修 士 論 文 の 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学研究科
氏
論
要
名
文
題
小林
岳聖
博士前期課程
知能機械工学専攻
学籍番号
0634018
目 ヒービング運動する弾性翼周りの流れ解析
旨
本研究は、ヒービング運動をする弾性変形を伴う弾性翼に関する流れ場の解析を
行い、推進性能について剛体翼と比較検討したものである
近年、環境問題などを受け、高い運動性能を有する生物の運動を工学的に応用
しようという試みが数多くなされている。流体分野においては、イルカなどに代
表される水棲生物の運動メカニズムを工学的に応用しようとする試みなどがその
代表的な例であるが、グレイのパラドクスに代表されるいまだ未解明な問題が存
在する。水棲生物の多くは、彼ら特有の運動機構を実現し、また柔軟な弾性物体
としての効果を発揮して高い運動性能を実現していると考えられている。これら
を工学的に応用できればその影響は経済的にも計り知れない。
そこで、本研究では、水棲生物をNACA0012翼でモデル化し、運動機構をヒービン
グ運動として表すと共に、剛体翼と弾性物体としての効果を有限要素法による構
造解析を取り入れた弾性翼とによる流体-構造連成解析を行い、推進性能について
流れ場、及び各種の変数により検証することを目的とした。比較のための変数と
して、ヒービング運動における変数である運動周期のヒービング振動数と最大相
対迎角、弾性効果の変数であるヤング率を導入し、それぞれにおいて推力が発生
しているかを検証、及びその流れ場の比較を行った。
解析の結果、弾性翼において剛体翼同様推力が生じることを確認し、最大相対
迎角が増加すると推力は増加するという傾向が確認でき、ヒービング周波数はあ
る値を超えると推力の増加に与える影響は低いことがわかった。また、ヤング率
はヒービング周波数が低い条件においては、推力に与える影響は低く、ヒービン
グ周波数が高い条件においてはある程度の柔軟さを有する条件下において推力が
最も発生することがわかった。これらは翼の前縁の剥離渦の巻き込みと翼後縁の
弾性変形による実効迎角の増加による相乗効果によるものであると考えられる。
本結果は、弾性翼を利用した推進器開発に対して有効な知見であるといえる。