「大島紬を知っている人。」 先日、先生に大島紬のことについて聞かれた。私やみんなは勢いよく手を挙げた。 「じゃあ、どこで見たの。着たことある。」 「織ったことは。どんな柄があるのかな。」 先生の質問が続くごとにみんなはだまっていってしまった。みんな詳しく聞かれると分からない のだろう。私も同じだった。 その日、家に帰った私は、じっくり大島紬について知っていることを考えた。 まず思い出したのは、龍郷町役場前にある看板。あの看板には大島紬のもようが描かれている。 龍郷の子ならみんな知っているだろう。 次に思い出したのが化しょうまわし。九月に弟が土俵入りした時に着けた物だ。お母さんが一 生けん命に作っていたし、白色の紬でできていたから、私は白色を初めて見たし覚えていた。あ とは…。何も思い出せなかった。というか、よく考えたら知らないのだ。 少しくやしい気持ちでいたとき、昔おばあちゃんがはた織りをしていたということを思い出し た。私はすぐに受話器をとり、手慣れた番号を素早く押した。昔の話を聞くと、おばあちゃんの 声は優しく、そしてうれしそうに語ってくれた。二十才の頃からおりこさんとして働いていた。 いろいろな柄を織ることができるようになって仕事は楽しかった。だけど、おりちんが日に日に 下がっていったので生活のために辞めてしまった。などという話だった。その中で一番うれしか ったことを聞いた時、私もうれしくなった。 おばあちゃんは、お母さんの成人式用の紬を織ったのだ。世界に一つしかないおばあちゃん からの大島紬。おばあちゃんはそれを孫にも着せたいと話していた。私が成人式を迎えるのはま だまだ先のことだけど、お母さんも着たおばあちゃんお手製の紬を着ることができると思うと、 心がぽかっと温かくなった。 紬のバトンをもらうのはまだまだ先だけど、今度おばあちゃんの家に行ったらみせてもらお うかなあ。
© Copyright 2024 ExpyDoc