5. 複素微分 一般に,複素変数,複素数値の関数のことを 複素関数とよぶ。 ← 関数 f ( z ) の場合でいえば 「複素変数」… z が複素数 「複素数値」… f (z ) が複素数 f ( z ) が複素数 α (アルファ)の近くで定義された複素関数であって, f (α+h)− f (α) f ' ( α) = lim h →0 h ※ h→0 は |h|→0 を意味する。 が存在するとき, 一般に z → z' は |z - z'| → 0 f (z ) は z=α において複素微分可能 を意味する。 であるといい, f ' (α) を微分係数という。 f (α+h)− f (α) という式の意味は, h →0 h 「 h が 0 に近づくかぎり,どんな近づき方をしても f (α+h)− f (α) は 1 つの極限 f ' (α) に近づく 」 h ということである。 (注意) f ' (α) = lim 例題 5.1 複素関数 f ( z )=z 2 は任意の複素数 α において複素微分可能であることを確かめよ。 また, z=α における微分係数を求めよ。 (指針) 定義に忠実に行えばよい。実数の f (x )=x 2 の場合と何も変わらない。 (解) α を任意の複素数とする。複素数 h に対し 2 2 2 f (α+h)− f (α) (α+h) −α 2 α h+h = = = 2 α+h h h h この値は h → 0 とするとき 2 α に収束する。 ゆえに f (z ) は z=α において複素微分可能であり,微分係数は 2 α である。 例題 5.2 複素関数 f (z )=x 2 + y 2 ( z= x+ y i ),複素数 α=a+b i に対して f (α+ϵ)− f (α) f (α+ϵi)− f (α) (1) 実数 ϵ (イプシロン)に対して と の値を考え, ϵ ϵi ϵ → 0 とするときの極限を調べよ。 (2) α≠0 とする。 f (z ) は z=α において複素微分可能で あるといえるか。 (解)(1) 実数 ϵ に対して, α+ϵ と α+ϵi を標準形で表すと それぞれ α+ϵ=(a+ϵ)+b i , α+ϵi=a+(b+ϵ)i であるから f (α+ϵ)− f (α) {(a+ϵ)2+b 2 }−(a 2+b 2) (a+ϵ)2−a 2 = = = 2 a+ϵ ϵ ϵ ϵ 2 2 2 2 2 2 f (α+ϵi)− f (α) {a +(b+ϵ) }−(a +b ) ( b+ϵ) −b = = ϵi ϵi ϵi 2 b+ϵ 1 = = −(2 b+ϵ)i ← =−i i i ・ α α+εi ・ ・ α+ε したがって ϵ → 0 のとき,それぞれ 2 a および −2 b i に収束する。 (2) (1)において ϵ→ 0 , ϵi → 0 であるから,もし複素微分可能であるならば 2 つの値は共通の極限値に近づかなければならない。 ところが a=b=0 ではないから 2 a≠−2 b i となり, ← 2 a =2 a+ 0 i −2 b i = 0 −2 b i (1)の 2 つの極限値が異なる。 ゆえに,複素数の h に関して極限をとるときは f (α+h)− f ( α) lim は存在しない。 h→0 h したがって f (z ) は z=α において複素微分可能でない。 ※ ほかにも,Re(z) = x , Im(z) = y , z = x- i y などは複素微分可能でない。 (複素微分の基本的な公式) 次の公式は,実数の場合とまったく同様に確かめられる。 [1] 複素関数 f (z ) , g ( z) が z=α において複素微分可能であるとき, (a) h= f ±g のとき h ' (α)= f ' (α)±g ' (α) h=c f のとき h ' (α)=c f ' (α) ( c は複素数の定数 ) (b) h= f g のとき h ' (α)= f ' (α) g ( α)+ f (α) g ' (α) (c) h= f ' (α) g (α)− f ( α) g ' ( α) f のとき h ' (α)= (ただし g (α)≠0 とする) g g (α)2 特に h= f ' ( α) 1 のとき h ' (α)=− (ただし f (α)≠0 とする) f f (α)2 [2] k を整数とするとき (d) 複素関数 f (z )=z k に対して f ' ( α)=k α k−1 ( k <0 の場合は α≠0 とする) [3] 複素関数 f (z ) が z=α において,また g ( w) が w= f (α) において, それぞれ複素微分可能であるとき (e) h( z )=g ( f ( z)) とおけば h ' (α) = g ' ( f (α)) f ' (α) (合成関数の微分法則) (例) h( z )={ f (z )}k のとき, g (w)=w k として(d), (e)を適用すれば, (ただし細かい条件は省略する) h ' (α)=k { f (α)}k−1 f ' (α) 例題 5.3 複素関数 f (z ) が z=α において複素微分可能でかつ f (α)≠0 であるとき, 1 複素関数 g (z )= が z=α において複素微分可能であることを確かめ, f (z) 微分係数を求めよ。 (解)複素数 h に対して g (α+h)− g (α) 1 1 1 1 f ( α)− f (α+h) = ( − )= h h f (α+h) f (α) h f ( α+h) f (α) f (α+h)− f (α) 1 h f (α+h) f (α) f (α+h)− f (α) h → 0 とすると → f ' ( α) , f (α+h)→ f (α) であるから, h g (α+h)− g (α) f ' (α) →− h f (α)2 f ' (α) したがって g (z ) は z=α において複素微分可能で, g ' (α) = − . f (α)2 =−
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