2015/6/8 広い話 • 人は普段から「好き嫌い」の判断をしながら生 活している • 人や物についてなんでも 目的~方法 研究法ⅡA 実験法 認知心理学研究室D4 田根健吾 • ではその好き嫌いはどうやって決まるのか 広い話 広い話 • 対象の特徴によって決まる好み • 対象の特徴によって決まる好み • 例: 左右対称性 平均的 • 例: 左右対称性 平均的 →それぞれの中にある「好み」に合致するかどうか →それぞれの中にある「好み」に合致するかどうか 私は左右対称な顔が好きだ きらい。 広い話 広い話 • 対象の特徴によって決まる好み • 評価する側との関係性によって変わる好み • 例: 左右対称性 平均的 • 好みは変化することがある →それぞれの中にある「好み」に合致するかどうか ・・・すき。 →だんだん好きになることがある? 100万人に1人レベルの左右対称顔 1 2015/6/8 先行研究 先行研究 - Zajonc (1968) - • 単純接触効果(mere exposure effect) • Zajonc (1968) • 参加者:ミシガン大学の学生 • 刺激:漢字(参加者は意味を知らない) • 実験手続き: まず参加者に刺激を見せる。各刺激の呈示回数に違い があり、1回、2回、5回、10回、25回のいずれか。 ・・・・・・計12文字 1回 先行研究 - Zajonc (1968) - 2回 10回 5回 25回 先行研究 - Zajonc (1968) - • 実験手続き: 全ての刺激呈示終了後、呈示していない漢字を加えて、 それぞれの漢字に対する印象を7件法で答えさせる。 • 結果 「この漢字は良い印象ですか?1~7で回答してください」 (×刺激個数分) 先行研究 • つまり、単純に繰り返し見ているだけでも、その 対象の好意度が上昇する。 →「単純接触効果」と呼ばれ、心理学において 非常に重要な概念とされる。 • その後の追試 • 顔やポスターなどさまざまな刺激でも生じる • 閾下呈示でも生じる。 →頑健な現象であると考えられている。 (多少変数をいじっても安定して観察される) • 刺激の呈示回数が多い漢字ほど好意度が高かった!! 先行研究 • なぜ単純接触効果が生じるのか? • 知覚的流暢性仮説 • 一度見たことのある刺激は、情報処理が楽になる。 波! 波しぶき! 扇! 扇の模様は 日の丸? 右下から左上への 流れを感じる! 2 2015/6/8 先行研究 先行研究 • なぜ単純接触効果が生じるのか? • なぜ単純接触効果が生じるのか? • 知覚的流暢性仮説 • 知覚的流暢性仮説 • 一度見たことのある刺激は、情報処理が楽になる。 • 一度見たことのある刺激は、情報処理が楽になる。 →認知的負荷が小さくなるため、ポジティブな印象になる。 かぶ!! 葉っぱ6枚! さっき見たやつ! 付け根の しわ! 葉脈かなり細かい! 既に処理された情報 を再構成するだけ 一般的な向きの置き方! 問題提起 嫌悪刺激について • 知覚的流暢性仮説によれば、どんな刺激でも 単純接触効果が生じると考えられる。 • しかし、例えば「嫌悪感」があるような刺激でも同じだろうか? • 嫌悪感がある刺激を繰り返し見たところで、「嫌な感じ」が強くな るだけではないだろうか?? ただ、単純に普通の刺激と嫌悪刺激の比較では×! • 嫌悪感を生じる刺激で単純接触効果が生じなかった ⇒「嫌悪感のある刺激だから」生じなかった? ⇒「刺激の他の特徴が影響したから」生じなかった? ↓↓↓ 普通の刺激 嫌悪刺激 類似度 高 類似度 低 • 嫌悪感がある刺激でも単純接触効果が生じるか? • 知覚的流暢性仮説の検証を通して、好みの変化のメカニ ズムについて、理解を深められる。(本研究の意義) 嫌悪刺激について ただ、単純に普通の刺激と嫌悪刺激の比較では×! • 嫌悪感を生じる刺激で単純接触効果が生じなかった ⇒「嫌悪感のある刺激だから」生じなかった? ⇒「刺激の他の特徴が影響したから」生じなかった? ↓↓↓ 刺激自体の特徴を揃える必要がある ⇒条件間で同じ刺激を用いる 接触経験の般化 生じた!! 生じなかった!! 嫌悪刺激について • そこで、参加者によって嫌悪感が異なる刺激を用い て、刺激に対する嫌悪感が強い人と弱い人で 単純接触効果の生じ方に違いがあるかを調べる。 ⇒この条件を満たす刺激を選ぶ。 3 2015/6/8 刺激の選定 目的 • 一般に、「目が合う顔刺激」は魅力的に知覚される (Conway, Jones, DeBruine, & Little, 2007) • 一方で、対人不安が高い者は他者と視線を合わせ ることを嫌悪する傾向がある (Griest, 1995) つまり、 参加者の対人不安傾向の高さによって、「目が合う 顔写真」に対する嫌悪感は変化する。 ⇒実験の目的に合致! • 刺激に対する嫌悪感が、単純接触効果に与える影響を検討 する ←本実験の目的! 方法の簡単な説明としては・・・ • 刺激として「目が合う顔写真」を用い、参加者の対人不安傾 向によって単純接触効果の生じ方に違いがあるか比較する。 • 実験手続き簡略化のために、刺激呈示回数が 0回の刺激(非接触刺激)と1回の刺激(接触刺激) で好意度を比較する。 ⇒ 単純接触効果の指標 • 対人不安傾向の高い群と低い群に分けた時、単純接触効果 の生じ方に違いがあるか比較する。 ⇒ 刺激に対する嫌悪感が単純接触効果に影響するか否か 仮説と予想される結果 仮説 • 刺激に対する嫌悪感がある場合、単純接触効果は 生じない 予想される結果 • 対人不安傾向の低い群(刺激に対する嫌悪感が弱い) ⇒接触刺激と非接触刺激の好意度に差が生じる • 対人不安傾向の高い群(刺激に対する嫌悪感が強い) ⇒接触刺激と非接触刺激の好意度に差が生じない 方法の構造 • 次は 方法です! 実験参加者 方法 (method) 実験参加者 (participants) 実験装置 (apparatus) 刺激 (stimuli) 手続き (procedure) 実験計画 (experimental design) • 実験に適した参加者であったかどうか • 今回の刺激は視覚刺激 • 人数 • 男女の比率 • ⇒実験は集団で行った。視力の正常な大学生 69名(男性11名、女性58名)が一度に実験に 参加した。 4 2015/6/8 実験装置 質問紙について補足 • 「社会的相互作用不安尺度」 • 刺激呈示に使ったもの • パソコン DELL社製コンピュータ OptiPlex 990SF • ディスプレイ 19インチモニタ • 刺激制御ソフト -Microsoft Power Point2007 ・・・なんて大層な名前がついていると、少し怖く感じる 人もいるかもしれない。しかし・・・ • 質問紙は、実際のパーソナリティのほんの一部分を推 測するための目安に過ぎない。(特に今回のものはか なりの簡易版。) • 反応取得に使ったもの • 回答用冊子 -再認課題、好意度評定用 • 質問紙 -日本版社会的相互作用不安尺度(原井, 2002) (質問紙は付録として添付) • また、「不安」というものにもポジティブな役割、適応的 な意義があるという主張もあり、 「不安傾向が高いこと」=「悪いこと」では断じてない! 刺激 手続き • 顔刺激 • 実験の流れ • 男女20枚ずつ 計40枚 • Web上に公開されているヘアカットモデルの写真 (顔写真自体の魅力度を高く保つため) • 正面に視線を向けているもの • 背景が白に近いもの • 学習段階 ↓↓ • 再認段階 ↓↓ • 質問紙回答 手続き -学習段階- 手続き -再認段階- • 刺激の半数、男女各10枚を学習段階で使用 • 学習段階で呈示しなかった20枚を含む、全40枚の刺激を呈示 • 予備実験で魅力度を測定し、男女とも残りの10枚との間で魅 • 男女交互に1枚ずつ呈示 • できるだけ記憶するよう教示 • 参加者は各刺激について、学習段階で呈示されたものかどう 力度に差が生じないよう調整 • 男性刺激と女性刺激は交互に呈示 • まず注視点を画面中央に1000ms呈示 • 次に顔刺激を画面中央に1枚ずつ2000ms呈示 かを、「あった」または「なかった」に丸を付ける形で回答 • 同時に、刺激についての好意度を7件法で評定。0を「非常に 好ましくない」、6を「非常に好ましい」とした。 • 学習段階で呈示した刺激が呈示される順番はあらかじめラン ダム化し、特定のパターンが生じないよう制御した。 5 2015/6/8 手続き -質問紙- • 再認段階終了後、質問紙へと回答。 実験計画 • 今回の従属変数は・・・? • 刺激に対する好意度評定値 • 質問項目は19項目 • それぞれの項目が自分にどの程度当てはまるかを5件 法で回答。 • 0を「自分の性格や自分についての事実を全く表してい ない」とし、4を「自分の性格や自分についての事実を 大変よく表している」とした。 実験計画 • 各要因は「参加者内」なのか「参加者間」なのか →各参加者が、要因の中にあるすべての水準に参 加しているかどうかで見極める。 →すべての水準に参加しているなら「参加者内要因」 →1つにしか参加していないなら「参加者間要因」 接触経験の有無(接触/非接触)を○○○要因、参 加者の対人不安傾向(高/低)を△△△要因とする、 2×2の混合計画 • 今回の独立変数(要因)は・・・?(2つあります!) • 接触経験の有無(2水準:接触/非接触) • 参加者の対人不安傾向(2水準:高/低) →質問紙得点を順番に並べ、高い方から半数を不安傾向高群、もう 半数を不安傾向低群とする。 引用文献 • Zajonc, R, B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology Monograph Supplement, 9 (No.2 Part.2), 1-28. • Conway, C. A., Jones, B. C., DeBruine, L. M., & Little, A. C. (2007) Evidence for adaptive design in human gaze preference. Proceedings of The Royal Society: Biological Sciences. 275, 63-69. • Griest, J. H. (1995). The diagnosis of social phobia. Journal of Clinical Psychiatry. 56, 5-12. • 原井弘明 (2002). 日本版社会恐怖尺度(SPS), 日本版社 会的相互作用不安尺度(SIAS)の開発 日本行動療法 学会大会発表論文集 28, 50-51. 今回の達成目標 • A5 主張についての根拠が書かれている。 研究法ⅡA 実験法 達成目標について • C4 追試研究ができるだけの情報が書かれている。 認知心理学研究室 博士後期課程4年 田根健吾 6 2015/6/8 A5 主張についての根拠が書かれている • 論文は常に論理的なもの • 文章は論理的に連結されているべき • 原則的には、 「~と考えられる。」「~と主張した。」の前には、 「~であるため、」「~ということから、」のように、 根拠を示す文章が来る。 • もしくは、 「例えば~」「~という研究がある(引用)。」のように、 間接的に主張を補強することもできる。 A5 主張についての根拠が書かれている • 今回のレポートで特に気をつけるポイント – 知覚的流暢性仮説が正しいならば、どんな刺激でも 単純接触効果が生じると考えられる根拠 – なぜ嫌悪刺激では単純接触効果が出ないと考える のか(補強できるような例を自分で考える) • 他の箇所も根拠が必要な部分はたくさんある。 なるべく気をつけて、実験に至るまでのお話を 整理しよう! C4 追試研究ができるだけの情報が書かれている • まずはレジュメに書かれた情報を漏らさず書く。 • 何も知らない読者の気持ちで読み直し、イメージ がしにくい部分に関して説明を足す。 • より読み手に伝わりやすくなるように、文章を工 夫する。 • 研究法も折り返しを過ぎたので、少しずつ自 分で考える部分を増やします。 • 今回の研究の趣旨をきちんと理解したうえで、 どんな結果になるか想像してみてください。 • そして実際の実験結果はどうなるのか、 • 乞うご期待!!☆ • ただし、 なんでも書けば良いというわけではない。 • この研究の目的や、測定対象について考え、「研究 ごとに違っていたら問題が生じる」と考えられる部分 について書く。 • 今回のレポートで特に気をつけるポイント – 実験時の室内の様子 – 参加者はどのように刺激を呈示されたのか • 提出について • 6/11(木)15:30まで 厳守!! • 9号館5階 図書資料室の入口付近提出BOX 名簿に チェック • ホチキス止めしたレポート2部をクリップでまとめて提 出 • 今回は「表紙、要約、問題と目的、方法」について • 「今までの達成目標」+A5,C4と、チェックリストが基準。 • 基準に満たない者は再提出の可能性あり。 • 質問について • 授業パワポ等は http://pweb.sophia.ac.jp/c-michim/ • 質問は 田根 [email protected] 7
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