10-12月期法人企業統計と二次QE予測

経済分析レポート
2016 年 3 月 1 日
全4頁
Indicators Update
10-12 月期法人企業統計と二次 QE 予測
製造業の経常利益が大幅減/二次 QE は下方修正を予想
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 久後 翔太郎
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

2015 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比▲1.7%となり、
2011 年 10-12 月期以来の前年割れを記録した。売上高が同▲2.7%と減少に転じたこと
に加え、原油安を主因とした変動費要因による経常利益の押し上げ寄与が縮小したこと
が減益要因となった。

2015 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)
は前年比+8.9%と 11 四半期連続で増加を維持したものの、増加幅は前期(同+11.2%)
から縮小した。季節調整値で見ても、前期比▲0.0%と僅かながらも 2 四半期ぶりの減
少となった。季節調整値の動きを業種別に見ると、製造業は同+0.1%、非製造業は同
▲0.1%となっており、いずれも概ね横ばい圏の推移であった。依然として加速感は見
られないものの、前期にやや高めの伸びを記録していたことを考慮すると、設備投資は
底堅い結果であったと判断できる。

今回の法人企業統計の結果を受けて、10-12 月期 GDP 二次速報(3 月 8 日公表予定)で
は、実質 GDP 成長率が前期比年率▲1.6%(一次速報:同▲1.4%)となり、一次速報か
ら下方修正されるとみている。公共投資、在庫投資、設備投資といった項目が下方修正
されることで、全体が押し下げられる公算だ。
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企業収益動向:製造業の経常利益が大幅減
2015 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比▲1.7%となり、2011
年 10-12 月期以来の前年割れを記録した。売上高が同▲2.7%と減少に転じたことに加え、原油
安を主因とした変動費要因による経常利益の押し上げ寄与が縮小したことが減益要因となった。
収益の動きを業種別に見ると、製造業では売上高が前年比▲1.4%、経常利益は同▲21.2%と
なり、2 四半期連続の減収減益を記録した。内訳を見ても、幅広い業種で減益を記録しており弱
さが目立つ内容である。原油安の影響の剥落に加え、円安による輸出金額の増加傾向が一服し
たことが収益の下押しに寄与した。先行きを考えても、海外経済の停滞及び円高の進行に伴う
輸出金額の伸び悩み、更には個人消費を中心とした内需の弱さが早急に改善する見込みは薄く、
製造業では業績の先行き不透明感が強まっている。製造業の業種別の動向を捉えると特に、「情
報通信機械器具」(同▲70.0%)、「輸送機械器具」(同▲15.1%)、「電気機械器具」(同▲30.9%)
といった加工業種の減益が全体を大きく押し下げた。いずれも共通して、変動費要因が経常利
益の減少に大きく寄与している。ただし、「輸送機械器具」及び「電気機械器具」では、売上
高は前年比プラスを確保している一方、「情報通信機械器具」では売上高の減少も収益の悪化
に寄与している。同業種に関しては、海外向けの売上数量の弱さが利益の押し下げに働いた模
様だ。また、素材業種に目を向けても、「化学工業」(同▲17.1%)や「鉄鋼業」(同▲62.0%)
といった業種での減益が継続している。いずれも市況の悪化が継続しており、販売価格の低下
が売上高の減少に直結した格好だ。
非製造業の経常利益は前年比+12.7%となり前年比プラスを確保した一方、売上高は同▲
3.2%と前年割れを記録した。製造業とは対照的に、幅広い業種で経常利益が前年を上回る推移
を続けており、底堅さが伺える。業種別に見ると、「不動産業」(同+48.0%)や「情報通信業」
(同+26.4%)、「建設業」(同+21.4%)、などの業種が増益を確保した。
図表 1:経常利益の動向(全規模)
業種別経常利益(前年比)
経常利益の要因分解(前年比)
60
(前年比、%)
30
25
40
20
20
(前年比、%)
非製造業
製造業
15
10
0
5
-20
0
その他要因
変動費要因
人件費要因
売上高要因
-40
-60
-80
経常利益
(全産業、除く金融・保険)
-5
-10
-20
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ (四半期)
(年)
11
12
13
14
15
(出所)財務省統計より大和総研作成
経常利益
(全産業、除く金融・保険)
-15
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ
11
12
13
14
15
(四半期)
(年)
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企業収益の動向を季節調整値で見ると、経常利益は前期比▲1.5%と 2 四半期連続の減益とな
った。業種別に見ると、製造業が同▲13.5%、非製造業が同+5.1%となり、製造業の弱さが全
体を下押しした格好だ。
図表 2:売上高、経常利益(季節調整値)の推移
売上高・経常利益の水準(季節調整値)
(兆円)
450
業種別経常利益(季節調整値)の推移
(兆円)
24
(兆円)
20
全産業
(除く金融・保険)
売上高
400
20
350
300
15
16
10
250
12
200
非製造業
5
150
8
製造業
100
経常利益
(右軸)
50
0
4
0
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 (年)
0
-5
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
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Ⅰ
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Ⅰ
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Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ(四半期)
06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
(出所)財務省統計より大和総研作成
設備投資動向:製造業・非製造業とも底堅い結果
2015 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は前年
比+8.9%と 11 四半期連続で増加を維持したものの、増加幅は前期(同+11.2%)から縮小した。
季節調整値で見ても、前期比▲0.0%と僅かながらも 2 四半期ぶりの減少となった。季節調整値
の動きを業種別に見ると、製造業は同+0.1%、非製造業は同▲0.1%となっており、いずれも
概ね横ばい圏の推移であった。依然として加速感は見られないものの、前期にやや高めの伸び
を記録していたことを考慮すると、設備投資は底堅い結果であったと判断できる。
設備投資(ソフトウェア除く)の動きを業種別に見ると、製造業は前年比+11.0%と 6 四半
期連続で前年を上回った。内訳を見ると、「情報通信機械器具」(同+33.1%)、「輸送用機械
器具」(同+17.1%)、「生産用機械器具」(同+43.5%)といった加工業種での増加が全体をけ
ん引した。輸送用機械器具については、新車投入を見据えた投資や研究開発投資が増加傾向に
あるとみられる。
非製造業は前年比+7.8%と 11 四半期連続で前年を上回った。内訳を見ると、「卸売業・小
売業」(同+14.2%)、「不動産業・物品賃貸業」(同+18.8%)といった業種がけん引役となっ
た。
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図表 3:設備投資(除くソフトウェア、季節調整値)の動向
業種別の動向
設備投資とキャッシュフロー
(兆円)
20
(前期比、%)
20
製造業
15
キャッシュフロー
18
設備投資
16
10
14
5
12
0
10
-5
8
-10
6
-15
減価償却費
-20
4
2
非製造業
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
全産業(除く金融・保険)
-25
(年)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
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Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
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Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ(四半期)
06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
(注1)減価償却費の季節調整は大和総研。
(注2)キャッシュフロー=経常利益/2+減価償却費。
(出所)財務省統計より大和総研作成
二次 QE 予測:10-12 月期 GDP 二次速報は一次速報から下方修正を予想
今回の法人企業統計の結果を受けて、10-12 月期 GDP 二次速報(3 月 8 日公表予定)では、実
質 GDP 成長率が前期比年率▲1.6%(一次速報:同▲1.4%)となり、一次速報から下方修正さ
れるとみている。公共投資、在庫投資、設備投資といった項目が下方修正されることで、全体
が押し下げられる公算だ。
図表 4:2015 年 10-12 月期 GDP
二次速報予測
2015年10-12月期
二 次 QE
一次QE
(予想)
実質国内総生産(GDP)
前期比%
前期比年率%
民間最終消費支出
前期比%
民間住宅
前期比%
民間企業設備
前期比%
民間在庫品増加
前期比寄与度%pt
政府最終消費支出
前期比%
公的固定資本形成
前期比%
財貨・サービスの輸出
前期比%
財貨・サービスの輸入
前期比%
内需寄与度
前期比寄与度%pt
外需寄与度
前期比寄与度%pt
名目GDP
前期比%
前期比年率%
GDPデフレーター
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
前年同期比%
(出所)内閣府統計より大和総研作成(予想は大和総研)
0.4 1.4 0.8 1.2 1.4 0.1 0.5 2.7 0.9 1.4 0.5 0.1 0.3 1.2 1.5 ▲
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0.4 1.6 0.8 1.2 1.3 0.2 0.5 3.3 0.9 1.4 0.5 0.1 0.4 1.4 1.5