している私のストレスのことも 少しは考慮してほしいんですけど~~、と節に願うばかりの金曜の夜でした(苦笑) 昔ながらのスピリッツに触れた予選 となると親子喧嘩も必然なのだろうか……(笑) 何はともあれ、フロントサスペンションが完全に新しくなったことで、今までのデータは使えない状況で公式練 習がスタート。今回ばかりはセットアップに時間がかかることが予想されたので、松井にはあらかじめ走行機会 が少ないことを伝えましたが、こういう時に限ってトラブルが起きます。まずはエアコンシステムに不具合が出 て時間をロスすることに。その次にスターターにトラブルが出てここでも修復に時間を取られました。その中で も最低限のメニューをこなし、あらゆるセットアップを試したことで色々なデータを取ることができました。と いっても、今回もストロークセンサーなどのセンサーは取り付けることができなかったので、あくまで私の体内 センサーのデータですが(笑) 新フロントサスペンションは限界値もあがり、ステアリングに対しての反応もリニアになって非常によくタイヤ を使えるようになりました。が、反面、リヤのグリップがついてこない箇所があり、バランスはオーバーステア になったので、まずはこのフロントにリヤをどう合わせてバランスをとるかという作業をする必要に迫られまし た。この走行では新品タイヤも試す時間がなかったので、順位的にはトップからコンマ 9 秒遅れの1分39秒7 97で 12 番手という結果。でもいいバランスさえ見つけられれば上位へ行ける手応えもありつつ走行を終えるこ とができました。 松井が公式練習で3周しかできてなかったので、上位13台を決めるQ1の予選には私が行きました。セットア ップも所々変更していたし、Q1を突破できればまたセットを煮詰めることができるということが理由でしたが、 結果は1分38秒311で3番手のタイムで突破することができました。新品タイヤを初めて履いたということ と、まだまだセットを煮詰め切れていないということもあって、何とか一発のタイムは出せたのですが、自分の セカンドベストのタイムでは13位のタイムという僅差だったので、拮抗している近年のGT300の厳しさを 感じました。 そして迎えたQ2もセットアップを変更して松井がアタックを担当。たったの3周しかできていなかったのにも かかわらず1分38秒155のタイムを記録し6位のグリッドを獲得。上出来というところですが、上を目指し ている松井にとってはこういった状況でもドカンとみんなを驚かすタイム出してほしいな~という期待があるの で、75点というところでしょうか。あとコンマ1秒縮めてれば2位だったからね。やっぱりこいつはすげぇな! っていうドライバーに育ってほしいので、こんなんじゃ満足できません! 振り返ると、公式練習の走りだしのバランスは非常に乗りにくいバランスだったのですごく頭を悩ませたけど、 結果的にはすごくいい経験ができたと感じています。これまではテストのデータがあってスケジュールを組み立 てやすかったので落ち着いて取り組めたけど、今回は出たとこ勝負の走る機会も少ないという中での挑戦で、ト ラブルもあった中では非常にいいプロセスを踏めたと思います。でもこれができたのもハードワークをミスなく こなしてくれるメカさんたち、しっかり走ってくれる松井がいてくれているからこそで、私もエンジニアとして 経験を積めるし、土屋春雄の昔ながらのスピリッツを感じることも出来て、チームとして本当にいい環境で経験 をさせてもらっているなぁと感じました。――――となると、たまの親子喧嘩も仕方がないのかな。 松井選手もチームも作戦もミス無くオール5 ベストリザルトは手にしたけど、 本番はここから そしていよいよ決勝日。朝のフリー走行ではガソリン多めで決勝のセットアップを確認し、少々のアジャストを してスタートに備えました。今回のスタートドライバーは松井。グリッドの周りは FIA GT3 車両を駆る歴戦のベ テランがズラッといたので、これは相当もまれるなと想像していました。するとまず 1 コーナーまでの加速で 2 台にかわされ 8 位に。1周目を終えるころには10番手まで後退。そのあともコーナーで速くストレートが遅い 86MC の特性によって、一時は 12 番手まで順位を落としてしまいました。この辺の攻防も松井にとっては初めて の経験で、どこを攻めるべきか、どこを守るべきなのかということを実戦で経験しながら肌で感じることができ たと思います。プランとしてはできるだけ前半戦で松井に多くを経験させて、勝負をかけていく後半戦でしっか りとした戦力になってくれるように成長してくれたらなという思いで進めていますが、抜かれても結構抜き返し てきたりファイターな部分も確認できたので、ここまでは理想的に成長してくれているかなという印象です。で もちょいちょい当ててカウルを破損してくるので、ここは気をつけなきゃいけない部分ですね。 そしてレース前の予想通り、他の上位のマシンは早めのピットインをしたので66周レースの中盤24周目には #55CR-Z、#88ガヤルドに次ぐ3番手を走行していました。タイヤもハード目のものを選んでいたこともあ り、できるだけ周回数を引っ張ってピットインする作戦通り、40周目で松井はピットイン。タイヤを左側2本 だけの交換でピットストップタイムを短縮する戦略でしたが、ここでドアが開かないというトラブルが発生! 急きょ反対のドアからドライバー交代をするというアクシデントがありましたが、それでもトータル6~7秒ほ どのロスで済んだのはラッキーでした。何もなければ#11SLS の前後くらいでピットアウトできる予定でしたが、 そのロスの影響で#51BMW の後ろ、5位でコースに戻りました。そこからは前と後ろとの差が数秒という中で、 お互い同じようなペースだったので拮抗した展開でしたが、特に何事もなく5位でチェッカーを受けました。 頑固職人、オヤジ‘s の元気の良さは素晴らしい だからこそ、舵取りは命がけです! 今回、振り返ってみるとマシン改造に気を取られて過ぎて、私自身はあっという間にレースが終わったという感 じでした。前回のタイのレースは1ヶ月前にはマシンを船で送り出していたので、レースまでにドライバーとし ての準備ができたことで、自分のドライバーとしてのパフォーマンスを引き出すことができました。でも今回は 全くドライバーとしての準備ができなかったことで全然ドライビングに集中できなかったことが大きな反省材料 です。そんな中でも大きなミスもなく、結果的にはシーズンベストの5位というリザルトが残せたことはラッキ ーだったと思います。 ただ私が目指しているチームはこんなのではありません。もっとチーム全員のパフォーマンスが最大限に発揮で きるような環境こそ私の目指すチームなので、もっとしっかり準備して、そしてコミュニケーションをしっかり とって、頑固職人のオヤジたちをちゃんとコントロールできるような組織を作り上げていかなきゃなって思いま した。まぁ、それだけ頑固職人と仕事をするってことは非常に難しいんですが、それが出来なければチームをや る意味はないと思っているので、何が何でもやり切ります! その為にも若い世代の人がおじいちゃん世代に情熱で負けてたらいけません!「あ~、もう若い連中に任せとく か~」って向こうから言わせるくらいの情熱をぶつけることでしか、彼らは黙ってはくれないことを悟りました。 なので、もっともっと暑苦しくやるしかない。一番のライバルは味方であるチーム内にあるということなんです よね。 第4戦のレポートは、私の苦悩といいますか、心の声が思わずこぼれしまった……レポートになっていますが(笑)、 きっと同じような環境に悩まれている方も多いと思い包み隠さず書かせてもらいました。 日本の成長期を支え てきた頑固職人のおじいちゃん世代の元気の良さは本当に素晴らしい。でも私たち世代が強引にでも舵を取って いかなければ日本の未来は拓けないと思います。我々働き盛りの世代が今後の日本を背負っていかなければとい う責任感と情熱を持って挑戦していきたいと思いますので、なかなか簡単にはいかない道のりですが自分で選ん だ道なので頑張ります。今後も応援よろしくお願いします!ありがとうございました!! 【松井孝允コメント】 今回は搬入日に車のアップデートを行いフリー走行は一からのセットアップで武士さんがどんどんセットを進め、 予選に向けて確実に車は良くなっていきました。 そして迎えた予選では Q1 を武士さんが乗ってセットアップを進めつつアタックという今回は今までにない予選 でした。 前回の富士大会でも Q2 を担当させてもらいましたが今回は手探りな状態でのアタックでした。結果その中、接 戦で上位を狙えただけに悔しい思いをしたのでしっかりとタイヤの性能を 1 周で使い切るということを次回以降 の課題にしていきます。 決勝はスタートで前回のイメージがあったのでこんなに順位を下げるとは予想もしていませんでした。スタート でのポジション取りもすごく大切だと思い知らされました。あとはピット作業で運転席が開かないトラブルはあ りましたがチームの指示からロスが最小限に抑えられたことがよかったと思います。 次回以降のラウンドはマザーシャーシとの相性が良いサーキットが続くのでとにかく勝ちを狙っていきます。 サーキットまで駆けつけていただいた方々の応援、また来られなかった方々の応援ありがとうございました。 後半戦も応援宜しくお願い致します。 つちやエンジニアリング合同会社 〒252-0822 神奈川県藤沢市葛原 2507 TEL : 0466-48-1452 FAX : 0466-49-5011 担当:土屋
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