平成 27(2015)年 1 月 26 日 №163 第 26 回全国中学生人権作文コンテストより! だった先生は、とても正義感の強い人 で、話を最後まで聞いてくれ、重く受け 毎年、法務省・全国人権擁護委員連 止めてくれる人だったからです。先生 合会の主催で「全国中学生人権作文コ に話した時、先生はとても驚いた様子 ンテスト」が行われています。このと で、「気づかなくてすまなかった。」と りくみは、「『21 世紀は人権の世紀』 言いました。無理もありません。いじめ と言われている現在、人権啓発を広め の内容は、自分の持ち物を隠されたり、 すべての人たちが共に生きる、共に学 変な内容の手紙が机の中に入れられ ぶ「人」の知恵と心を育み、やさしさ たりするというものだったのです。 と思いやりを醸成すべく、丁寧に大切 幸いなことに、それ以降僕に対するいじめは無くなりました。しかし、 に心がける糧として、大いに活用して 今日もどこかで、誰かがいじめに遭っているのではないか・・・と不安 ほしい。」という願いから行われてい がよぎります。 中学 2 年生になって、道徳の授業で「心やさしいこどもたちへ」の るものです。 学習をしています。いじめが原因で自らの命を絶ってしまった大河内 清輝君のご両親が、これから先、子どもたちがいじめによって苦しい思 「今日もどこかで・・・」 米澤拓也 いをし、命を絶つことのないようにという願いを込めて、自らの思いを 今日も、教室でいじめられている人がいる。その人は、いつも教室 綴ったものです。清輝君は長い間いじめを受け続け、遺書だけを残し の片隅で好きな本を読んで、周りの人の声を聞かないようにしている。 て、この世を去りました。同級生の人たちから 2 年以上もの間いじめ 誰かに悩みを打ち明けることもなく、誰かから励まされることもなく、心 を受けていました。グループでリンチや数万円単位の金額の巻き上げ 徳島県・藍住東中学校 を閉ざし、重くつらい一日が早く過 など、とても凶悪なものでした。彼は家族に ぎ去ることを願いながら、本を読ん 相談できないまま、周りの人から助けられな でいる。 いまま、2 年以上も過ごし続けたのでした。 その人は、小学 4 年の時の僕で どんなに苦しい時間だったのだろうと考える す。いじめはとても卑劣で、卑怯な と、言葉が見つかりません。そして、死を選 ことです。今考えても、なぜいじめ んだことは、本人にとっても残された人たち られたのか全く分かりません。その にとっても、本当に悔しさばかりが残るので 当時も「もしかすると自分がその子 はないでしょうか。周りにもたくさんの人が たちに何かをしてしまったから、嫌 いたはずなのに、なぜ清輝君を助けること なことをされるのだろうか・・。僕自 が出来なかったのか・・・。彼がいじめられ 身にダメなところがあるからしょうがないのだろうか・・。」と考えたこと ているのを同級生の人たちは、なぜ、見て見ぬふりだったのだろうか もありました。道徳の授業やその時の先生の言葉を考えているうちに、 と思います。 いじめは理由があるから起こるのではなくて、する人がいるから起こる 僕は、先生に打ち明けた時に、自分の気持ちを聞いてくれたことが、 のだと思うようになってきました。つまり、何も悪い事をしていない人 本当にうれしかったです。そしてもういじめが無くなると思うと、心の底 に対しても、容赦なく降りかかってきます。その人の生まれもった身体 から安心したことを今でも覚えています。だからこそ、今僕は、つらい や名前のことについて様々な悪口を言われたり、勝手な理由で暴力を 気持ちを抱えている人に声をかけ、助けになりたいと思っています。人 振るわれたりする最悪の行為です。なぜいじめたのか・・・。そんなこ と接することで、気持ちがやわらぐといいなと思います。 とは理解できないし、考えたくもありません。 いじめは、同世代の集団の中で起こります。子どもの集団の中で起 いじめは、同世代の集団の中で起こります。だから、いじめが起こっ た時、一番早く気づき、一番力になれるのが、同じクラスの人であり、 こっていることは、大人の人たちは気づき 同じ学年の人だと思います。ほんの少し、ク ません。そして、いじられている人は、いじ ラスや学年の人たちが勇気を出すことで、い められていることを、親や先生など大人に じめはなくなると思います。僕はそんな勇気 言いません。いや、言えません。いじめら のある人間になりたいです。 れていることを言ったら、いじめている人 人の心を深く傷つけ、時には取り返しのつ は叱られるが、その後、より一層いじめが かない道を選んでしまう、そんな卑劣な行為 ひどくなるのではないかと恐れるからです。 を許さない仲間でありたい。 しかし、その時僕は、思い切って先生に 相談をしてみることにしました。僕の担任 『種をまこう』 発行:公益財団法人 人権擁護協力会
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