VivaC team TSUCHIYA レースレポート 2015SUPER GT Rd.5 鈴鹿サーキット ■日時 2015 年 8 月 29-30 日 ■車両名 VivaC 86 MC ■場所 鈴鹿サーキット ■ゼッケン 25 ■監督 土屋春雄 ■ドライバー 土屋武士/松井孝允 ■チーム VivaC team TSUCHIYA ■リザルト 予選 7 位/決勝 23 位 課題が明確に。 チームオーナー&ドライバーとして 大きな意識改革が必要 前回の富士ラウンドでは今季ベストの 5 位という結果を手に入れました。そして同時に、私、土屋武士の“苦悩” が明確になったラウンドでした。今後のことを考えつつ、 「何をやるべきなのか」ということを実際に実行するこ とが急務と考え、鈴鹿までは短いインターバルでしたが各方面を見つめ直すところから始めました。 ところがここでまたトラブルが発生。レースまで 1 週間を切ったところで、新しく製作し富士で投入したフロン トの足回りにクラックが見つかり、対策を講じなければならなくなりました。 前回のレポート、覚えていますか? そう、春雄監督の猪突猛進。アイデアが浮かぶと同時に独りで突っ走る、 あれです。何年も一緒に働いている一緒の釜の飯を食っている仲なら、この職人の猛ダッシュについていけると 思うのですが、プロ集団とはいえ、古き良き時代の職人技術を次世代につなぐための道半ばのチーム。流石に毎 回、このような状態が続くとストレスも溜まってパフォーマンスが落ちてきてしまいます。チームオーナーとし ては、全員がハッピーになって取り組んでもらえなければやっている意味がなくなります。とういことで、私が 陣頭指揮を執り、またもやドライバーとしての準備は全く出来ず、車作りの段取り&フォローに時間を費やすこ とになりました。 そしてこのことが自分自身を本気で変えなければならないと決意させるきっかけになりました。 松井の大きな成長と 86 の次なるステップが見えた予選。 そして自身に問題発生です! バタバタなレースウィークの始まりでしたが、そこは優秀なメカニックたちが集まってくれているので、マシン の準備はしっかりと終えサーキット入りしました。この鈴鹿から続く 3 戦は、マザーシャシーの86(MC86)に とっても得意なテクニカルサーキットが続くので、ここからが本当の勝負と思っていました。しかし走り出しか らストレートで勝手にシフトアップをしてしまったり、シフトダウンでもシフトアップしてしまうというトラブ ルが発生。何とか走ることは出来たのでダマしダマし走行。コースオープン当初は前日の雨の影響でコースが所々 濡れていたので、予定を変更してサードドライバーでエントリーした谷川達也選手にも早めに数周の完熟走行を してもらいました。そして路面が安定してきたところでセットアップのために私がドライブ。今回のフロント足 回りは急遽施した対策だったので、いまいちバランスが取れませんでした。アンダーもオーバーも出ているよう な状況でドライブが難しい状況でしたが、何通りかのセットを試して予選へ向けてのデータ取りをしました。タ イムはNEWタイヤを使用しなかったこともあり、トップから 2 秒遅れの 19 番手で終わりました。 そして今回のQ1は松井が担当。練習走行でも遜色ないタイムを記録していたので安心してみていました。セッ トアップは何ヵ所か変えていたのでぶっつけ本番でしたが、トップからコンマ 5 秒遅れの1‘59“507の 5 番手のタイムでしっかりと通過してくれました。ここまでの数戦、練習走行で充分に走れなくても、NEWタイ ヤでの練習もなくしっかりと仕事をこなしてくれるので、どんどん頼もしい存在になってきています。 資金が充分でないプライベーターはいかに効率よく運営していくかということが必要ですが、松井は経験がない にも関わらずプライベーターにとって必要な戦力に成長してきています。松井は私の会社の社員として一緒に毎 日働いていますが「レースをするために、勝つために」という一致した価値観のもとで共に同じ目標のために働 いています。おのずとやるべきことが浸透していくので、チームとして、パートナーとして必要な存在になって きてくれていることを実感しています。でもプロになるにはまだまだ覚えなければならないことがたくさんあり ます。どこでも誰からも頼られるプロドライバーになってほしいので、もっともっと課題のハードルを高くして よりよい経験をしてもらいたいと思っています! そしてQ2は私が行きましたが、松井がバランスはOKといっていたのでセットアップはそのままでいきました。 ここで自分自身の問題が発生です。アタックに入ったところ全然ノレていません。リズムも悪いし行き過ぎるし 集中も出来ていない……。この鈴鹿サーキットは攻めれば攻めるだけタイムが上がるところなので、行き切れな ければいいタイムは期待できません。加えてバランスが少々オーバーステアだったために攻めると飛んでいきそ うで、自分とマシンのコントロールを必死にして出したタイムは1’59“345という 7 番手のタイムでした。 久しぶりにイケてない自分にがっかりしましたし、このままでは走ることは出来ないと感じました。タイ戦でポ ールを獲った時の自分の感覚と鈴鹿のそれは本当に桁違い……。タイからマシンが帰ってきた後、菅生テスト・ 富士レース・鈴鹿レースと怒涛の 1 カ月が過ぎましたが、この期間のガレージでのストレスがドライバーとして の自分を壊し始めている。このままでは自分が降りなくてはならないし、降りたくなければそのストレスの原因 を潰さなければならない。――――そんなことを感じた予選でした。 そしてトップのMCエボーラが1’58”2を出していることを考えると、MC86のポテンシャルはハンディ ウエイト30kgを考慮に入れると58”8は出さなければならない。松井が感じているバランスではその次元 に行けないということも今回のラウンドで分かったことです。こういうことも経験して初めて分かることなので、 まだまだ覚えるべきこといっぱいというところですね。 何もかもうまくいかなった レース本番。 解決の糸口を 見いだせたことが唯一の救い そして迎えた決勝は朝から雨模様。今回から横浜タイヤの新スペックのレインタイヤが登場で、全くデータがな いことに加え、今回のレースでは決勝日の朝のフリー走行がなくなり、グリッドにつく前の 20 分のウォームアッ プ走行のみというスケジュールでスタート進行が進みます。 この 20 分間の走行ではスタートドライバーの松井に、 3 種類のコンパウンド違いのNEWウエットタイヤをテストしてもらいました。この中では一番硬めのハードタイ ヤがいいということで、そのタイヤでスタートを行くことに決めました。 今回は1000kmレースということで、谷川選手に助っ人に来てもらっていたので私はなるべくエンジニアに 徹する予定でしたが、長いレースで雨の様子がどうなるかわからなかったこの状況では戦略を考えるエンジニア は必須です。雨の量が増えるのか、減るのかということも雨量レーダーと睨めっこしながらスタートしましたが、 まずはポジションキープ。序盤の数周を終えると雨量がだんだん強くなってきてタイムも順位も落ちてきました。 ピット側では「タイヤがきつい」というインフォメーションだったので次のタイヤを聞くと「ひとつ、ソフトで」 という松井からの無線に応えてミディアムコンパウンドのタイヤを用意して 35 周目に谷川選手に交代しました。 この時レーダーを見ると雨は上がる方向だったので、交換しないで硬いタイヤのまま次のスティントを行こうか 悩んでいたのですが、結果的にはこの後雨は降らなかったのでハードのまま交換しないという選択が正解でした。 もし私がウォームアップでタイヤのテストとスタートをしていれば「雨が強くなるならハードで。上がりそうな らミディアムで」というコメントをエンジニアに残していたと思います。逆に言えば、エンジニアの私がそのコ メントをドライバーから引き出せなかったということも反省点。まだまだチームとしてやるべきことがたくさん あるということですね。 そしてミディアムで出された谷川選手は苦しい展開で、路面はみるみる乾いていく中でタイヤのパフォーマンス がどんどん落ちて行ってコースにとどまるだけでも大変な状況になってしまいました。そこで予定よりも早めの ピットインを決めて 17 周を走ったところの 52 周目にスリックタイヤに交換することにしました。ここで私にド ライバー交代。誰よりも早くスリックタイヤでコースイン。そのアウトラップは苦しんだものの翌周には他車よ りも 5 秒速いラップタイムを刻み、遅れていた分を取り戻そうとハイペースで追い上げにかかろうとしたのです が、2 周後にはクラッシュが発生してセーフティーカー(SC)が入ってしまいました。そして運の悪いタイミン グだったことで、まるまる 1 周の差がこのタイミングで上位とついてしまいました。それでも長いレースなので 諦めずに走っていれば大丈夫と思っていたのですが、SC再開後の 5 周でまたもやSC。このタイミングも悪く 更に 1 周の差がついてしまうという最悪の状況になってしまいました。そして勝手にシフトアップしてしまうと いうトラブルも走っている最中にどんどん悪化してきて、リズムを崩すとコースアウトしてしまいそうになると いう難しい状況の中、クールスーツも効かなくなるトラブルも出て、本当にしんどい状態で走り続け、どうにか 30 周を走り切ってピットイン。松井に交代してルーティーンのピットワークをこなしコースに送り出しました。 しかしシフトのトラブルとクールスーツの問題は解決しておらず、松井からの無線の声も苦しそうだったので、 この時点で 2 周遅れの 20 番手ということで、まずはトラブルシューティングを施すことを決断して松井をピット に呼び戻しました。これは昨日から解決していないシフトのトラブルを究明して、次戦に持ち越さないようにす るためとドライバーの安全を考慮した上の決断です。この後、何度か原因を突き止めるためにECUなどのコン ピューター関係などを取り換えながら走行しますが、結局最後まで症状は治まりませんでした。しかしデータ的 に“この辺だろう”という箇所は見つけることが出来ました。そして最後は松井のドライブでトップから 28 周遅 れの 23 位でチェッカーを受けました。 このような感じで何もかもうまくいかない週末を終えましたが、最低限トラブルの解決の糸口を見つけられたの とチェッカーを受けられたことは良かった点です。 親子喧嘩は一時休戦。 やるべきことを粛々とこなしながら 次なるステップへ進みます また、これはチームの根幹を揺るがす問題なのですが、前回の富士で明確になった問題が、実際のパフォーマン スにも影響をしてしまったことはとてもショックでした……。その問題の対策を考える隙さえ無く、鈴鹿までの インターバルを過ごしてしまったおかげで、ドライバーとして自分が続けられるかどうかという問題に直面して しまいました。前回はまだ笑っていられたけど、もう本当に限界なんでしょうね。 職人、土屋春雄監督。70 歳を超えて現役で作業している姿は本当に素晴らしいものがあります。昔の職人さんは 技術で生き、技術で食ってきたからこそ、そこに揺るぎないプライドがある。自分の腕と情熱で突っ走ることで 時代を引っ張ってきたんだと思います。しかし時代は動いているし環境も変わっている中で、その変化に対応し ていかなければ生き抜いていくことは出来ません。チームというのは一人一人がパフォーマンスを出し切った時 に初めてやり切った感覚が生まれ、一体感が生まれるんだと私は思います。誰かがストレスを感じるような環境 では一体感は生まれない。少なくとも私の目指すチームは技術と情熱だけではたどり着けない領域だっていうこ とを、オヤジである春雄監督に理解してもらいたい。あえてここではオヤジと言いますが、チームを次世代へ向 けて成長させるためには、オヤジであろうが真正面から戦うことを決意しました。 頑固職人を変えることはできないと思うけど、自分が信じた道は突き進んでいくのが私のスタイル。ここをクリ アしないと先に進めない。だから今はとにかく前進します。まだまだドライバーで走っていたいし、チームに関 わっているみんなに喜んでもらいたいし、――――オヤジ、もとい、土屋春雄監督にも楽しんでもらいたいから。 で、いったん、親子喧嘩は休止です(笑) ひとりの熟練の職人、春雄監督と向き合い、やるべきことを粛々とこ なしていこうと思います。自分的にも次のステップへ行く時期がきたのかなぁって実感しています。鈴鹿のレー ス後にすでに実践していますが、まずは自分自身が変わらないといけないって思って必死にもがいています。で もこの苦悩の先にはきっと目指している場所があるんだって信じてるので、何が何でもたどり着こうと思います。 それに息子が苦しんでいるのを流石に見ていられないようで、納得できないけど理解しようと同じように春雄監 督も苦しんでくれているので(笑)きっと菅生では違った雰囲気で挑めるんじゃないかと思っています! 今回も”苦悩“のレポートになってしまいましたが、苦しい分だけ喜びは爆発!すると思うので、皆さんにもこ の苦しみをお分けします(笑) この挑戦の先に、素晴らしいゴールを迎えられるように引き続き応援をよろしく お願いします!! 【松井孝允コメント】 今回は 1000Km と長丁場なレースで第 3 ドライバーに谷川選手とともに挑みました。谷川選手とは以前チーム メイトの経験があり何の不安もなく鈴鹿に乗り込みました。いざ迎えたフリー走行では、路面もウェットパ ッチが残るコンディションからのスタートでまずは 3 人のドライバーの完熟から入りました。フリー走行で はシフト関係でトラブルが発生し、すぐには治らなかったので予選までのインターバルで修理して予選に備 えました。今回の予選はフリー走行の結果 19 位から Q2 への進出はかなり厳しい戦いになると予想していま した。その中で自分の課題でもあったこの鈴鹿サーキットでアタックが決まったことは今後の自信につなが りました。そこで少し引っかかってしまいました。もう少し行けたと思うと悔しいですが無事に Q1 を通過。 今までの Q1 を担当した予選の中で一番緊張しました。 前回に引き続きスタートを担当させてもらいました。しかも今回はウェットコンディションというスタート でとにかく長丁場なので接触だけには注意していきました。最初のスティントとセカンドスティントで、タ イヤ選択などの自分のチョイスミスで厳しい戦いになったことは今後の課題です。 結果は 23 位完走と厳しい結果ですが、レース終盤に武士さんがセットを変更しポジティブな部分があるので テストの結果が良く相性も良い SUGO ラウンドでは勝ちに行きます。雨の中たくさんの応援ありがとうござま した。残り 3 戦も全力で挑みますのでこれからも応援よろしくお願いしたします。 つちやエンジニアリング合同会社 〒252-0822 神奈川県藤沢市葛原 2507 TEL : 0466-48-1452 FAX : 0466-49-5011 担当:土屋
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