第三回レポート

物理学基礎論 A
1
1. 空気の抵抗が速度の1乗に比例して、F = −kmv (k は正の定数で単位質量当たりの比例定数、m は
物体の質量) で与えられるとき、初速 v0 で地表より鉛直上方に投げ上げられた物体が到達する高さを求め
よ。重力加速度を g とする。
解答例
運動方程式は鉛直方向上向きを正として、
dv
dv
m
= −mg − kmv →
= −g − kv →
dt
dt
(
1
v + g/k
)
dv
= −k
dt
両辺を時間で積分して、
log(v +
g
g
) = −kt + C → v = − + Ae−kt (C 、A は積分定数)
k
k
初期条件より、A = (v0 + g/k) 速度は、
v=−
位置はさらに積分して、
g ) −kt
g (
+ v0 +
e
k
k
g
1(
g ) −kt
x=− t−
v0 +
e
+C
k
k
k
初期条件より、
C=
1(
g)
v0 +
k
k
従って、
g
1(
g ) −kt 1 (
g)
g
1(
g)
x=− t−
+
v0 +
e
v0 +
=− t+
v0 +
(1 − e−kt )
k
k
k
k
k
k
k
k
最高到達地点は v(t) = 0 のときの t を x(t) に代入することにより得られる。v(t) = 0 のときの t を t1 とす
ると、
(
)
1
kv0
t1 = log 1 +
k
g
従って最高到達点は、
x(t1 ) =
(
)
v0
g
kv0
− 2 log 1 +
k
k
g
2. 一様な重力中で、地表からの高さ h の点から、初速ゼロで物体 (質量 m) を自由落下させるときの運
動を考える。ここで、地表を原点として鉛直上向きに x 軸を取るものとする。重力加速度を g とする。
a) 運動方程式をたて、両辺に速度 v を乗じて t で積分 (エネルギー積分) することにより、エネルギー保
存則を導け。
b) エネルギー保存則を、質点の速度についてとき、さらに変数分離と時間についての1回の積分を行う
ことにより、質点の位置 x を時間 t の関数として表せ。
解答例
a)
運動方程式は、
m
dv
= −mg
dt
両辺に v を乗じて、
mv
dv
dx
= −mgv = −mg
dt
dt
両辺を時刻 0 から t まで積分する。
∫
t
mv
0
dv
dt =
dt
∫
t
−mg
0
dx
dt
dt
1
1
mv 2 − m02 = −mgx − (−mgh) (初期条件を利用した)
2
2
物理学基礎論 A
2
従って、
1
mv 2 + mgx = mgh
2
上式は、エネルギー保存則を表す。
(ポテンシャルエネルギーは mgx(x は質点の地表からの高さ)。)
√
√
b) v = ± 2g(h − x) v < 0 として、v = − 2g(h − x) 両辺を積分する。
∫
x
h
[
dx
√
=−
h−x
∫ t√
2gdt
0
]x [ √ ]t
√
√
√
1
1
−2 h − x = − 2gt
⇒ 2 h − x = 2gt ⇒ h − x = gt2 ⇒ x = h − gt2
2
2
h
0
3. 2次元空間内で、質点が力 F⃗ = (y, x) を受けながら、曲線 y = x2 + 2x に沿って、原点 O(0,0) から点
P(1,3) まで移動する状況を考える。このとき、力 F⃗ が質点にした仕事を計算せよ。
解答例
y = x2 + 2x より、dy = (2x + 2)dx であるので、
∫
W
∫
P
(1,3)
F⃗ · d⃗r =
=
O
∫ 1
ydx + xdy
(0,0)
∫
(x2 + 2x)dx + x(2x + 2)dx =
=
0
=
1
(3x2 + 4x)dx
0
[ 3
]1
x + 2x2 0 = 3
4. 3次元空間において、質点が、力 F⃗ = (x, 2y, z 2 ) を受けながら、曲線 ⃗r = (cos t, sin t, t) (0 ≤ t ≤ π/2)
⃗ が質点にした仕事を計算せよ。
に沿って移動する状況を考える。このとき、力 F
解答例
質点は、⃗r(t) = (1, 0, 0)(A 点とする) から ⃗r(t) = (0, 1, π/2)(B 点とする) まで、曲線 ⃗r(t) = (x(t), y(t), z(t)) =
(cos t, sin t, t) に沿って移動する。
∫
∫
B
(0,1,π/2)
F⃗ · d⃗r =
W =
xdx + 2ydy + z 2 dz
(1,0,0)
A
(ここで dx = (− sin t)dt, dy = (cos t)dt, dz = dt を利用すると、)
∫
W
π/2
cos t(− sin t)dt + 2 sin t(cos t)dt + t2 dt
=
∫
0
π/2
(t2 + sin t cos t)dt
=
[
=
=
0
t3
sin2 t
+
3
2
1 π3
+
2 24
]π/2
0
物理学基礎論 A
3
5. 2次元平面内の力 F⃗ = (y cos xy, x cos xy) が保存力か否かを判定し、保存力である場合は、空間内の
任意の位置 (x, y) におけるポテンシャルを求めよ。(なお、原点 O を基準点とし、そこでのポテンシャルを
ゼロとせよ。)
解答例
F⃗ = (y cos xy, x cos xy)
より、
∂Fy
∂Fx
= cos xy − xy sin xy,
= cos xy − xy sin xy
∂y
∂x
∂Fx
∂Fy
=
∂y
∂x
⃗ は保存力である。これより、ポテンシャルを U (x, y) とすると、
従って、F
Fx = −
∂U
∂U
= y cos xy,
= −y cos xy
∂x
∂x
両辺を x で積分して、
U = − sin xy + C(y) (C(y) は y についての関数)
これより、
∂U
Fy = −
=
∂y
(
dC(y)
−x cos xy +
dy
dC(y)
= 0,
dy
)
= x cos xy −
dC(y)
= x cos xy
dy
C(y) = C, U = − sin xy + C
U (0, 0) = 0 より、C = 0 なので、
U = − sin xy.
6. 2次元空間内で力 F⃗ が F⃗ = (−by, 0) (b は定数) で与えられるとき、質点が力 F⃗ を受けながら、原点
∫P
O(0,0) から直線的に P(a, a) まで移動した。このとき、力 F⃗ が質点にした仕事 W = O F⃗ · d⃗r を以下のよ
うに計算した。正しい計算か否か述べて下さい。正しくなければ、正しい値を求め、何が問題であったかを
考察して下さい。
∫
∫
P
∫
(a,a)
F⃗ · d⃗r =
W =
(0,0)
O
(a,a)
−bydx + 0 × dy =
[
](a,a)
−bydx = −byx
= −ba2
(0,0)
(0,0)
解答例
問題の計算式における
∫
(a,a)
[
](a,a)
(−by)dx = −byx
,
(0,0)
(1)
(0,0)
の部分で、y も x に依存するため、積分するときに定数として扱ってはならない。
この経路では、常に x = y であるため、正しくは
∫
W =
a
(−by)dx =
(0,0)
と求まる。
∫
(a,a)
0
]a
[
ba2
b 2
=−
,
(−bx)dx = − x
2
2
0
(2)