経済分析レポート 2016 年 9 月 1 日 全4頁 Indicators Update 4-6 月期法人企業統計と二次 QE 予測 経常利益は 3 四半期連続減益/二次 QE は僅かな下方修正を予想 エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 岡本 佳佑 エコノミスト 小林 俊介 [要約] 2016 年 4-6 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比▲10.0%と、2011 年 10-12 月期以来となる 3 四半期連続の前年割れを記録した。売上高が同▲3.5%と 3 四半期連続で減少し、減益の主因となった。 2016 年 4-6 月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は 前年比+3.1%と 13 四半期連続で増加を維持したものの、伸び率は 3 四半期連続で縮小 した。一方、季節調整値で見ると、前期比▲0.5%と 3 四半期連続の減少となった。季 節調整値の動きを業種別に見ると、製造業は同+2.0%、非製造業は同▲1.9%であった。 4-6 月期の結果からは、企業収益が弱含み、企業が設備投資に対して慎重姿勢を強めて いる様子が窺われる。 今回の法人企業統計の結果を受けて、4-6 月期 GDP 二次速報(9 月 8 日公表予定)では、 実質 GDP 成長率が前期比年率+0.0%(一次速報:同+0.2%)と、一次速報から僅かに 下方修正されるとみている。公共投資が上方修正となる一方、在庫投資は下方修正され るとみられる。また、民間企業設備は一次速報からほぼ横ばいとなり、全体としては一 次速報を僅かに下回る見通しである。 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/4 企業収益動向:全産業の経常利益は 3 四半期連続の前年割れ 2016 年 4-6 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比▲10.0%と 3 四半期連 続の前年割れを記録した。これは、東日本大震災の影響が表れた 2011 年 4-6 月期から 2011 年 10-12 月期以来のことである。売上高も同▲3.5%と 3 四半期連続で減少しており、このことが 減益の主因となった。 収益の動きを業種別に見ると、製造業では売上高が前年比▲5.3%、経常利益は同▲22.4%と 4 四半期連続の減収減益となり、減収率・減益率ともに前四半期から拡大した。これまで企業収 益の追い風となってきた為替相場が円高に転じたことや、世界経済の減速などが収益を下押し したとみられる。先行きについても、円高の継続及び世界経済の減速に伴う輸出金額の伸び悩 みや、個人消費を中心とした内需の弱さが重石となり、業績の急回復は見込み難いとみている。 製造業の業種別の経常利益の動向を捉えると、前四半期に続き幅広い業種で減益となった。加 工業種では「輸送用機械器具製造業」(同▲27.0%)、 「情報通信機械器具製造業」(同▲58.5%)、 「生産用機械器具」(同▲37.9%)などの減益が目立った。上記 3 つの業種では、変動費要因が経 常利益の減少に大きく寄与した。また、素材業種に目を向けると、「鉄鋼業」(同▲75.6%)の 大幅減益が目立った。市況の悪化による販売価格の低下が継続しており、同産業では 4 四半期 連続で減益を記録している。一方、増益だった業種としては、「食料品製造業」(同+23.8%) や「繊維工業」(同+46.9%)が挙げられる。 非製造業の売上高は前年比▲2.8%と 3 四半期連続の減収、経常利益は前年比▲3.1%と 2 四 半期連続の減益となった。ただし、前四半期と比較すると減収率・減益率ともに縮小している。 業種別に見ると、「小売業」(同▲23.8%)や「電気業」(同▲25.8%)の減益が目立った一方、 「情報通信業」(同+22.4%)や「不動産業」(同+2.7%)などが増益を確保した。 図表 1:経常利益の動向(全規模) 業種別経常利益(前年比) 経常利益の要因分解(前年比) 60 (前年比、%、%pt) 30 25 40 20 20 (前年比、%、%pt) 非製造業 製造業 15 10 0 5 -20 その他要因 変動費要因 人件費要因 売上高要因 -40 -60 -80 経常利益 (全産業、除く金融・保険) 0 -5 -10 -15 経常利益 (全産業、除く金融・保険) -20 (四半期) ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ(四半期) ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ (年) (年) 11 12 13 14 15 16 11 12 13 14 15 16 (出所)財務省統計より大和総研作成 3/4 企業収益の動向を季節調整値で見ると、経常利益は前期比+4.8%と 1 年ぶりの増益に転じた。 業種別に見ると、製造業が同+5.2%と 1 年ぶり、非製造業が同+4.7%と 2 四半期ぶりの増益 であった。 図表 2:売上高、経常利益(季節調整値)の推移 売上高・経常利益の水準(季節調整値) (兆円) 450 400 業種別経常利益(季節調整値)の推移 (兆円) 24 (兆円) 20 売上高 20 350 全産業 (除く金融・保険) 15 16 300 10 250 12 200 非製造業 5 150 8 製造業 100 50 経常利益 (右軸) 0 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 4 0 (年) 0 -5 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ(四半期) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (出所)財務省統計より大和総研作成 設備投資動向:設備投資に対する慎重姿勢を強める様子が窺える 2016 年 4-6 月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は前年比 +3.1%と 13 四半期連続で増加を維持したものの、伸び率は 3 四半期連続で縮小した。一方、 季節調整値で見ると、前期比▲0.5%と 3 四半期連続の減少となった。季節調整値の動きを業種 別に見ると、製造業は同+2.0%、非製造業は同▲1.9%であった。4-6 月期の結果からは、企業 収益が弱含みつつある中、企業が設備投資に対して慎重姿勢を強めている様子が窺われる。 設備投資(ソフトウェア除く)の動きを業種別に見ると、製造業は前年比+11.1%と 8 四半 期連続で前年を上回った。内訳を見ると、「輸送用機械器具」(同+30.6%)、「鉄鋼業」(同+ 20.8%)、 「化学工業」(同+20.7%)といった業種で増加した。輸送用機械器具の内訳を見ると、 自動車・同附属部品で設備投資が増加基調にあることから、自動車販売が伸び悩む中において も、新車投入を見据えた投資などが継続しているものと推測される。 非製造業は前年比▲1.2%と 13 四半期ぶりに前年を下回った。内訳を見ると、「サービス業」 (同▲16.4%)、「小売業」(同▲12.9%)といった業種で設備投資が減少した一方、前四半期に 設備投資が減少していた「卸売業」(同+28.5%)が 2 四半期ぶりに増加した。 4/4 図表 3:設備投資(除くソフトウェア、季節調整値)の動向 業種別の動向 設備投資とキャッシュフロー (兆円) 20 (前期比、%) 20 製造業 15 キャッシュフロー 18 設備投資 16 10 14 5 12 0 10 -5 8 -10 6 -15 減価償却費 -20 4 2 非製造業 全産業(除く金融・保険) -25 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ(四半期) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注1)減価償却費の季節調整は大和総研。 (注2)キャッシュフロー=経常利益/2+減価償却費。 (出所)財務省統計より大和総研作成 二次 QE 予測:4-6 月期 GDP 二次速報は一次速報から僅かな下方修正を予想 今回の法人企業統計の結果を受けて、4-6 月期 GDP 二次速報(9 月 8 日公表予定)では、実質 GDP 成長率が前期比年率+0.0%(一次速報:同+0.2%)と、一次速報から僅かに下方修正され るとみている。公共投資が上方修正となる一方、在庫投資は下方修正されるとみられる。また、 民間企業設備は一次速報からほぼ横ばいとなり、全体としては一次速報を僅かに下回る見通し である。 図表 4:2016 年 4-6 月期 GDP 二次速報予測 2016年4-6月期 二 次 QE 一次QE (予想) 実質国内総生産(GDP) 前期比% 前期比年率% 民間最終消費支出 前期比% 民間住宅 前期比% 民間企業設備 前期比% 民間在庫品増加 前期比寄与度%pt 政府最終消費支出 前期比% 公的固定資本形成 前期比% 財貨・サービスの輸出 前期比% 財貨・サービスの輸入 前期比% 内需寄与度 前期比寄与度%pt 外需寄与度 前期比寄与度%pt 名目GDP ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 前期比% 前期比年率% GDPデフレーター 前年同期比% (出所)内閣府統計より大和総研作成(予想は大和総研) 0.0 0.2 0.2 5.0 0.4 0.0 0.2 2.3 1.5 0.1 0.3 0.3 0.2 0.9 0.8 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 0.0 0.0 0.2 5.0 0.4 0.1 0.2 3.2 1.5 0.1 0.3 0.3 0.2 0.8 0.8
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