時間領域信号と周波数領域信号 1 独立変数の種類による信号の分類 信号には前節の演習で話し合ったように色々な種類がありました。 一方、独立変数 x の種類によって信号を分類する事もできます。色々な種類が考えられますが、今回の講義では主に 「時間領域信号」と「周波数領域信号」の 2 つを扱います。 2 時間領域信号 時間領域信号とは独立変数 x が時間 (秒、分、時間、etc.) である信号で、普段みなさんが感じたり見聞きしている馴 染み深い信号のことです。今回の講義では時間領域信号の独立変数の記号として x ではなく t または i を使うことにし ます。 t はアナログ時間領域信号の時の記号で連続的な実数値を取ります。単位は「秒」です。 i はデジタル時間領域信号の時の記号で整数値 (i = · · · , −1, 0, 1, · · · ) をとります。単位は特にありません。 なお前節では信号の出力値は実数値としましたが、実際には時間領域信号 f (t) または f [i] の出力値は複素数 (詳しく はフーリエ級数の節で学びます) になる場合もあります。ただしピンとこない人も多いと思うので、特に指示の無い限り 時間領域信号は実数値の場合だけを考えます。 3 周波数領域信号 周波数領域信号とは独立変数 x が周波数 (ヘルツ)、又は角周波数 (ラジアン/秒) である信号です。人間が周波数領域 信号を意識的に感知することはなかなか難しいので、みなさんにはあまり馴染みが無いと思います。今回の講義では周 波数領域信号の独立変数の記号として x ではなく f 又は w 又は k を使うことにします。 f 又は w はアナログ周波数領域信号の時の記号で連続的な実数値を取ります。単位は f が「Hz」(ヘルツ)、 w が 「rad/秒」(ラジアン/秒) です。 なお詳しくはアナログサイン波の節で習いますが、w = 2πf という一対一の関係がありますので、f でも w でもどち らか好きな方を使っても構いません。今回の講義では基本的に w の方を使うことにします (信号名の f と混同するため)。 一方、 w 又は k はデジタル周波数領域信号の時の記号です。 また w が出てきましたが (ややこしい!)、今回の w はデジタル周波数領域信号の記号ですので、例えば w = 0, π, 2π, · · · の様な離散値を取ります。単位はアナログの時と同じく「rad/秒」(ラジアン/秒) です。 k は整数値 (k = · · · , −1, 0, 1, · · · ) をとります。単位は特にありません。 なお時間領域信号と区別するために、周波数領域信号の信号名は大文字とします (例えば F(w) や F[w])。周波数領域 信号 F(w) 又は F[w] の出力値は実数値でも複素数でも構いません。 実は周波数領域信号にはアナログ複素周波数領域信号 F(s) または F(z) という信号もあります。これらは独立変数が 複素周波数 s 又は z である周波数領域信号なのですが、難しいので詳しくはラプラス変換と Z 変換の節で改めて説明し ます。 1 4 まとめ やや複雑になってきたので、以上の話をまとめましょう。今回の講義で使う信号を記号の違いによって以下の様に分 類することにします。 結構多いので覚えるのは大変だと思います。今後の講義でいま考えている信号の種類が分からなくなった場合は以下 の表を見直すようにして下さい。 今回の講義でのルール:信号の分類 アナログ時間領域信号 f (t)・ ・ ・信号名は小文字、f (t) の値は実数値 (指示があれば複素数)、t は連続的な実数値、t の 単位は秒 デジタル時間領域信号 f [i]・ ・ ・信号名は小文字、f [i] の値は実数値 (指示があれば複素数)、i は整数、i の単位は無し アナログ周波数領域信号 F(w) ・ ・ ・信号名は大文字、F(w) の値は実数値又は複素数、w は連続な実数値、w の単位は rad/秒、フーリエ変換で使用する デジタル周波数領域信号 F[w] ・ ・ ・信号名は大文字、F[w] の値は実数値又は複素数、w は離散値、w の単位は rad/秒、 実・複素フーリエ級数で使用する デジタル周波数領域信号 F[k] ・ ・ ・信号名は大文字、F[k] の値は実数値又は複素数、k は整数、k の単位は無し、実・複 素フーリエ級数、DFT で使用する アナログ複素周波数領域信号 F(s) ・ ・ ・信号名は大文字、F(s) の値は実数値又は複素数、s は s 平面上の複素周波数、s の単位は無し、ラプラス変換で使用する アナログ複素周波数領域信号 F(z) ・ ・ ・信号名は大文字、F(z) の値は実数値又は複素数、z は z 平面上の複素周波数、 z の単位は無し、z 変換で使用する 演習 1 (チーム):前節の演習で出しあったアナログ、又はデジタル信号に x が時間、周波数以外である信号が含まれて いればそれをノートに書きなさい。もし一つも含まれてなければその様な信号を考えてノートにまとめなさい (最低チー ムで 1 つ)。 演習 2 (チーム):前節の演習で出しあったアナログ、又はデジタル信号に時間領域信号が含まれていればそれをノート に書きなさい。もし一つも含まれてなければその様な信号を考えてノートにまとめなさい (最低チームで 1 つ)。 演習 3 (個人):上で人間が周波数領域信号を意識的に感知することは難しいと書いたが、実は無意識的に感知している と言われている。具体的にどの様な周波数領域信号を体のどの部位で感知しているらしいのか調べてノートにまとめな さい。 2
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