異なる視野における動的刺激に対する反応時間について

千葉大学人間生活工学研究室卒論概要(2003)
卒業研究区分:論文
異なる視野における動的刺激に対する反応時間について
キーワード:視野 動的刺激 視覚野
人間生活工学教育研究分野:曽我 信之
■研究の背景及び目的
結果となった 図 。右側視野と左側視野の結果は、過去の研究結
現代のヒトの得ている情報は、
~
%が視覚からであるともいわ
果と一致しており、大脳半球の機能差が現われているものと考えら
れている。それだけ視覚は人間行動にとって重要な意味を持ってい
れる。 る。視覚の中でも視野の特徴を考慮したデザインはほとんどない。
また、上部視野と下部視野については静的な刺激提示とは上下
視野を考慮に入れたデザインにより、ヒトへの負担の軽減や、誘目
逆の結果となった。脳の視覚野は、いくつかの機能が異なる部位に
性が高い等のインタフェースへの応用が考えられる。
分かれており、上部視野に対してと下部視野に対しての情報の伝達
視野に関する従来の研究の多くは大脳半球の左右の機能差を主
プロセスは異なると考えられている。結果の原因として、上部視野で
眼としている。先行研究 矢口
感じられた視覚情報が、
)では上下左右を含む全体的な
野や第四次視覚野において背景(黒)と
視野の特徴をつかむために、静止した刺激を用いた実験を行った。
刺激(白)の色の処理がされ、どこに刺激が提示されたかを判断でき
その結果、左視野だけでなく上部視野も空間的判断処理に優位で
たのだと推測できる。また、下部視野が情報判断処理に優位というこ
あり、右視野、下部視野は情報判断処理に優位であることが明らか
とであるが、これは下部視野で感じられた視覚情報が、第三次視覚
となった。また、刺激について着目すると、静止刺激を用いた研究
野、
が多く、動いている刺激についての全体的な視野の研究はほとんど
判断できたのだと推測できる。図 に視覚野のそれぞれの部位を示
されていない。そこで本研究では、動的な刺激に対する視野の機能
す。
野において動きの処理がされ、ランドルト環の切れ目方向を
的特徴を明らかにすることを目的とする。
モニター中央の注視点を中心とする円周上のエリアを、右回りま
たは左回りで移動する刺激を提示し、反応時間を測定、解析した。
刺激はランドルト環を用いた。ランドルト環は切れ目の視角が ’と
なるような大きさとした。被験者 モニター間の距離は
であった。
刺激の移動範囲は実験用モニターの中央に置かれた注視点から
*
上部 右部 下部 左部
提示場所
**
上部 右部 下部 左部
提示場所
図 上下左右別反応時間 実験 (左)、実験 (右)
視角 °の同心円上の上下、左右、斜めの エリアを、それぞれ左回
時間は
反応時間(相対値)
■実験方法
反応時間(相対値)
りまたは右回りで端から端(
**
**
**
*
情報判断処理に優位
°)までであった(図 )。刺激の提示
とした。
空間的処理に優位
図 タスクの例(左)と提示場所(右)
・から±
図 視野における情報判断の優位性
°の範囲を動く
第三次視覚野
被験者は、健康な男子大学生 名、全員右手利きであった。また、
すべての被験者は裸眼、または矯正視力で正常な視力であり、利き
目は右であった。被験者は試行中注視点を見るように指示された。
実験 空間的判断処理タスク
刺激が提示された領域を判断するタスクであり、提示場所に対応
第二次視覚野
第一次視覚野
野
野
したテンキーで反応させた。
実験 情報判断処理タスク
ランドルト環の切れ目の向き判断するタスクである。切れ目方向を
図 右脳の後頭葉 視覚野の細分野 カーソルキーで反応させた。ランドルト環の切れ目方向は左右の 方
向とした。 両実験とも、各提示場所につき
■まとめ 回(右回り
刺激を提示した。一つの実験あたり
回(
回、左回り
回)の
回× 箇所)の試行を
本研究で明らかになったことをまとめると、動きを伴う視対称に関
する認知においては、空間的判断処理には左側視野と下部視野、
行った。提示場所、回る方向、ランドルト環の切れ目方向はランダム
情報判断処理には右側視野と上部視野が優位であることが判明し
とした。測定項目は反応時間、正答率、眼球電図であった。
た。要因として、左右の大脳半球の機能差及び視覚野における情
解析は一元配置分散分析及び多重比較を行なった。左上、上、
報伝達のプロセスの違いである可能性が示唆された。
右上を上部、左下、下、右下を下部、左上、左、左下を左側、右上、
視野における機能差を考慮したインターフェイスデザインを行うこ
右、右下を右側とし、一元配置分散分析及び多重比較を行った。
とにより、
作業をより少ない負担で迅速に快適に進めることがで
きるであろう。
■結果及び考察
また、今回の結果はスポーツの分野でも応用できるものと思われる。
図2に上下左右別反応時間の結果を示す。実験1では下部視野
視野を考慮に入れたトレーニングを重ねることにより、より高いパフォ
及び左視野が優位、実験 では上部視野及び右視野が優位という
ーマンスを発揮できるようになることが期待できる。