学習意欲がある生徒には国公立や東京理科大の夜間学部等を薦 めてみる。夜学は教授陣もそろっている、社会人も多いので刺激的。 学費も安いところが多い。資格も取れて卒業後、奨学金の返済にも 追われないで済むので。 (静岡県) 「なぜ数学を学ぶ必要があるのか」 をずっと考えているという東濱先生。 家庭の経済環境に関して、 子どもに知られたくない保護者の場合、 生徒との面談、 保護者との面談をまずそれぞれ行い、 双方の考えを 聞いたうえで具体的な解決策について三者面談を行う( 。和歌山県) 知 を依頼したそうだ。 「リアルな話を聞き、 数学 と言えるようになろう。わからないことはでき を身近に感じた生徒たちも多くいました」。 勉強には動機づけが大事と考え 学びへ導く工夫を実践 生になってもらうことで、 教室全体が互いに 教え合う場という雰囲気になっていくのが いいんですよね」 という東濱先生。授業はプ 知 リントを多数使って展開、問題を解いては 社会と結びつけることが、生徒にやる気 提出してもらい添削する。各自の進度状況 を促すことができると確信した東濱先生は、 は貼り出し、 わからない生徒ができる生徒に 「この人だ!」 と思ったらすぐに連絡を取る。 質問しやすい環境をつくっている。 「勉強したいと思う気持ちは自分が学びた 知 家庭環境は話を聞き、 考えられる解決方法を提案する。経済環境 に関しては高1の早い段階で進学費に関するセミナーを保護者向 けに開催。奨学金等の資料も準備し、 情報提供を行う。 (茨城県) と生徒に聞かれる。 「大学卒業後、教師に こそ、 自ら学びに向かえるよう、 生徒にさまざ なるまでの7年間、 民間企業などで働いて まな機会を提供したいんです」。 いたのですが、 実際、 まったく数学は使わな また、 生徒のやる気に火をつけるため、 学 かった」。ただ、 わからないことを人に聞く、 そ 年トップの生徒に勉強方法をみんなの前で してもう1回やり直してみる、今度は自分が 話してもらったこともある。 「それによって何 教える立場になるということが人間としての 人かが負けるものかと頑張り始め、お互い 基礎体力につながっていくのではないか。 そ に切磋琢磨する環境ができました」。 う東濱先生は考え、毎日夜8時まで教室を コツコツ積み重ねて勉強できる生徒を一 人でも多く増やしていきたい。 それが自信とな って、 自ら発信できる人になってくれたら。 「ま 立っているかも伝えたいと考えていた東濱 だ教師になって4年目で未熟だけれど、 数学 先生。そんな矢先出会った『とんでもなく役 教師の自分にできる限りのことをしたいと思 いながら、 日々生徒と向き合っています」 。 東濱先生は「沖縄の教育を変えよう、 社会に役立つ力を持つ生徒を育て よう」 という熱い気持ちを持っています。 「僕ら教師が社会を知ることが、 生 徒の視野を広げることになる」 と考えています。誠実で生徒からの信頼も 厚い先生です。 (興南中学校社会科・よのなか科教諭 門林良和先生) WEBサイトには紙面に載りきらなかったヒントも掲載 キャリアガイダンス.net ≫「進路指導、私の工夫」をチェック! ■ 2012年度、 1年次「総合的な 学習の時間」の主な内容 東濱先生が以前、 興南中学の生徒に行っていた 「よ のなか科」の授業風景。社会に対して生徒が意見を 言う機会を設けたり、生徒がさまざまな職業人にイン タビューしたり。その内容は「15歳へのバトン」 (ボー ダーインク) という1冊の本にまとめて出版した。 働くことについての講演会の後、職 業 人インタビューの事 前 学 習 として 3 単 位(1コマ 分 ) の履 修に変 45 神奈川・県立 三浦臨海高校 更。3年次でもしっかりキャリア教育 90 けて 育成ワークシートに取り組む。どんな 三浦臨海高校は単位制による普通 科高校。1年次は履修科目の大部分 人にインタビューしたいのか、何を聞い 職業人のページを読む。そして職業観 会やじっくり取り組みたい調べ学習な 『じぶん未 来BOOK』の興 味のある どは導入しづらくなった面もある。短 を続けていきたいという狙いがあったた 科目を配置して個に応じたきめ細や たらいいのかを考える材料とした。 を指定することにより基礎学力の充 かな教育を展開している。 い時間で何をするのが有効かを考え、 先生。「講演会で意識づけできたのも一 「生徒たちはよく読みました」と山口 めだが、 分から 分への変更で講演 「 進路先が多岐にわたるため、 キャリ 昨年度初めて、 リクルートによる講演 実を図り、 2・3年次では多様な選択 ア教育は様々な進路希望に対応でき 「働くことの楽しさ・意義」 と、『じぶん 因ですが、興味のある職業人が載って るように行っています」と言うのはキャ いる、写真がいい、高校生が取材してい 思います。 『 夢はかなえるためにある』 るといったことが、興味を引いたのだと と語っていたパティシエの方のページな 未来BOOK』 を導入した。 気になる人が載っているから 「読む・書く」力も育てられる どは人気があったようです」 リア支援グループ主任の小川誠先生。 「 例えば、 2年次の研修旅行先はテー マ別に3コースあり、 テーマが『 国際 』 な らば福島の英語圏の文化を学べる施 設に、『郷土』 は関西方面、『平和 』 は沖 『 産業社会と人間 』 から課題研究へと 続くキャリア教育は、確かに生徒を成 キャリア支援グループで1年次 当時、 を担当していた山口順子先生は言う。 言感想シート」 に感想を記した生徒も 冬休み中にもなるべく読むように促 したところ、 一冊すべてを読んで「ひと 縄と、 興味関心によって選べます」 長させるという実感があったので、 少な 保護者へのインタビューも 一歩踏み込んだ深い内容に い時間ながら本校でも何か生徒の視野 職業人インタビューの内容を深めるの いたそうだ。 「『じぶん未来BOOK』 は 45 浦臨海へ転任してきました。総合学科の る(左図) 。夏にはそれぞれ希望に応じ は1年次の体験学習にも生かされてい を広げるような効果的なキャリア教育 「総合学科の横浜清陵総合高校から三 て、 インターンシップ、 仕事の学び場 (神 ができないか模索していたのです」 職業人インタビューはなるべく なお、 保護者以外でと指導したが、 結果的に 分という短い時間を 有効に活用できる本 奈川県専修学校各種学校協会による 前任校でインターンシップを通じて 生徒が成長する姿を見ていた山口先生 「多様な進路に応じたキャリア教育」 体験学習講座) 、 オープンキャンパスの は、 三浦臨海高校でも生徒たちに「勉 なかった。当時、 1年次の担任をしてい は保護者に話を聞いた生徒も少なく 30 に役立ったようです」 と山口先生。 味のある職 業 人にインタビューし、年 いずれかに参加。冬休みには各自が興 強になるから」と強く勧め、前年を上 それほど話をしない生徒も多いでしょ うが、仕事について親子で深く話をす 思っています」 る機会になったようで、 逆によかったと 明けに発表会を行っている。 60 た土屋尚子先生は言う。「保護者相手 聞けていたようです。年齢的にふだん 山口順子先生 2年次の総合的な学習の時間は研 修旅行についての学習が中心になる。 合的な学習の時間が始まる。 「1・2年 そして来 年 度は初めて3年 次での総 次で学んだことを生かして、社会性を 身につけられるようなプログラムを考 えたいです」(山口先生) でも、仕事のやりがいなどをきちんと 小川誠先生 キャリア支援グループ 職業人インタビューにも力を入れた。 キャリア支援グループ 主任 もせめて働く人の声を聴いてほしいと、 1年次のキャリア教育の狙いは「視野を広げる、 自己を見つめる(目的意識の向上)」。 「中学の 恩師への手紙」 やインターンシップなどの体験学 習で、 生徒は自己を見つめ少しずつ成長するそう だ。そして、 リクルートの講演と 『じぶん未来BOO K』 、 職業人インタビューで視野を広げる。職業を 知らないことで3年次になってからなかなか希望 の職種を決められないケースも少なくなく、 そこを 打開したいというのも導入した理由のひとつ。 90 回る約 人が参加。仕事の学び場にも 適性検査の振り返り リクルート講演「働くことの楽しさ・意義」 『じぶん未来BOOK』 とワークシート 『じぶん未来BOOK』 を読む 12月 職業人インタビュー 1月 職業人インタビューの発表 11月 3 約 人が参加した。もし参加できずと インターンシップ・仕事のまなび場・ オープンキャンパスの成果発表 キャリア教 育は主に総 合 的な学 習 の時間で実施される。これまでは1〜 9月 インターンシップ・仕事のまなび場・ オープンキャンパス実施 2年次で 単位 (1コマ 分) の履修だ 7、8月 ったが、昨年度の1年次より、 3年間か 5月 6月 沖縄県立首里高校、東京理科大学理学部卒。一 般企業などを経てNPO 沖縄学力向上の会を設立。 09年より興南中学校で非常勤講師として「よのな か科」の授業を担当。学校と地域をつなげる教育の 実践で13年、第62回読売教育賞受賞。10年より 現職。ディベート部の顧問も務める。 じぶん未来BOOK リクルートサービスを活用した指 導 実 践 例 高校生の自覚 中学の恩師への手紙 適性検査 インターンシップ・仕事のまなび場の申し込み ありはま とはいえ、何とか社会で数学がどう役に に立つ数学』 という本。すぐに著書に講演 沖縄・私立興南高校 東濱克紀先生(34歳) 解放し、 「互いに学び合う場」 としている。 テーマ:家庭・経済環境の厳しい生徒の、 進路決定に向けたフォロー 4月 いことを見つけた瞬間に湧き上がる。 だから 数学を勉強して将来何に役立つのか? リクナビ進学も活用し、 学級通信でお金の話を取り上げています。 (東京都) 両親が亡くなり生活基盤が厳しい中、 朝夕の新聞配達・奨学金制 度の活用、 住み込みで働き、 無事3年間で卒業した過去の生徒の 事例を話し、 どんな状況も必ず乗り越えられると親身に話をし、 ま た、 生徒の話を聞き、 最善策を探るようにしています。 (大阪府) 知 「生徒にはよく、 わからないことはわからない る子に聞こうと言っています。できる子に先 楽観的な期待や奨学金など安易な話はしない。現実的な話はきち っとする。 (千葉県) 奨学金やアルバイトの情報など、具体的な進学後のお金の流れ を保護者、生徒と一緒に考える。過去の同じような境遇の卒業生 の事例などを提示し、 「こうすればやれる」 という見通しを持ってもら う。 (北海道) 知 学校と社会をつなげる活動にもかかわり、 自ら発信できる人材育成に力を入れています。 知 45 発行所/(株) リクルートホールディングス 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-8-1住友不動産丸の内ビル リクルート進学ホットライン:0120-161-656 (フリーダイヤル) ⓒ (株) リクルートマーケティングパートナーズ 発行人/田中浩嗣 編集人/角田浩子 編集デスク/江森真矢子 編集スタッフ/清水由佳 (p1) 、 伊藤敬太郎 (p2) 、 いのうえりえ (p3・p4上) 、 永井ミカ (p4下) 企画/小浜勇人、山下真司 アートディレクション/桑原 徹 (KuwaDesign) デザイン/熊本卓朗 (KuwaDesign) 知恵袋イラスト/土井ラブ平 印刷/サンエー印刷 ※校内で教材として使用する以外の本誌の記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。 スクールデータ 生徒数/688人 (男子195人・女子493人) 単位制普通科18学級 進路状況(2012年度)/ 大学進学14.2%、短大進学3.9%、 専各進学等39.2%、 就職14.7%、 その他28% 神奈川県三浦市初声町入江274-2 電話/046-889-1771 http://miurarinkai-h.pen-kanagawa.ed.jp/
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