第 5 章 建築の原点 受講生からの質問 小林貢平

第5章
建築の原点
受講生からの質問
小林貢平)線引きによって境界、領域ができるという話でしたが、ガラスにもそのような役
割はあると言えると思いますか?
飯塚)視線を通すなど、人の意識的な部分はそのガラスという境界線を飛び越えていくので、
そういう意味では、たとえ物体として飛び越えられなくても境界や領域を作っていると言
えます。小林君はどう考えますか?
小林貢平)私は、ガラスというものは、光の深度によって見えたり見えなかったりするの
で、そういうところがガラスの面白いところだと思います。
飯塚)小林君はおそらく、ガラスの特徴である“透明”という観点から話していると思われ
ます。では、そのような観点から境界について私の意見を言うと、例えばスペインのサグラ
ダファミリアは非常に細かい装飾が施されていて、そのファサードを見た人は素直に圧倒
されると思います。その時、そのファサードに感動しながらも、自然と内部空間を頭の中で
想像してしまうと思うんです。実際には内部は透けて見えていないけど、個人の頭の中で内
部を想像してしまうということは、その人にとっては、“そのファサードが透明性をもつ”
ということが言えます。こういう視点でも考えられると、建築設計をするも創造力がさらに
膨らむと思います。
先生からの質問
澤田先生)傘なども建築だ、ということが書かれているが、飯塚にとってどこからが建築で
あるということなのか?この世にあるあらゆるものが建築だということか?
飯塚)はい、そうです。特に変な例で言うと、人も建築になります。道路で交通整理をして
いる警備員がいて、その人が腕を横に広げるとその腕の先に線が表れて、その人よりも後ろ
に行ってはいけないのでは?と感じることがあります。その瞬間、私にとってその警備員が
建築になります。
澤田先生)そのように(あらゆるものを建築と見なす)考えに至った動機は何かあるのか。
飯塚)自分が建築設計を学ぶに際、その形を考えるときやそこにオリジナリティを出すため
に、自分の身の回り、通学路や日頃生活している場面を改めて見直してみようと考えました。
なぜそこに物があるのか、なぜそのような形をしているのか、そこからどのような影がつく
られるのか、などです。
澤田先生)なるほど。それが君にとっての「建築の原点」ということが分かりました。いい
と思います。