5年、10年後の生徒の成長こそ 教師にとって最大のリターン

「力及ばずして倒れることを辞さないが、力尽くさずして挫けることを
拒否する」、
「やらない言い訳より、やるための知恵を出せ」
という言
葉を贈ります。
(和歌山県・A先生)
教師の顔と近所のオジサンの顔を使い分け、金丸先生は徹底的に生徒と対話す
従来の常識が成り立たず、進路選択もその後の生活設計もと
ても難しい時代です。そこで必要なのは新しい知識を得ることと
積極的なチャレンジ精神。
「めんどくさい」
という言葉ですべてが
台無しになります。辛いこと、大変と思うことがあっても、勉強し、
チャレンジしてほしいですね。
(神奈川県・田熊豊先生)
る。本音を引き出さないと本当の進路指導も学習指導もできないと考えるからだ。
知
5年、10年後の生徒の成長こそ
教師にとって最大のリターン
「高校は人生の通過点。パーキングエリア
みたいなもので、
適切な情報とアドバイスに
よって、
生徒たちを
“次”
なる道へ送り出して
知
友達も大切だけれども、仲間やライバルも同じくらい大切。友達
だけでなく、仲間やライバルをもとう!
(群馬県・持齋雅佳先生)
何のために生まれてきたのでしょう?あなたにしかできない大事
な仕事をみつけてください。いつでも人とともにいることを忘れず
に。
( 愛知県・B先生)
知
知
すべてのことに楽しさをみつけられる人間になってほしい。辛い
から逃げるのではなく、その辛さが楽しく思えるように主体的に
動くことができるといいですね。そうすればおもしろさが見えてき
ます。
(東京都・秋本嘉一先生)
卒業する生徒には、
「卒業後は一人の社会人として話がした
い」
とよく言っています。
(茨城県・C先生)
知
知
やるための、
とても大切な場所」
と金丸先
学習面の指導は「出る杭を拾い上げ
生。そして、そこでの教師の役割は、進路
る」
が基本。
「国語90点、数学20点ならま
指導と、
学習指導の2つだと考える。
ずは国語をあと10点アップさせ、数学はそ
まず適切な進路指導を実現するため、
の後、考えようかと。得意分野を引き上げ
生徒一人ひとりと徹底して対話する。しか
たほうが、伸びしろも広がるし、それが自信
も、面談形式では本音が出てこないので、
になる。勉強も楽しくなると思うので」
廊下の立ち話で、
教師の厳しさと近所のオ
生徒の学力を伸ばすためには、教師の
ジサンの優しさを織り交ぜながら聞き出す。
授業方法にも進化が必要だ。
「シンプル
「何となくでもその生徒が“やりたいこと”
に伝える授業を心がけています。1回の授
が見えたら、こんな道がある、こんな手があ
業で“これだけは押さえて”
というポイントが
山梨・私立甲斐清和高校
教諭
ると、複数のキャリアプランを提示します。
4つを超えると下手だなと反省。授業はま
ただし、情報は与えすぎず、今なら間に合う
だ改善の余地があると思っています。もっ
金丸貴臣先生(49歳)
けれど、余裕はないよというタイミングを見
とうまくなりたいです」
計らって伝える。生徒に少し焦りが出てモ
教師は生身の人間相手の仕事。反応
チベーションもアップするので」
がダイレクトに返ってくるライブ感が好きだ。
体に気をつけて「日々努力」
してほしい。健康で過ごせることが
いかに幸せか実感してください。
(静岡県・谷野公彦先生)
進路指導、私の工夫
それができるのも、先生自身が日頃から
「どんなに労力をかけても、
どんな成果が出
大学入試の傾向、社会の動きなどの情報
ているかも実はわからない。それでも、
5年
収集に余念がないからこそ。
「でもそれは当
10年経って再会した時にちゃんと働いて
然の“予習”
。教師が“投げ球”
をたくさんも
いたり、家族を連れていたりするとたまらな
っていなければ、多種多様な生徒に対し、
くうれしい。それが最大のリターン、教師の
瞬時に適切な指導は難しいと思います」
醍醐味をそこに感じています」
WEBサイトには紙面に載せきれなかったヒントも掲載
キャリアガイダンス.net ≫「進路指導、私の工夫」
をチェック!
進学事典
り、卒業後の進路は多様だ。プロを輩
福 祉 、芸 能の普 通 科5コースからな
千葉学芸高校は創立127年を迎
えた私立高 校 。進 学 、公 務 員 、情 報 、
に生 徒が意 志を固めることが重 要と
づきました。そこで、
それより前の時期
について話し合う機会が多いことに気
末 年 始に家 族や親 戚がそろって進 路
ります。話を聞いていると、
2年生の年
うという流れだ。
て冬 休みに家 庭 内で話し合ってもら
を参考にする。そして、それをふまえ
千葉学芸高校
︵千葉・私立︶
出しているゴルフ部をはじめ、自 転 車
4
と、保護者と意見が食い違うことがあ
競 技 部 、弓 道 部 、吹 奏 楽 部など全 国
全学年で 月
同校ではこれまでも、
に家庭訪問を実施したり、
こまめに面
談を行うなどして、生徒の意志、保護
考えたのです﹂
と原田先生は言う。
携を強化するなど、〝進路志望を決め
的に活躍している部活動も多い。
る〟
プロセスを手厚くすることを心が
者の意志の確認をていねいに行ってき
同校では大学研究、学部学科研究
において
﹃ 進学事典 ﹄
を活用してきた。
た。今年度からさらに、﹃ 進学事典 ﹄
で
﹁ 漠 然 と 進 学 すべきかどうか悩む生
路 指 導 室を 訪れたり、今まで同 校の
けた。それにより、生徒が自主的に進
夏のオープンキャンパス参加と
学校比較を記録に残す
入学時点では、
進学か就職かを決めて
同校では1学年約150人のうち、
2∼3割の生徒が大学に進学するが、
徒が多いなかで、﹃ 進学事典 ﹄
に目を通
卒 業 生が進 学していない大 学 名が生
進路志望の決定のために
家庭で話し合う機会を設ける
いない生徒がほとんど。個別指導をて
しているうちに、歴史を学びたいなど
徒の口から出てくるなど、
意識の変化
指 導 部と担 任 、そして保 護 者との連
いねいに行いながら、生徒の希望を探っ
というように、
ピンポイントで分 野に
の進路調べを面談に生かしたり、進路
ていく。
﹁けれども、
2年生でもなかな
が感じられるという。
﹁どこでもいいから進学、就職 ⋮ と言
注目する生徒が出てきます。まっすぐ
われれば不可能ではありません。けれ
に学 問に目 を 向ける生 徒がクラスに
2人でも3人でも出てくれると、
クラ
備が出遅れてしまうことがあります﹂
スの士気も高まります﹂と原田先生。
か決定できず、進学や就職のための準
言う。例年、
2年生の終わりごろに
﹁や
2
と、進 路 指 導 主 任の原田康 司 先 生は
ども 、将 来 的な生 徒の幸せを考えれ
ば、自主的に進路を決め、目標に向か
月に﹃ 進 学
2
年 生の
って努力する経験が必要。たとえ第1
昨 年 度までは
事典 応援号 ﹄を配っていたが、今年度
はり進学したい﹂
と生徒が言い始め、
対
は早期に配付できる﹃ 進学事典 研究
望と妥協せず探させたい﹂
と原田先生。
応に追われることも少なくなかった。
料は助けになってくれます﹂。
﹁そのときに﹃ 進 学 事 典 ﹄
のような資
希望が難しくても、第2希望、第3希
夏 休みに各 人がオープンキャンパス
に行き、
学校オリジナルのワークシート
号﹄
を活用することにした。
に取り組んで担任に提出。その後、﹃ 進
生徒が進路実現に向けて主体的に
動くためには、もっと早い時期での意
でも早 く 始めさせたいと考えた同 校
思決定が必要。特に進学準備は少し
では、
2年生の夏休みのオープンキャン
後 悔のない進 路 決 定 を 促 すため、
来 年 度以降は﹃ 進 学 事 典 ﹄の活 用 時
学事典 研究号 ﹄
を使って、
気になる大
期を6月に繰り上 げ、夏 前に学 校 研
学について調べたり資料請求を行う。
究を始めて、複 数 校のオープンキャン
た。多くが推薦、
AOで進学する同校
また、﹃ 進学事典 ﹄付属のワークシート
パスへの参加を積極的に促すことにし
で興味をもった大学について比較検討
︵取材・文/永井ミカ︶
原田康司先生
「考え抜いて進路を決めた
卒業生は、
進路先で頑張っ
ているという話を聞きます。
ミスマッチではない、本人が
後悔しない進路選択ができ
るよう指導したい」
しっかり固まれば、余 裕をもって準 備
パスに参 加 するという 流れを 作る予
進路指導主任
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では、
2年生の夏休みに進学の意志が
面談では、
これらのワークへの取り組み
し、こちらも担任に提出。 月の三者
定だ。
﹁ また、遅い時 期に進 路 変 更 をする
生徒一人ひとりにきめ細かな対応をしている同
校では、明るい雰囲気の個室を用意するなど、
面談ルームを充実させている。
昨年までの5年間、進学サポート委員会委員長
を務めていた金丸先生。課外授業、補習授業、
学習会など教育課程以外での生徒の学習活動
を計画。写真は金丸先生が企画した進路ガイダ
ンスの様子。
リクルートサービスを活用した指 導 実 践 例
ができると考えたからだ。
今年度からは、学校推薦を希望する生徒全員
に、
2年生の夏休みにオープンキャンパスに参
加するよう指導。
ワークシートを提出させ、
『進学
事典』付属のワークシートで学校比較を行うと
ともに三者面談の資料とする。
1965年山梨県生まれ。山梨・県立巨摩高校
卒。本が好きで作家や編集者、
図書館司書など
を将来の夢と考えていた。早稲田大学卒業後、
広告制作会社、東京都立高校非常勤講師、塾
講師を経て94年より甲府湯田高校
(現甲斐清
和高校)
へ。進学サポート委員会委員長などを経
て14年度より普通科科長、
生徒会指導部主任
に。部活動は文芸部と中国武術同好会顧問兼
任。iPadは校内で持ち歩き、生徒への学習、進
路指導などに活用している。
生徒のやる気、
実力を飛躍的に伸ばす力をもつ先生です。私たち後輩の
授業も時折見て感想を言ってくれます。金丸先生に見られていると緊張
するのですが、それだけに褒められると大きな自信につながります。たぶ
ん、
生徒たちも同じだと思います。
(甲斐清和高校教諭 佐野知徳先生)
卒業する生徒に贈る言葉、
メッセージ、
卒業後の人生で心に留めておいてほしいアドバイス
■ オリジナルワークシート
「学校見学報告書」
取材・文/いのうえりえ
スクールデータ
生徒数414人
(男子262人・女子152人)
普通科12学級
進路状況
(2013年度)
/
大学進学21.8%
専各進学38.5%
就職36.5%・その他3.2%
千葉県東金市田間1999
電話/0475-52-1161
http://www.cgh.ed.jp/
※ダウンロードサイト:リクルート進学総研≫キャリアガイダンス≫発行メディアのご紹介≫クラス担任のためのキャリアガイダンスvol.25
発行所/(株)
リクルートホールディングス 〒100-6640 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー リクルート進学ホットライン:0120-161-656
(フリーダイヤル)
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デザイン/熊本卓朗
(KuwaDesign)
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