平成26年度 研究主題 ☆修正版 飯塚市立蓮台寺小学校 ~学 び 合 い と 活 用 を 重 視 し た 学 習 過 程 の 工 夫 を 通 し て ~ 1 主題設定の理由 社会の要請や算数科の改訂の視点から ⑴ 小学校学習指導要領解説算数編では、算数科の授業の中で、基礎的・基本的な知識及び 技能を確実に身に付けることと、身に付けた知識や技能を算数科の中だけでなく、進んで 生 活 や 学 習 の 様 々 な 場 面 で 「 生 か そ う と す る 。」「 活 用 し よ う と す る 。」 態 度 の 育 成 が 重 視 されている。 平 成 1 9 年 度 よ り 実 施 さ れ て い る 全 国 学 力 ・ 学 習 状 況 調 査 の 結 果 か ら 、「 主 と し て 『 活 用』に関する問題」に課題があることが明らかになっている。 筑豊教育事務所管内の子どもにおいては、次の2点で落ち込みが見られたと報告されて い る 。(「 な ぜ 、 我 々 は 授 業 改 善 の 道 を 歩 む の か 」 ~ 平 成 2 6 年 3 月 ~ よ り ) ・ 自分の考えを書くことが苦手。併せて「無答」が多い傾向が認められる。回答を安 易に放棄してしまう意欲の問題、問題文の意味をとらえられない読解力不足などが原 因と考えられる。 ・ 情報を関連付けて考えることが苦手。2種類の資料を比較して共通点や差異点を見 つけたり、複数のデータを結びつけて答えたりする分野が弱い。 これらのことから、数、式、図、表、グラフなど様々な表現手段を用いて考えたり、自 分の考えを説明して学び合う学習活動が、算数科の学習指導において求められていると考 えられる。 子どもの実態から ⑵ CRT 学 力 検 査 「 算 数 科 」 の 結 果 ( 平 成 2 5 年 1 月 実 施 ) か ら 見 え た 課 題 ・ 算数科として全国比が100を上回っている学年でも「算数への関心・意欲・態度」 の観点において、全国比100を下回っている学年がみられる。 ・ 低学年において「数学的な考え方」と「数量や図形についての知識・理解」の観点で 全国比100を下回っている。 全 国 学 力 ・ 学 習 状 況 調 査 の 結 果 ( 平 成 24・ 25 年 度 実 施 ) か ら 見 え た 課 題 ・ 国 語 科 、 算 数 科 と も に 「 A 問 題 : 主 と し て 知 識 」 よ り も 、「 B 問 題 : 主 と し て 活 用 」 において県平均、全国平均を大きく下回っている。 ・ 算数科の B 問題では、特に「自分が答えを求めたわけを書く」設問の正答率が低く、 自分の思考過程を表現できてない実態がある。 これらから、既習事項をもとに自分の考えを図や式などを用いて表現し、友だちと伝え 合ったり、話し合ったりして学び合い、学んだことを活用する学習過程を工夫した授業作 りの研究を進めて行きたい。この授業作りの中で「自分の考えを認められる喜び」や「自 分 の 力 で 問 題 が 解 け た と き の 喜 び 」 を 子 ど も に 味 わ わ せ る こ と は 、「 算 数 が 好 き 。」「 学 ぶ こ と が 楽 し い 。」 と 思 え る 子 ど も を 育 成 す る 上 で 価 値 が あ る と 考 え る 。 2 主題の意味 ⑴ 「学ぶ喜び」とは 子どもたちは、勉強がおもしろくなければ決して自ら学ぼうとはしない。おもしろそう な 課 題 に 出 会 い『 や っ て み た い 』と 感 じ る「 意 欲 」、一 つ の こ と に 熱 中 し て 考 え ぬ い た「 充 足 感 」、 問 題 を 解 く こ と が で き た 「 達 成 感 」、 自 分 自 身 が 一 回 り 大 き く な っ た よ う な 「 成 長感」といった『学ぶ喜び』を強く感じられるからこそ、さらに学習意欲がわいてくると 考える。こうした思いを感じることが学ぶ喜びだと考える。 ⑵ 「学ぶ喜びを実感する算数科学習」とは 学ぶ喜びは、教師が楽しい問題を準備し楽しい解決方法を提示しうまくまとめさせる方 法で学習を進めても感じることはできない。子どもが、目的意識を持って主体的に取り組 み主体的に課題に働きかけ、経験や知識・技能を総動員して解決にあたることで初めて味 わうことができるものである。子どもが自分の思いや願いを実現するために学習を進め、 そこで算数科のもつよさ(簡潔性・一般性・有用性等)を感じさせることが「学ぶ喜びを 実感する算数科学習」である。本研究における「学ぶ喜び」とを「学ぶ喜びを感じた子ど もの姿」を次のようにとらえる。 ☆『学ぶ喜び』 ① 課題を把握し、解くことへの意欲をもつことができる。 ② 互いの考えを理解し、よりよい考えを見いだすことができる。 ③ 学んだことを活用することができる。 ☆『学ぶ喜びを感じた子どもの姿』 ① 「やってみたい。」「おもしろそうだな。」 ② 「自分の考えを説明できたぞ。」「○〇さんの考えがわかったぞ。」 「ぼくの考えも、〇〇さんの考えもいいな。」 「もっといいやり方がわかったぞ。」 ③ 「問題がとけたぞ。」「次は〇〇をやってみたい。」 「△△にも使えそうだ。」 ⑶ 「学び合い」とは 学び合いとは子どもたちが持っている考えや思いを交流させることで自らを高めてい く 営 み で あ る 。 算 数 科 に お け る 学 び 合 い と は 、 答 え を 見 つ け た り 、自 分 の 考 え を 話 し 合 っ たりすることで自分の考えのよさや不十分さに気づいたりよりよい考え方に発展させた りするものであると考える。 学 び 合 い で も 、 「伝 え 合 い 」 と 「 話 し 合 い 」 を 使 い 分 け る 。 ⑷ 「活用」とは 学習したことが生活や学習の様々な場面で活かされることにより、学習が意味あるも のになり、算数のよさを実感を伴って味わうことができるようになることである。活用 場面を仕組むことは次の点から意義あると考える。※1 〇 学 習 し た こ と が 深 め ら れ た り 、定 着 を 図 っ た り す る こ と が で き る 。 〇 学習してきたものの見方や考え方をもう一度使うことにより、考える力 を一層つけることができる。 〇 数学的な見方や考え方のよさを味わうことができる。 〇 新しいものが見えてくる楽しさを味わうことができる。 〇 算数を自らつくっていく楽しさを味わうことができる。 〇 学習したものが身についたかの評価をすることができる。 また、学習した内容を活用する場面として、次の3つが考えられる。※2 3 ◎ 日常生活への活用場面。 ◎ 総合の時間、他教科への活用場面。 ◎ 次の算数の学習への活用場面。 研究の目標 算数科学習において学び合いや活用場面を重視した学習過程を工夫することで、子ども が学ぶ喜び実感できる学習について明らかにする。 4 仮説 「つかむ-さぐる-みがきあう-いかす」の学習過程を設定し、適切な教師の支援を行えば、 子どもは学ぶ喜びを感じて主体的に学び、確かな学力が身につくだろう。 5 1単位時間の学習過程 段階 学 1 つ 活 動 本時の学習のめあてをつかむ活動 (1)本時問題について話し合い、課題をつかむ活動 ・分かることは か む 習 求めることは ・前時学習との相違点 (2)生活体験や既習事項から解決の見通しを話し合い、学習のめあてをつかむ活動 ①方法の見通し(既習事項をもとに。「あの方法を使うといいな。」) ②結果の見通し(「答えは~ぐらいかな。」「たぶん~なるだろう。」) めあて さ 2 見通しや既習の知識・技能を活用して、自力で課題を追求する活動 低学年 ぐ る 中学年 高学年 考えたことを具体物や絵、考えたことを絵や言葉と数、考えたことを言葉と数、式、 言葉と 数、式、図を使 っ 式、図、数直線、グラフ、 図、数直線、グラフ、表な て表す。 表などを使って、根拠を明 どを使て、根拠を明確にし 確にしながら表す。 ながら表す 自力解決が難しい児童には、個別の支援や、ヒントカードの準備など手立てをうつ。 自力解決がで終わっていない子どもについては、次のみがきあう段階で友達の説明 をもとに自分の考えを書くようにさせる。 み 3 筋道立てて考えを説明し、学び合う活動 が 目的を明確にもって、交流する活動を位置づける。【着眼点1】 ○学び合い活動の目的 き 伝え合い あ う 型 学び合い 独立型 序列型 統合型 構造型 それぞれの考えの それぞれの考えの効 そ れ ぞ れ の 考 え の 共 そ れ ぞ れ の 考 え の 関 目 独自性やよさを共 率性に着目し、よさ 通 性 に 着 目 し 、 帰 納 連 性 に 着 目 し 、 い く 的 有し多様性を広げ を比較検討する。 的に数理を見いだす。つ か の グ ル ー プ に ま る。 とめる。 教 それぞれの考え方 多様な考え方や方法 多 様 な 考 え 方 や 方 法 そ れ ぞ れ の 考 え の 相 師 や方法のよさを理 を簡潔性・明瞭性に を 、 共 通 点 に 着 目 し 違 点 を 明 ら か に し な の 解し認め合えるよ 着目させて話し合わ て 話 し 合 わ せ 、 一 つ が ら 話 し 合 わ せ 、 考 支 うにする。 せ、よりよい考え方 にしぼっていく。 えをいくつかのグル 援 を見つけさせ順番を ープに分けさせる。 つけさせる。 ○学び合いの形態(例) ペア → 自分の考えを整理するために行う。 自力解決が途中の子も友達の説明によって解決することができる。 グループ→ グループ内で出された考えをもとに、よりよい考えを導き出す。 一斉 よりよい考えに練り上げる。共通性から一つの考えに練り上げる。 → いくつかのグループに分ける。 ○学び合いの姿 (学び合いの目的により学年の姿が前後することもある。) 低学年 中学年 高学年 ・自分 の考えや方法を 進 ・自分の考えや方法を相手 ・自分の考えの根拠を明確 んで話す。 に分かるように話す。 ・友達 の考えを認め、 よ ・友達の考えと比べ、共通 さを見つける。 点や相違点を見つける。 にして、相手に分かるよ うに話す。 ・友達の考えの中からより よい考えを生み出す。 い 4 か 解決した課題を発展させ、さらに課題を追求する活動 学習したことを広げたり、深めたりする。活用を通して本時内容の定着を図る。 【着眼点2】 す ○他の場面に応用する。 ・生活場面の問題を解く。 ・数値や文章を入れ替えた適用問題を解く。 ・学習した事を使って応用的な問題を解く。 ○新たな問題に発展させる。 ・学習内容を越えて次の学年の内容まで踏み込んだ内容を考える。 ・学習内容を生かして問題を作る。 ◆評価はいかす段階でとる。 ☆ 6 着眼点 着眼点① みがきあう段階の手立て 考 え を 交 流 す る 学 び 合 い の 場 面 で は 指 導 者 が 目 的 を 意 識 し 、「 伝 え 合 い 」と「 話 し 合 い 」 を使い分ける。それぞれの目的に応じて4つのタイプに分ける。 学び合い活動 類 型 目的に応じた話し合いのタイプ 伝え合い 独立型 それぞれの考えの独自性を活かす。 教師の支援 それぞれの考えのよさを認め 考えの特長に着目させる。 合う。 序列型 それぞれの考えの効率性に着目する。 効 率 性 に 着 目 し 、そ れ ぞ れ の 考 えに順番をつける。 話し合い 統合型 それぞれの考えの共通性に着目する。 共通性に着目し、考えを1つ にしぼっていく。 構造型 それぞれの考えの関連性に着目する。 相違点を明らかにし、考えを いくつかのグループに分ける。 学び合い活動 類 型 手立て1 発問例 伝え合い 独立型 「 つ ま り 、 ○ ○ さ ん は ど う 考 え た の 手立て2 ○ で す か 。」 支援の具体例 個々の考えを全員が共有で きるように発表のさせ方を工 「○○さんの考えのよいところはど 夫する。 こ で す か 。」 「 本 当 に ~ で す か 。」( 考 え の正 誤 を 問 う ) 序 列 型 「 分 か り や す い 考 え は ど れ で す か 。」 ○ 「いつでも、~できるのはどの考え 考えの効率性を確かめられ る別の問題を示す。 で す か 。」 話し合い 統合型 「 そ れ ぞ れ の 考 え に 共 通 し て い る と ○ こ ろ は ど こ で す か 。」 「どの考えにもいえることは何です 図形を変形させたり、式を 変形させたりして、同じ計算 になることを確かめる。 か 。」 構造型 「 そ れ ぞ れ の 考 え の 図 や 式 で 、 似 て ○ い る 考 え や 方 法 は あ り ま せ ん か 。」 をしたり、グループに名前を 「それぞれの考え方は、みんな違う の で し ょ う か 。」 「~に注目して、グループに分けま し ょ う 。」 観点を示してグループ分け つけたりする。 ○ 考えを表に整理する。 着眼点② いかす段階での手立て 学 習 し た こ と を 広 げ た り 、深 め た り す る た め に 次 の よ う な 手 立 て を 行 う 。 〇 他の場面に応用する。 ・生活場面の問題を解く。 ・数値や文章を入れかえた適用問題を解く。 ・基本問題を応用した問題を解く。 〇 新たな問題に発展させる。 ・学習内容を超えて次学年の内容まで踏み込んだ問題を考える。 ・一般化を図る。 ・学習内容を活かした問題作りをする。 6 研究を支える日常活動 〇繰り返し学習 ・チャレンジタイムの活用 ・ 単 元 末 で の 習 熟 学 習 ( TT の 活 用 ・ 習 熟 度 別 学 習 の 奨 励 ) 〇学習習慣の確立 ・家庭学習の内容の充実 ・家庭学習チェックシートの実施 〇学習規律の確立 ・授業のきまり「5つの約束」 ・発表の仕方、話の聞き方、ノート指導の充実 参考資料 ※1「活用力が育つ算数的活動」 全国算数授業研究会著 ※2「コミュニケーションで作る新しい算数学習」 古藤 怜 東洋館出版社 新潟算数教育研究会著 東洋館出版社 ※ 表現力・コミュニケーション能力を育てる算数授業 金本良通 編著 明治図書
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