Ⅱ 1 研究推進計画(研究推進部) H27.9.7 研究主題 筋道立てて考え,学び合う児童の育成 ~「分かった」 「できた」が実感できる授業を目指して~ 2 研究主題設定の理由 研究主題設定に当たっては,本校の教育目標『あたたかい心 つくりだす力』の重点である『「学び 合う子」 「力を合わせる子」 「運動を楽しむ子」』の具現を目指し,以下の視点から決定した。 (1)児童の実態より 当校の児童の実態として, 「基礎的な知識・技能の習得はよいが,身に付けた知識・技能を活用す る力が十分ではない。」 「自分の考えはもてても,それをうまく表現できない。」「友達の考えを聞い て自分の考えを見直したり,友達と交流し合いながら考えを深めたりする学習が苦手である。」「学 習態度に受動的な部分があり,自ら課題を解決しようとする意欲がやや低い。」があげられる。 これらのことから,課題を主体的に受け止めて見通しをもち,筋道立てて考え,関わり合って学 習する児童を育てることが大切であると考えた。 (2)昨年度までの実践より 昨年度の実践においては「筋道立てて考え,学び合う児童の育成」を研究主題として,算数科を 中心に研修を進めてきた。 昨年度の実践を通して,筋道立てて考える場面において、前時までの課題との違いを意識させた 課題提示や,既習事項を想起させることが児童に課題に対して解決の見通しをもたせる手立てが有 効であった。学び合いの場面においては,意図的な指名や振り返りの場面における算数用語を使っ たまとめの手立てが有効であった。その一方で,指導者の働き掛けや子ども主体の学び合いが不十 分であるという課題が残った。 そこで, 「筋道立てて考え,学び合う児童の育成」を研究主題とし,どの子も「分かった」「でき た」が実感できる授業を目指していく。今年度は学び合いを中心にして研修を進めていく。 (3)主題の意味 ①「筋道立てて考える児童」とは 学習課題に対して,分かっていることや求めることを整理して把握する。そして,既習事項 を生かして問題を解決するための見通しをもち,順序よく自分の考えを進めることができる児 童のことである。 「筋道立てて考える児童」の姿として以下のようなものが考えられる。 ・どのような方法で学習課題を解決できるか考える。 ・具体物を使って物を作ったり,操作したりして確かめる。 ・身の回りにある具体物や半具体物を用いて確かめる。 ・式,図,表,グラフ,言葉を用いて表現する。 これらを受けて各学年の授業で具体化を図っていく。 ②「学び合う児童」とは 自分の考えを友達に伝えたり友達の考えを聞いたりする活動を通して,自分の考えの根拠を より確かにしたり友達の考えを取り入れてよりよい考えをもったりする児童のことである。 1 「学び合う児童」の姿として,以下のようなものが考えられる。 ・仲間とかかわり合いながら学習を進める。 ・子どもたちが自分たちの手で、きまりや法則を見つけたり,既習と結び付けて活用したり する。 ・さまざまな考えを出し合い,互いに学び合っていくことで、自分の考えのよさに気付いた り,他の人の考えの良さを学んだりする。 これらを受けて各学年の授業で具体化を図っていく。 3 目指す児童の姿 当校では「筋道立てて考え,学び合う児童」の姿は以下の要素から構成されていると考え、授業 の指導過程を「つかむ・見通す」 「確かめる」「深める」「振り返る」とする。 ① 学習課題に対して,分かっていることや求めることを整理して把握する。既習事項を生かして 問題を解決するための見通しをもつ。 ② 順序よく自分の考えを進める。 「つかむ・見通す」 「確かめる」 ③ 自分の考えを友達に伝えたり友達の考えを聞いたりする。 「深める」 ④ 自分の考えの根拠をより確かにしたり友達の考えを取り入れてよりよい考えをもったりする。 「振り返る」 これらの要素をもとに、各指導段階での目指す児童の姿を次のように考える。 指導過程 目指す児童の姿 つかむ・ 見通す 課題をとらえ,解決への見通しをもつ子 確かめる 自分の考えの根拠を明らかにし,表現する子 深める 友達と考えを伝え合い,考えの違いやよさに気付き,自分の考えを深める子 振り返る 学習の深まりが自覚できる子 「筋道立てて考える児童」,「学び合う児童」の姿を具現化し,「分かった」「できた」を実感させ ていくことで、児童一人一人がより主体的に学んでいくと考える。筋道立てて考えたことを学び合 う姿は「深める」場を中心に表出されると考え,「深める」場に重点を置く。「深める」場での学び 合いを通して, 「分かった」 「できた」が実感できるための手立てを工夫していく。それは一人一人 の学びの場を保障するとともに,学習意欲を高めていくことになる。 4 研究内容 授業を通して「目指す児童の姿」(学び合い)にせまる具体的手立ての有効性を確かめる。 5 具体的方策 (1)「深める」場において 「深める」では,児童同士の関わり合いを充実させることで考えが深まると考える。 ① 学習形態(一斉・グループ・ペア)を工夫する。 ・児童が主体的に考えを伝え合うことができるように,学習形態や時間を検討するとともに, 「何を」 「どのように」 「どこまで」話し合うのかを明確にする。 ・それぞれの学習形態を場に応じて使い分けるようにする。 学習形態の学び合いのメリット 形態 学び合いにおけるメリット ペア ・相手意識が高まり,主体的に学びが進められる。 グループ ・比較検討することで,考えの違いやよさに気付く。 2 一斉 ・学級全体で考えが練り上げられる。 ②児童を関わらせるための教師の働き掛けを工夫する。 ・ 「考え方の根拠に着目させる補助発問」「考えをゆさぶる補助発問」を工夫する。 ・児童相互の考えを関わらせることができるように,児童の考えの橋渡し役をする。 ・考えの違いが分かるように意図的に指名する。 ③児童の考えのポイントを可視化し,考えを比較しやすいように工夫する。 ・考えの仲間分けや整理をする。 ・考えのポイントをまとめる。 など (2) 「深める」場を充実させるためにその他の指導過程で配慮していくこと 「つかむ・見通す」場において 既習事項を想起させる。学習問題から課題と関連付けさせることで解決の見通しをもたせる。 「確かめる」場において ・自分の見通しに基づいて,図や式,表,グラフなどを用いて根拠を示しながら解決する。 ・自力解決できない児童を把握する。 「振り返る」場において ・自分の考えを再構成してまとめたり,頭の中を整理したり,自分の理解度を確認したりする時 間として位置づける。そのために「分かった」 「できた」というきっかけとなる考えに触れて記 述させるなど学年に応じた手立てをとる。 ☆資料 ○具体的な「学び合う」姿として,以下のようなものが考えられる。 ・自分の考えを分かりやすく説明する。 ・分からないことを友達に説明する。 ・友達の考えを理解する。 ・友達の考えを理解し,別の友達に説明する。 ・自分の考えと友達の考えを比較する。 ・友達の考えのよい点を認める。 ・疑問に思ったことを質問する。 ・お互いの考えを伝え合う中から,合理的・論理的な考え(「早い,簡単,便利,いつでも使 える」など)を見つけていく。 ・お互いの考えを伝え合う中から,自分の考えを修正したり深めたり広げたりする。 ○「学び合い」の場において ①学習形態(全体・グループ・ペア)を工夫する。 ・児童が主体的に考えを伝え合うことができるように,学習形態や時間を検討するとともに, 「何を」 「どのように」 「どこまで」話すのかを明確にする。 それぞれの学習形態のメリットとデメリットを踏まえて使い分けるようにする。 3 学習形態のメリットとデメリット 形態 メリット ペア ・話しやすい雰囲気になりやすく,短時 間で活動できる。 デメリット ・新しい考えなどに出会う機会が限られてくる。 ・2人とも説明できなかったり,考えられなかった ・説明する機会が多い。 グル ープ ・全員が理解していなくても活動でき る。 りしたときに行き詰まる。 ・ペアよりは発言が少なくなる。 ・グループごとの進行具合に時間差が生じる。 ・伝え合う中で考えを練り上げられる。 ・メンバーによって,活動に深まりができないこと がある。 一斉 ・学級全体で考えが練り上げられる。 ・多くの児童が説明するには,時間がかかる。 ・全員で同時に事柄を共通に話し合い, 理解できる。 ②個々の考えを把握し,学び合いを促す発問を工夫する。 ・ 「考え方の根拠に着目させる発問」「考えをゆさぶる発問」を工夫する。 ・児童相互の考えを関わらせることができるように,児童の考えの橋渡し役をする。 ・自分の考えを見直したり,友達の考えを取り入れたりしてより有効な解決方法が導き出せる ようにする。 ・考えを発表させる順序を計画的に行う。 関わりをもたせるために,具体的には次のような発問が考えられる。 ・ 「○○さんの考えの続きが分かりますか。」 ・ 「○○さんの考えを隣同士で説明してみましょう。」 ・ 「○○さんは,つまり,何を言いたかったのかな。」 ・ 「○○さんの考えの素晴らしいところはどこかな。」 ・ 「○○さんはなぜその考えを思いついたのかな。」 ・ 「○○さんの気持ちが分かりますか。」 ③学び合う場の工夫をする。 ・自力解決が速く終わった子同士で話し合ったり,つまずいているところを質問したりするこ とで自分の考えをより確かにしたり、深めたりする場にする。 ④児童の課題解決の過程が分かるように板書を工夫する。 ・課題解決に向けて児童から出た考えを吹き出しなどで板書し,視覚から捉えさせるようにす る。 ○「自力解決」の場において ①説明パターンやキーワードの提示 ・相手に分かりやすく表現する際には,次のような言葉を使って記述することが考えられる。 ・「○○だから,△△になる。 」 ・「AとBを比べると,○○が違うから,Aの方が△△だ。」 ・「○○のときは,~した。だから,△△のときにも,同じように~すればよいと思う。」 ・「まず,○○。次に,△△。最後に,□□。」 ・「○○なのだから,~なるはず。」 などである。 4 ○「振り返り」の場において ①適用問題や発展問題を用意する。 ・学習したことが活用できるように,適用問題や発展問題に取り組ませる。時間内の実施が難 しいときは家庭学習の課題とし、確実に点検を行う。 ②再現活動の設定 ・ペアなどで「見つけた決まりや分かったことをキーワードを使って振り返り作文を書く」 「価 値ある考えを復唱する」など、大事なことを再現する。 ○「学び合い」の場を充実させるために普段から配慮していくこと ①「話す・聞く」技能の育成に取り組む。 ・ 「聞き方のポイント」 「話し方のポイント」を明らかにしながら,日頃から取り組むようにす る。 〈聞き方ポイント〉 〈話し方ポイント〉 1 友達の目や顔を見て聞く 1 友達の目や顔を見て話す 2 反応しながら聞く 2 聞いている友達に問いかけるよ 3 分からないときは聞き返す うに話す 学び合いでは、次のような話し方が考えられる。 ・ 「○○の式は、~。答えは~です。なぜかというと~。」「そのわけは~。」 ・ 「質問はありませんか。 」 ・ 「○○さんに似ていて~。」 「○○さんと違って~。」 「○○さんに付けたすと~。」などである。 ・ 「~まではできました。この後が分かりません。続きを教えてください。」 ②ノート指導を日常的に行う。 ・限られた時間の中である程度の量が書けるようにする。 板書を写す。 振り返りを書く。 どういうものを書けばよいかを知らせる。 「つなぎ言葉をたくさん使おう。」 「友達の名前をた くさん使おう。 」 ・変容が現れるように書く。 「はじめは○○だと思っていたけど、△△さんの説明を聞いて、□□のやり方が簡単にで きることが分かりました。 」 「○○さんのやり方でやったら、簡単にできました。」 「やり方は一つだけでなく、たくさんのやり方がありました。いろんなやり方で試してみ たいと思いました。 」など 5
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