一人一人の主体的な学びをはぐくむ質の高い授業づくりを目指して

1.研究課題
「一人一人の主体的な学びをはぐくむ質の高い授業づくりを目指して」
~一人一人の主体的な活動参加にむけての実態把握と授業の評価改善~
2.研究目的
本校は障がいが重度で重複する生徒が在籍する。生徒の身体面や知的面、行動面などの障がい特性
は多様な状態にあり、授業における指導者の抱く課題や悩みも多岐にわたる。重度・重複障がいのあ
る子どもの授業を考えるときに、この目標設定でよいのか、など悩む支導者の声をよく耳にする。そ
こで、重度・重複障がいのある生徒一人一人の「学びの状況」を把握し、適切な目標を設定すること
を目指し、かつ指導の方向性を定め、指導の説明ができるためのツールとしてチェックリストを活用
した教育実践を行う。これにより、生徒の一人一人の実態把握、指導目標・内容の設定、評価につい
て考察することを目的としている。
3.研究課題設定理由
授業とは、安藤史高(2008)によれば、「一人一人の児童生徒の内的で主体的な学びに注目し、教師
は学びを具現化するための経験の場を提供すること、内的で主体的な意味づけを促すこと」と述べて
いる。言い換えると、生徒は、授業の主人公として、自分の能力を使いこなしたいと思っている。可
能性のある自ら輝く存在として、自ら学びたいと思っている。しかし、実際の現場では、重度・重複
障がいがある生徒が授業の中で主体的に活動できる場面を考え、設定することは、教師にとって容易
なことではなく、日々大変な労力を必要とする部分である。
一人一人の主体的な学びをはぐくむためには、日々、学習活動を進めていく中で、今もっている力
と、これからのびていくであろう力、現在つまづいている部分と指導によって克服できるであろう部
分、そういった生徒の現状と潜在的な可能性を見極めながら、今行う指導内容を的確に行うことが指
導者に求められている。
しかし、重度・重複障がいのある生徒への、本校の支援の方法や内容については、生徒を担当する
指導者にかなりの部分が委ねられており、各種の支援を行う際に、指導する側が確固とした手がかり
を見いだせず、自身をもって取り組めないということがある。
また、方法や内容について様々なレベルで話し合いをもとうとするとき、客観的、あるいは共通の
枠組みを欠き、論点を明確化しにくい問題がある。明確な手がかり・基準の不足という問題から、「ど
うやって学びを深めていくのだろう」という疑問がわいても、なかなか、問題を掘り下げて納得のい
く答えを見つけるところまで至らないのが本校の現状でもある。何か手がかり・基準があればと感じ
ている指導者は多いと感じられる。そこで、今年度はその手がかりとして「学習到達度チェックリス
ト」(徳永豊
2014)を学部共通で使用、活用していきたい。これにより、個々の実態が的確に把握
でき、目の前の課題や目標が見えやすくなるため、重度・重複障がいのある生徒の一人一人に応じた
学習を保証できると考えられる。さらに、生徒の主体的な学びをはぐくむために指導者が授業で追求
しなくてはならない部分である「生徒自身が学びを積み上げていくこと」に関して、いかに指導をし
ていけばよいのかという先の見通しももちやすくなると考える。「学習到達度チェックリスト」をコ
ミュニケーションツールとし、今日の授業を評価し合う場、指導の目標と成果を共有する場を設け授
業研究(評価改善)を進めていきたい。
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4.方法
本年度の流れを以下のように考えている。
始めに、生徒の実態を把握し、適切な指導目標・内容を設定するために「学習到達度チェックシー
ト」等(全部で 4 種類)を記入する。シート等を見ながら生徒の学習状況等をグループ内で共有し、
研究授業に向けての指導案作成にこれを生かしていく。研究授業には授業者支援会議の方法を採用し、
研究授業事前打ち合わせの中で授業者側の課題や、授業をみる際の視点を焦点化しておく。授業後、
アドバイスを受けた点を生かし、再案を立て、後日再び授業を行う。まとめとして、実態把握、指導
目標・内容の設定、評価等の部分についての成果と課題をグループごとにまとめ、研究集録を作成す
る。
①研究授業日・授業内容決定
②生徒の実態把握(学習到達度チェックリスト、他3シート記入)
③学部内交流会(生徒の実態と目標に関して共通理解を図る)
④研究授業に向けての打ち合わせや準備(指導案作成等)
⑤研究授業事前打ち合わせ
⑥研究授業
⑦授業検討会
⑧再案検討会(学級、学部付き、療法部)
⑨再案による授業
⑩成果と課題のまとめ
⑪研究集録資料提出
⑫研究集録完成
5.研究の内容(3年計画)
○H 27 年度
授業改善
チームアプローチ・仕組みづくり
(詳細は5月25日に説明を行います)
○H28 年度(予定)
アセスメント
実態把握(認知の面・体の面).
○H29 年度(予定)
個別の指導計画との関係
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6.校内研究の日程と流れ
月
日
研究授業日と会議等の日程
研究授業日までの準備とその後の流れ
6月 26日(金) シート類提出締め切り
(実態把握・目標関係3シート)
学部研究日
(学部内で生徒の実態等をシートを用いて確認する会)
29日(月)
7月 23日(木) ○指導案検討日①(全学級)
①<指導案検討日・学年会・学級会等>
指導案検討
8月 21日(金) ○指導案検討日②(中3A以外の学級)
◎療法部との打ち合わせ(中3A)
②<研究授業日の約2週間前>
9月
1日(火) ■中3A
研究授業①&放課後検討会
療法部との打ち合わせ
○指導案検討日③(中3A以外の学級)
8日(火) ◎療法部との打ち合わせ(高3A)
③<研究授業日1週間前>
14日(月) ◎療法部との打ち合わせ(中2B)
・指導案提出(研究部)
・授業者支援会議支援者決定
25日(金) ◎療法部との打ち合わせ(中1CD)
10月
28日(月) ■高3A
研究授業②&放課後検討会
1日(木) ■中2B
研究授業③&放課後検討会
○指導案検討日④(中2B以外の学級)
研究部が支援者へ連絡調整
④<研究授業日
前日>
授業者と支援者打ち合わせで
オーダーの確認(司会:研究部)
13日(火) ■中1CD
研究授業④&放課後検討
会
○指導案検討日⑤(中1CD以外の学
⑤<研究授業日
級)
11月 11日(水) ◎療法部との打ち合わせ(高1C)
○指導案検討日⑥(高1C以外の学級)
27日(金) ◎療法部との打ち合わせ(高2B)
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当日>
・研究授業
・授業者支援会議(司会:研究部)
12月
2日(水) ■高1C
研究授業⑤&放課後検討会
○指導案検討日⑦(高1C以外の学級)
⑥<指導案検討日・学年会・学級会等>
改善授業について、改善指導案検討
15日(火) ■高2B
研究授業⑥&放課後検討会
○指導案検討日⑧(高2B以外の学級)
⑦<改善授業後>
16日(水) ○指導案検討日⑨(上記以外の学級)
2月 12日(金) 「まとめ」の資料提出 締め切り
17日(水) 全体研究日
3月
日(
研究集録完成
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各学級で成果と課題をまとめる