自己表現力を身につけ,いきいきと伝え合う子どもの育成 ~国語科「書く

実践発表
自己表現力を身につけ,いきいきと伝え合う子どもの育成
~国語科「書くこと」を中心に~
鹿児島市立宇宿小学校
Ⅰ 研究の概要
1
主題設定の理由
(1)前年度までの研修から
今年度は国語科の「書くこと」の領域を中心として2年目の取組となる。前年度の研
修では,授業実践として書く単元の指導過程の確立,相手・目的・条件を意識した書く
活動の展開,伝え合う力を高める交流活動を各学年実践すると共に,代表授業を通した
指導案検討や授業研究を行った。また校内の言語環境の整備としては,NIE を中心に言
語活動,特に書くことに親しむ環境作り等を行ってきた。
その結果,以下のような成果を得ることができた。
・ 学校・家庭での継続した書く活動への取組による書くことへの意欲向上・抵抗感の低下
・ 書くことの指導過程の明確化・具体的指導による目的意識や相手意識の高まり
・ 教師の意識向上によるワークシート・国語コーナー等環境面の質的向上
一方で以下のような課題も挙げられた。
・ 交流の場面で話し合いの視点が不明確だったり,場の設定が機能しなかったりした。
・ 授業で得た文章様式が単発で,その後その様式で文章を書く機会が尐なく定着しない。
・ 家庭学習での取組が発達段階や児童の実態に応じておらず,家庭の理解が十分でない。
今年度は前年度の課題を元に,研修の成果を児童に還元していくことを目標に引き続
き国語科書くことの領域を中心に研修に取り組んだ。
(2)社会の教育的動向から
今日の学校教育は,学力や体力の低下,そして心の荒廃など様々な課題が山積している。こ
れらの課題を解決するためには,確かな学力の向上,豊かな心,健やかな体をバランスよく育み,
生きる力を育成することが必要である。
平成23年度に全面実施となった現行学習指導要領の中でも「生きる力」の育成の継続が強
調されている。「知識基盤社会」の時代において「生きる力」をはぐくむという理念はますます重
要となっており,知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視するこ
とが新学習指導要領に示されている。その基盤となるのが言語に関する能力であり,各教科等
においてその能力を育成することが重視されている。
また全国学力・学習状況調査(平成26年)では,「立場を明確にして,質問や意見を述べる」,
「分かったことや疑問に思ったことを整理し,それらを関係付けながらまとめて書く」について課
題が見られた。さらに鹿児島学習定着度調査においても,書く領域全体に課題が見られ,特に
「図表やグラフを読み取り,自分の意見を書くこと」が課題として挙げられている。
このような各調査結果の全体的な傾向からも,自分の考えや意見を正確に伝える「書く力」の
育成が求められている。
【平成25年度鹿児島学習定着度調査結果報告より】
小5国語
鹿児島県全体の調査結果
(3)本校の実態から
前年度の取組を通して,児童の書くことに関する意欲,書く力ともに全体的な向上が見られ
たが,書く力にまだ個人差が大きいことや読む等他領域への波及効果が見られないことなどま
だまだ課題も多かった。鹿児島学習定着度調査の結果からも,県平均と比較して書く領域にお
いて落ち込みが見られた。これらのことから,昨年に引き続き書く領域において重点的に指導す
る必要性を感じた。
【平成 25 年度鹿児島学習定着度調査
県平均を 100 としたときの本校の達成率】
内容・領域別
観点別
2 研究主題のとらえ方
小・中学校学習指導要領国語でも,教科の目標が「国語を適切に表現し正確に理解する能力
を育成し,伝え合う力を高める」とあり,表現することが重視されている。
そこで,本研究では「自己表現力」とは,「児童が自分で考え,自分の考えをもち,それを自分
の言葉で表現することができる力」,「伝え合う力」とは,「互いの立場や考えを尊重しながら,言葉
による意思の疎通を効果的に行うことのできる力」ととらえた。
3 研究を通してめざす子ども像
・ 多様な言葉を使って自分の思いを表現できる子ども
・ 目的や意図,条件に応じて適切に自分の考えを表現できる子ども
・ 友達の考えを聞いて,共感したり自分の考えを深めたりできる子ども
4 研究仮説と研究の視点
研究の視点1 自己表現力を高める活動の工夫
仮説: 書く目的と様式を明確にし,言語活動を充実させた授業を展開するならば,書く力を
高めることができるのではないか。
内容: ○書くことにおける言語活動の系統表の作成
○相手・目的・条件を明確にした書く活動の展開
○伝え合う力を高める交流活動
研究の視点2 自己表現力を高める指導と環境づくり
仮説: 日常的に「書くこと」に親しめるような手立てや環境を整えていけば,多様な言葉を使
って自分の思いを表現できるようになるのではないか。
内容:○NIE の取組 ○書くことを日常化する環境整備 ○家庭学習を通した書くことの日常化
5 研究の構想図
研究主題
自己表現力を高め,いきいきと伝え合う子どもの育成
~国語科「書くこと」を中心に~
めざす子ども像
友達の考えを聞い
て,共感したり自分
の考えを深めたりで
きる子ども
・なるほど,そういう考
え方もあるんだな。
・あなたの考えも分かる
けど,ぼくはこう思うん
だ。どうかな。
多様な言葉を使っ
目的や意図,条件に応
て自分の思いを表
じて適切に自分の考え
現できる子ども
を表現できる子ども
・自分の気持ちを伝える
にはどんな言葉が分か
りやすいかな。
・もっと豊かに表現する
にはどんな言葉がある
かな。
・書き方が分かったから
どんどん書けるよ。
・どうすれば自分の考え
が,相手によく伝わるよ
うに書けるかな。
【 仮 説 1 】
【 仮 説 2 】
書く目的と様式を明確にし,言語活動を充実さ
日常的に「書くこと」に親しめるような環境を
せた授業を展開するならば,書く力を高めることが
整えていけば,多様な言葉を使って自分の思
できるのではないか。
いを表現できるようになるのではないか。
【内容】
【内容】
(1) 書くことにおける言語活動の系統表作成
(1) NIE の取組
(2) 目的・様式を明確にした書く活動
(2) 書くことを日常化する環境整備
(3) 伝え合う力を高める交流活動
(3) 家庭学習を通した書くことの日常化
Ⅱ 研究の実際
1 仮説1について
(1)書くことにおける言語活動の系統表の作成
今年度は,前年度に作成した「書くこと」の単元における指導過程を共通理解するとともに,
「単元を貫く言語活動」を明確にして指導を行うことで,書く力のより一層の高まりを目指した。
系統表を作成したことで見通しを持って授業を組み立てるとともに,特に高学年においては「書
くこと」の系統性を意識した指導を展開することができるようになった。
教
材
名
言語活動
言語活動の生かし方
どうぞ よろしく(名前・学年)
場面に合わせて挨拶 自己紹介
一
(自己紹介)する
名刺交換
年
紹介したいことをカ
ードに書く
ふたりで おはなし(一文/主・述)
尋ねたり応答し 友達同士でコミュニケーション活
は を へ をつかおう
合ったりする
動を通して,話す番・聞く番の順序を守
(一文/主・修・述)
る,相手の顔を見て話すなどの基本のルー
ルを理解
すきな もの, なあに(二文)
紹介したいこと 自分の好きなものとその理由を述
かけるように なった(三文)
を文章に書く
べる基本パターンの習得
●よく 見て かこう
観察したことを 生活科:変化や様子を見つけようと
しらせたいな, 見せたいな
記録する文章を書 愛着をもってよく見る
(観察文)
く
●かるたを つくろう
かるたの文を作 生活科:かるた作りの動機づけ
あつまれ, ふゆの ことば
る
共通体験をもとに話し合う
(読み札)
おみせやんごっこを しよう
身近な事物を簡単に 生活科
(宣伝文)
説明する文章を書く 実生活での買い物
尋ねたり応答したり
する
学年
●おもい出して かこう
いい こと いっぱい,一年生
(体験報告文)
二
年
書く ことを きめて,しらせよう
今週の ニュース(報告・生活文)
●きろくしよう
観察したことを
記録する
まとまりに 分けて お話を 書こう
物語を作る
かんさつ名人に なろう
(観察記録文)
お話の さくしゃに なろう
(創作文)
●しょうかい文を書こう
友だちのこと,知りたいな
(紹介文)
絵と文で作り方
を説明する
詩を書こう
詩を書く
●文集を作ろう
文集を作る
●ほうこくする文章を書こう
調べたことを報
告する文章を書く
見たこと,かんじたこと(詩)
楽しかったよ,二年生
(体験報告文)
気になる記号(調査報告文)
用件や気もちがつたわるように書こう
手紙を書こう(手紙)
自分の成長の実感→自己肯定感→
他者理解
生活科:見つけたいこと,友達に聞
いたことなど新しく知ったことをカード
などに書く
年間を通した活動に,伝えることの楽しさ
を実感する
生活科:観察で注目するところ
記録カードの項目
空想したことを語る楽しさ,それを
文章にしたものを友達に読んでもらうと
いう喜び
互いに読み合って楽しむ
知りたいことを 実社会で人を紹介する
尋ね,紹介文を書く 良いところを積極的に紹介する
分かりやすくせつめいしよう
おもちゃの作り方(説明文)
三
年
経験したことを
報告する文章に書
く
1週間の出来事
などを知らせるニ
ュースを書く
生活科:○○の作り方,○○のやり
方,○○
への行き方
書くことを話す機会に発展させる
擬態語,比喩などの活動
創作活動
書いた物を一冊の本にまとめる
マッピング(取材方法,発想の方法)
今後の報告書を書く活動
実地調査:社会科の町探検や施設見学の報
告や理科の動植物の調査報告
用件や気持ちが伝わ 国語の他の単元(「わたしたちの学校行事」
るように手紙を書く 「きせつの言葉」など)や他教科・学校生活
全般の機会などの実際に手紙を書く場
れいをあげて説明しよう
食べ物のひみつを教えます
(説明・報告文)
組み立てを考えて書こう
物語を書こう(創作文)
●ほうこく書を書こう
本で調べて,ほうこくしよう
(調査報告文)
●調べたことを報告する文章を書こう
四
年
読書生活について考えよう
(調査報告文)
新聞のとくちょうと作り方を知ろう
新聞を作ろう(新聞)
写真と文章で説明しよう
「仕事リーフレット」を作ろう
(説明・報告文)
詩を書こう
野原の仲間になって(詩)
●調べて,まとめて,読み合おう
「ことわざブック」を作ろう
(報告文)
五
年
●活動を報告する文章を書こう
次への一歩~活動報告書
(活動報告文)
食材が姿を変え
ていること
他教科での「調べて説明する」活動
日常的に出会う事物に興味を抱き,探究す
る態度を養い,さらにそれらを積極的に言
葉で表現する方途
物語を書く
「想像する」思考としてマッピング
読書活動
本で調べて文献 他教科での報告書の型
調査をし,報告書を 調査活動における選書と摘読の力
書く
調査報告書を書く
他教科,総合的な学習の時間での調べて報
告する文章を書く活動
他教科,総合的な学習の時間での調査結果
をもとにした学習成果の発信
新聞を作る
学級新聞,掲示物作り
一般紙(新聞)を読む土台
取材をし,写真と 情報をデザインして発信する「見せ
文章を工夫して組み 方」の表現の工夫
合わせて,リーフレ 説明する相手による形態の工夫
ットを作成する
想像したことを
もとに,詩を作る
本で調べて,「こ
とわざブック」を作
る
活動を報告する
文章を書く
●自分の考えをまとめて,討論をしよう
自分の考えをまと
豊かな言葉の使い手になるためには( めて討論する
考えのまとめ)
自分の課題について
調べ,意見を記述し
た文章を書く
理由づけを明確にして説明しよう
統計資料を根拠
グラフや表を引用して書こう
として,意見文を書
(説明・報告文)
く
構成や表現を工夫して書こう
物語を作る
物語を作ろう(創作文)
●町のよさを伝えるパンフレットを作 町のよさを多くの
六 ろう
人に伝えるため
年 ようこそ,わたしたちの町へ
の文章を書き,編集
(案内・説明文)
する
短歌を作ろう
短歌を作る
たのしみは(短歌)
●自分の考えを明確に伝えよう
意見文を書く
「平和」について考える(意見文)
意見を主張するスピ
ーチをする
読み取ったこと,感じたことを表現しよ 絵から読み取った
う
こと,感じたこと
この絵,わたしはこう見る(解説文)
を伝える文章を書く
随筆を書こう
自分を見つめ直して(随筆)
随筆を書く
詩集作り,本作り
「カードに書いて分類すること」「引
用すること」「編集すること」を他教科で
活用
語彙を増やし,豊かな言語生活を送る
特別活動の見直し
実生活の見直し,計画の練り直し
社会科の学習活動
理科での事実とそこから考えられ
ることを述べること
道徳や特別活動での司会,相互評価
社会科,理科,家庭科などでのグラ
フや表を読み取り言葉で表現すること
読書,物語を読む力
人間関係
修学旅行のまとめ
卒業文集作成
「俳句を作ろう」
問題解決型学習の集大成
→ 総合的な学習の時間,全ての教科
音楽科や図画工作科の芸術的な感性や想
像力に基づく批評力や鑑賞力
価値観の形成
個としての他者や社会と関わり方
セルフアイデンティティの獲得
卒業文集
自分自身のものの見方や考え方,生き方を
見つめ直したり深めたりする機会
(2)目的・様式を明確にした書く活動の展開
ア モデル文の提示
文章を書かせる際は,段落構成・文字数・目的(相手)などの様式を明示するとともに,そのモ
デル文を用意することで,児童がどのような文を書けばよいかを明確にイメージできるようになっ
た。また先にモデル文を提示し文の特徴やよさを話し合ったり,ときにはエラーモデル(わざと間
違った例文)を提示し,どこを改善すればよいか全体で考えたりすることを通して,児童に書くポ
イントをつかませることができた。
【様式を板書で明示する】
【モデル文から構成や表現技法を読み取る】
イ 表現タイムの取組
授業を通じて獲得した文章様式も,その場限りとなってしまい定着に至らないという前年度の
反省を受け,今年度は朝の活動に「表現タイム」を設定した。それぞれの学年で,前学期や前
年度に学習した文章様式をワークシートで再度取り上げ児童に書かせることにより,書く力の向
上,文章様式の定着を図った。今年度は2学期4回,3学期4回を計画・実施している。
【15 分間集中して取り組む】
【原則即時評価を行う】
【例】3年生の実践
サンタクロースがいると思うか,いないと思
うか,自分の立場をはっきりさせ意見文を書い
た。文章構成や接続語など様式を明示すること
で,どの子も安心して書くことができた。
(3)伝え合う力を高める交流活動
前年度の反省を生かし,視点を明確にするためのワークシートの工夫や,必要性を考
慮し効果的な場の設定を行うなどの改善を行った。目的をはっきりととらえることがで
きるようになった児童は,より積極的に楽しく交流を行い,自分の文章をよりよく書き
直したり,お互いの文章のよさを認め合ったりする場面が多く見られた。
【例】6年生の実践
目的・視点を明確にすることで,グループ
学習も効果的に展開されるように改善され,
交流で得た意見を自分の文章に反映すること
ができるようになった。
2
仮説2について
(1)NIE の取組
本校は,平成25から NIE(新聞活用)指定校として,読み書き能力を向上させるこ
と,自ら考え,判断する能力を育むことを目的に,新聞を活用した様々な取組を行って
いる。夏休みには「校内 NIE コンクール」を開催し,自分で選んだ新聞記事について
意見文や感想文を書き,各学年特選・入選・佳作を選出し表彰した。新聞記事を使った
学習は,普段の家庭学習でも取り組んでおり,以前と比べ自分の立場や考えを明確にし
て書くことができるようになってきた。特選作品については作文へと広げ,南日本新聞
の「新聞感想文コンクール」へ出品し,学校賞をいただいた。
(2)書くことを日常化する環境整備
各単元で学習を振り返る国語コーナーの設置,新聞記事の感想を書いたワークシート
や児童の興味関心を高める記事を掲示した NIE コーナー,語彙力を高める評価語彙表
など書く活動の興味関心を更に高め,活動のヒントになる掲示に取り組んだ。
【国語コーナーにおける既習事項の掲示】
【南風録スクラップブック】
【評価語彙表の掲示】
【NIE コーナー】
(3)家庭学習を通した書くことの日常化
各学年発達段階に応じて,視写や前述した新聞記事の感想文・意見文,様式や条件に
沿って書く短文つくりなど,書く活動の日常化を目指して家庭でも取り組んだ。
【例】6年生の実践
南日本新聞の南風録欄の視写に,6年生が毎週
末の家庭学習として取り組んだ。南日本新聞の
南風録欄の視写を継続することで,書くスピー
ドの向上,文章表現の技法や表記のルールの定
着,語彙力の向上等が見られるようになった。
イ
3 授業実践例
(1)第6学年 名画のよさを伝える解説文を書こう
(教材名「『鳥獣戯画』を読む」「この絵,わたしはこう見る」光村6年)
ア
単元の目標
○
絵画から読み取ったことと感じたことを書き分け,読み手に伝わるように表現
や構成を工夫して書くことができる。
イ
単元のねらい
本単元は,
「『鳥獣戯画』を読む」における書き出しの工夫,文末の工夫,比喩や語
りかけ,絵を評価する表現など,筆者の表現や構成の工夫を読み取り,筆者のものの
見方や考え方を捉え,自分のものの見方や考え方を深めるとともに,読みの学習で学
んだ効果的な表現方法を用いて,自分が絵を見て読み取ったことや感じたことを,絵
を見る人に伝わるように表現を工夫して解説文を書くことをねらいとしている。
そのために,本単元を貫く言語活動として,「自分が選んだ名画の良さを伝える解
説文を書く」ことを位置付けた。対象の相手に伝わる解説文を書くために,
「『鳥獣戯
画』を読む」の通読を繰り返し,筆者の構成や表現の工夫を読む活動を行ったり,一
単位時間の後半に継続して関連図書を読む「並行読書」で評価語彙を増やしたりする
ことで,本単元でねらう「絵画から読み取ったことと感じたことを書き分け,読み手
に伝わるように表現や構成を工夫して書くこと」につなげたいと考えた。
ウ
単元
2
④
「
鳥
獣
戯
画
」
を
読
む
単元の実際
主な学習活動
指導上の留意点
評価基準・評価方法
1鳥獣戯画の一場面を見て感じたことをノー
・教科書の文章と主体的に向き合うため
※名画に興味を持ち,筆
トにまとめ,筆者の見方や感じ方との違いに
に,絵画についての自分の感じ方をも
者のものの見方や感じ
気づく。
たせる。
方について感想を述べ
時間
1
2「風神雷神図」を見て感じたことを書く。
・単元を通して「解説文を書くために本
3学習課題を確認し,学習の見通しを持つ。
文を読む」意識を持たせるために,解
【関心・意欲・態度】
説文紹介の活動を設定する。
(発言・ワークシート)
4・5・6年生の友達に,名画を紹介する
⑤
解説文を書こう。
ている。
1絵と文章を照らし合わせながら,
「絵」に
ついて書いてあることを読む。
2
2筆者が評価している表現に線を引き,発
表し合う。
1絵や絵巻物に対する筆者の評価に対し,
自分の考えや感想をまとめる。
3
1筆者が自分の考えを読み手に伝えるため
表現や構成の工夫を読む。
4
2「鳥獣戯画」と同じ時代に生まれた絵巻
物を見て,絵を評価する文を書く。
1学習をとおして,新しく知ったこと,見
方が広がったと思うことについて,自分
の考えをまとめる。
5
2他の文章の中から,
「 作品の評価が表れて
いる表現」を見つける。
※
「
並
行
読
書
」
各
単
位
時
間
の
後
半
に
絵
の
解
説
文
図
書
を
読
む
時
間
を
設
定
し
*
多
様
な
表
現
に
ふ
れ
る
。
・筆者の考えの根拠をとらえさせるため
※筆者の考えの根拠をとら
に,
「絵のどの部分か」
「評価を表す表
え,表現の工夫について考
現」の観点に沿って読ませる。
えながら読むことができ
る。【読むこと】(教科書に
引いた線,発表)
・筆者が読み手に伝えたいことを読み取
※読み取った筆者の評価や表
らせるために,それぞれの表現や構成
現のしかたに対し,自分の
の工夫が,どんな効果を上げているか
考えを書いている。【読むこ
をとらえさせる。
と(ワークシート)
・自分の考えを明確にさせるために,事
※語句と語句の関係を理解し
実や引用と自分の感想や意見とを,文
て書くことができる。【伝統的
末表現などに留意して書かせる。
な言語文化と国語の特質に関
・これまでの学習で出てきた評価の言葉
する事項】(ワークシート)
を掲示する。
・自分なりの読みの深まりを表せるよ
※筆者と自分の考えを区別し
う,テーマを選択させ,構成メモを考
ながら,自分のもの見方や
えさせてから文章を書かせる。
考え方をまとめている。
・教科書以外の文章から評価の言葉を見
【書くこと】(ワークシート)
つけさせるために,学校図書や新聞を
活用する。
1「風神雷神図」を解説する文章を書くために, ・読み手に伝わる文章を書くときの必要
6
(
検
証
授
業
)
何の観点で書けばよいかを考える。
2観点ごとにメモを書き,全体の構成を考えて
解説文を書く。
※解説文を書くときに必要な
な観点を考えさせるために,第1時で
観点に気づき,解説文を書
書いた自分の文章を読ませ絵を見る
くことができる。
視点に気付かせる。
・考えを書けるよう,評価の言葉,構成
【書くこと】
(発言・ワークシート)
例を提示する。
こ
の
絵
*
わ
た
し
は
こ
う
見
る
7
1自分が選んだ名画について,
「何が」
「どのよ
・様々な観点で絵を見て気づきを表せる
うに」かかれているのかを観点ごとにメモす
ように,観点ごとに書けるワークシー
観点ごとに書くことができ
る。
トを用意する。
る。
2書き出しや構成の工夫を考える。
・評価の言葉,書き出し例,記述例を提
※絵から読み取ったことを,
【書くこと】(ワークシート)
示する。
1絵から読み取ったことを解説文に書く。
④
・読み手に伝わる文章を書かせる ため
に,これまで学んだ評価の言葉,書き
8
出し例,記述例を想起させる。
1書いた解説文を発表し合い,友達に助言す
る。
※表現や構成を工夫して,解
説文を書くことができる。
【書くこと】(ワークシート)
・これまでの学習で学んだことを意識さ
※作品の見方や表現のしかた
せるために,一人一人に鑑賞メモを書
よさを見つけている【関心・
かせる。
意欲・態度】(メモ・話合い)
9
2自分の表現方法や構成について気づいたこ
とを話し合う。
【並行読書で得た評価語彙を共有する】
エ
【評価語彙表を活用し鑑賞文を書く】
成果と課題
○「4・5・6年生を対象に自分が選んだ名画の解説文を書く」という単元の目標を
第1時に持たせることで,単元を通して,児童が見通しを持って学習に取り組むこ
とができた。
○
並行読書により教科書以外の文章から言葉を収集することで語彙力が高まった。
また多くの児童が獲得した評価語彙を使って,文章表現を工夫することができた 。
○ 「解説文を書くための手引き」
「書く時に使いたい言葉の語彙表」などを作成し,
個人に持たせるとともに教室に掲示したことが効果的だった。
▲
同じ観点で鑑賞文を書く児童同士でグループを作ったが,書いた文章を読み合い,
表現の工夫やお互いの文章の良いところについて練り合う時間が不十分であった。
(2)第2学年 まとまりに分けてお話を書こう
(教材「お話のさくしゃになろう」光村 2 年上)
ア
単元の目標
○
絵を見て,経験したことや想像したことなどから書くことを決め,
「はじめ・中・
おわり」のまとまりのある話を書くことができる。
○
イ
作ったお話を交換して読み合い,お互いのよいところを伝えることができる。
単元のねらい
本単元は,3 枚の絵から,「はじめ」「中」「おわり」の構成を知り,絵を手がかりに
あらかじめどんな話の筋にするのかを考え,自分で考えた話の筋をもとに楽しみなが
ら物語を書くことをねらいとしている。
このねらいを達成するために,単元を貫く言語活動として「まとまりに分けてお話
を書こう」を位置付けた。
「たんぽぽのちえ」や「スイミ―」で学んだ「はじめ」
「中」
「おわり」の構成を書く活動に生かし,つじつまが合うようにお話を作る過程をパズ
ル感覚で楽しみながら,構成を考えお話を作る力を高めたいと考えた。
ウ
単元の実際
まず,今まで学習したお話とその作者を結び付けるクイズをし,今まで学習した物
語を振り返るとともに,お話の内容のおもしろさや文章構成を想起させた。そのこと
で興味・関心を高めるとともに,文章にははじめ」
「中」
「おわり」といった全体の組
立があることを捉えさせた。
次に挿絵を並べ,始めと終わりの絵の違いを考えさせ,「はじめ」と「おわり」と
の関係を意識させ,「中」で出来事や事件が起こることを理解させた。教科書は「中」
のイラストが空欄になっているので,児童には想像をふくらませて「中」の絵を描かせ
ながら,お話を考えさせた。この際,語彙集(思ったことや感じたことを表す言葉)
を使って,どんなお話にしたいか話し合わせ,簡単なあらすじを書いた組み立てメモ
を書かせた。
物語は「はじめ」
「中」
「終わり」の順で考えさせた。これまでの学習やモデル文を
活用し,お話のイメージを捉えさせることで,話の展開に必要な出来事や他の登場人
物を考えることができた。
文章を書く際は,前後につながりをもたせる出来事を入れると物語らしくなること
や会話文を入れると読む人にわかりやすい楽しい物語になることなどのポイントを
示し,児童の文章に反映させるようにした。またここでも語彙集を活用することで表
現を工夫することができた。
「おわり」まで書いたら,読み手のことを考えるとともに,文章のルールを確認し
推敲の指導を行った。最後に,書いた話を友達と交換して読み,感想を伝え合った。
友達の作品のよさを付箋に書かせ,伝えることができるようにした。書いた作品を読
み合い,おもしろいと思ったところやいいなと思ったところを伝え合うことができ,
その後の児童の書く意欲にも高まりが見られた。
【前単元で捉えた構成を想起する】
エ
エ
○
【組み立てメモをもとに文章を書いていく】
成果と課題
話の組み立てメモをもとに,「中」でどのように出来事を書いていくとよいかを
児童が捉え,人物のしたことが分かるように「中」の部分の出来事や会話文を考え
て書くことができた。
○ 「はじめ」「中」の話の流れを意識して,文と文のつながりに気をつけて書くこと
ができるようになった。
▲
交流の場面でお互いのよさを交流することはよくできたが,推敲や表現の工夫な
ど改善するところを見つけることが難しかった。
Ⅲ 研究の成果と今後の課題
1 仮説1について
○ 書くことの単元で培った書く力が他領域にも生かされ,自分の考えを適切に表現する力がつ
いてきた。
○ 他教科・領域においても,文章を書かせると,何を書こうか戸惑う児童はほとんどいなくなり,適
切な文章をかく児童が増えた。
(例) ・ 国語「グラフや表を利用して書こう」の学習を社会科の資料活用の場面で生かすこと
ができた。(5年)
・ 生活科でのお礼の手紙や観察文,算数の問題作りなどに生かすことができた。(1年)
○ 様式や視点を明確にすることで,感想程度だった交流活動が書き手の考えや内容などについ
ても活発に意見が交わされるようになった。
○ 交流の場面では視点を明確にすることで児童が以前よりスムーズに活動できるようになり,お
互いのよさを認め合いながら活動する様子が多く見られるようになった。
○ 表現タイムの取組が,子どもたちの実態を改めて知る機会となり,その後の指導に生かすこと
ができた。
▲
交流活動で友達のよい点は見つけることができるが,改善するところを見つけることが難しか
った。
▲ 推敲の為の交流では,正しい作文用紙の使い方や表記上のルールなどの定着が不十分で,
上手くいかない場面も見られた。
2 仮説2について
○ 授業で得た表現技法や評価語彙を用いて,普段の日記などにも表現の工夫が見られるように
なった。
○ ニュースや新聞記事に自分から興味を持ち,意欲的に感想を書く児童が増えた。
○ 内容に乏しくワンパターンになりがちだった日記が,テーマ日記等条件や様式を決めることで,
内容の深まりや表現の工夫が見られるようになった。
○ 環境面が整えられたことで,興味関心の高まりや,掲示を参考に表現を工夫する様子が見ら
れるようになった。
▲ 表現豊かに書いている反面,文章が長くなりすぎる児童も見受けられた。字数も様式の一つと
考え,その制限の中で書く経験も必要であった。
【標準学力検査(NRT)結果の推移】
領域
話すこと・聞くこと
書くこと
読むこと
伝統的な言語文化と国語の特質
全体
H24
107.8
108.8
114
107.2
109.5
H25 H26
108
109.2
109.8 112.8
110.8 113.4
104.6 104.6
108.3
110