家畜診療所通信

DCT(dry-cow therapy)
について再考する
西磐井家畜診療センター
係長 高橋 史 獣医師
1. DCTってなあに? 今や大多数の酪農家に普及し半ば常識化しているDCT・
・
・。皆さんの牛群にもいますよねっ?乾乳軟膏を注入
した牛。そうです!DCTとは、乾乳牛に持続性抗生物質(乾乳軟膏)を乳房内に注入する治療法のことです。
2. なぜ乾乳軟膏を使うの?
そもそも、なぜDCTを行っているのでしょうか。獣医師がDCTを推奨する主な理由は、① 既に存在する乳房内
の感染を取り除く ② 乾乳中の新たな感染を防ぐ ③ 泌乳期より乾乳期の方が乳房炎に対する治療効果が
高い ④ 抗生物質による牛乳の廃棄がない、などです。
3. 抗生物質を予防で使っても大丈夫?
乾乳軟膏は抗生物質を使用することで問題は生じないのでしょうか?実は、抗生物質によるDCTに対して否定
的な考え方があります。例えば、① 薬代がかさむ ② 非感染分房や非感染牛に対して抗生物質を使用する必
要性があるのか疑問 ③ 感染防御作用を持つ良い菌まで排除する可能性がある ④ 耐性菌出現の心配があ
る ⑤ 食物連鎖における薬物残留リスクが高まる危険性がある ⑥ 注入操作で非感染分房に新規感染を起
こす可能性がある、などです。確かに言われてみればその通りですね。
4. 乾乳軟膏を使わなかったらどうなる?
乾乳軟膏は使用しない方がよいのでしょうか?海外ではDCTを実施しなかった乳牛に関して、こんな試験結果
が出ているようです。① 既に25%の分房が感染していた牛群で乾乳軟膏を使用せず乾乳したら、乾乳中に5%
が自然治癒したが10%の分房で新規感染を認め、その結果分娩後には30%の分房が感染していた。 ② 4分
房のうち2分房だけ乾乳軟膏を使用する方法で68頭の牛を乾乳したら、乾乳中に臨床型乳房炎になったのは注
入した分房ではわずか1例のみで、注入しなかった分房では10例発生しそのうち7例
は乾乳し始めの2週間で高く、DCTを実施しないと乾乳中での新規感染の危険
性が高まることがわかります。
5. 全頭?それとも選択的?
皆さんは、乾乳軟膏を注入する牛をどうやって決めていますか?特に決めないで
乾乳する牛全頭に注入(全頭DCT)する方、あるいは泌乳期に乳房炎だった牛
や体細胞数が高かった牛に限定して注入(選択的DCT)する方など様々でしょ
う。一般に全頭DCTが良いとされています。その最大の理由は、①
臨床型乳
房炎の発生率が低下する ② 体細胞数が減少する ③ 次期乳量が増加
する ④ 潜在性乳房炎に効果がある ⑤ 乾乳し始め2週間の新規感染リ
スクの高い時期をカバーできる、などです。また、牛に
よっては感染していても臨床症状を示さず体細胞数も
高くないことがあり、選択的DCTでは感染牛を見逃す可
能性の大きいことが指摘されています。さらに全頭DCT
でも菌の耐性は全般的に低いとされ、衛生的に注入す
れば注入操作での新規感染リスクも小さくなります。
6. 結局どうしたらいいの?
現時点ではDCTは乾乳牛全頭全分房に使用するの
が最も良い方法だと言えます。しかし、前述したように
DCTにも欠点があります。それを補い乳房内感染を予
防・排除する新しいアプローチが研究課題として残され
ているのが現状です。
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