Feb15, 2016 No.2016-004 Economic Monitor 伊藤忠経済研究所 主任研究員 武田 淳 主任研究員 石川 誠 03-3497-3676 [email protected] 03-3497-3616 [email protected] 2 四半期ぶりのマイナス成長で停滞続く日本経済(2015 年 10~ 12 月期 GDP) 10~12 月期の実質 GDP は前期比▲0.4%(年率▲1.4%)と大方の予想通り 2 四半期ぶりのマイ ナス成長になった。個人消費が大きく落ち込み、住宅投資や公共投資も減少した。設備投資は予 想外の増勢加速となったが、年明け以降の内外環境の悪化が失速リスクを高めている。デフレ脱 却は遠のき、次回消費増税のハードルは高まった。 2 四半期ぶりのマイナス成長 本日、発表された 2015 年 10~12 月期 GDP の 1 次 実質GDPの推移(季節調整値、前期比年率、%) 速報値は、前期比▲0.4%(年率▲1.4%)となった。 15 事前予想コンセンサスと概ね一致し、 大方の予想通り 10 2 四半期ぶりのマイナス成長となった(当社予想は年 5 率▲0.8%)。 0 実質GDP その他 設備投資 純輸出 個人消費 ▲5 個人消費が前期比▲0.8%(年率▲3.3%)と大きく落 公共投資 ち込んだほか、民間住宅投資が▲1.2%(年率▲4.8%) 、 ▲ 10 公的固定資本形成が▲2.7%(年率▲10.3%)と減少 ▲ 15 したことがマイナス成長の主因である。一方で、民間 ( 出所) 内閣府 2010 2011 2012 2013 2014 2015 企業設備投資は前期比+1.4%(年率+5.7%)と 2 四半期連続のプラス、純輸出も輸出を上回る輸入の減 少により実質 GDP 成長率に対する寄与度は前期比+0.1%Pt とプラスを維持した。 再びマイナス成長に転じたため、内閣府の試算 1をベースにすると需給ギャップは 10~12 月期時点で GDP 比▲1.8%程度まで拡大したとみられる。すなわち、潜在成長率の前提を内閣府が試算する 0.4%と すると、2016 年通年の成長率が前年比+2%程度まで高まらなければ、次回の消費増税(2017 年 4 月) の前に需給ギャップが解消しない計算となる。次回消費増税前にデフレ脱却が見通せる状況に至るのは相 当困難になったと言わざるを得ない。 なお、2015 年通年の成長率は前年比+0.4%となった。2014 年の 0.0%からは改善したものの、潜在成長 率程度にとどまり、需給ギャップは縮小しなかったことになる。 予想以上に低迷する個人消費 マイナス成長の主因となった個人消費(家計消費)の内訳を見ると、暖冬で衣料品の販売が不振だったこ とを反映して半耐久財が前期比▲3.7%と大きく落ち込んだほか、耐久財も前期比▲3.1%となり、全体を 押し下げた。また、食料品などの非耐久財(前期比▲0.8%)、サービス(▲0.1%)も減少しており、暖冬 による影響を差し引いても個人消費の基調は極めて弱い。 内閣府は 12 月 18 日、2015 年 7~9 月期時点の需給ギャップを GDP 比▲1.3%とする試算結果を発表している。なお、この試 算の前提となる潜在成長率は 0.4%であった。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研 究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告 なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。 1 Economic Monitor 伊藤忠経済研究所 個人消費を取り巻く環境は、失業率が 10~12 月平均で約 20 年ぶり 2の水準となる 3.2%まで低下、所定 内給与(基本給)は 10~12 月期に前年同期比+0.4%と小幅増ながら賃金が底上げされつつあるなど、着 実に改善している。そうした中で個人消費が低迷している要因を挙げるとすると、前回の消費増税(2014 年 4 月)までの間に耐久消費財需要が思った以上に先食いされたこと、所得環境の改善が今後も続くと消 費者が信じていないこと、先行き(老後)に対する漠とした不安、などが考えられる。いずれも解消・改 善には時間を要するものであり、この推察が正しいとすれば、個人消費に景気回復の牽引役を期待するこ とは難しい。まずは、今年の春闘において基本給の継続的な上昇が担保される必要があろう。 家計消費の財別推移(季節調整値、前期比、%) 機械受注と設備投資の推移(季節調整値、年率、兆円) 4 80 12 名目設備投資 3 2 機械受注(後方3期移動平均) 75 11 1 0 70 10 65 9 60 8 ▲1 ▲2 ▲3 その他 非耐久財 耐久財 ▲4 ▲5 半耐久財 サービス 家計消費 ※設備投資の最新期は当研究所予測、機械受注の最新期は10~11月平均 55 ▲6 2010 2011 2012 2013 2014 7 2005 2015 ( 出所) 内閣府 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 ( 出所) 内閣府 設備投資は予想外の増勢加速 一方で、設備投資が 7~9 月期の前期比+0.7%から 10~12 月期は+1.4%へ増勢を強めたことは、明るい 材料である。日銀短観などで企業の比較的強気な設備投資計画が確認されていたが、それが徐々に実行さ れていることを反映したものと評価できよう。 ただし、来月の 2 次速報時点で下方修正される可能性があることのほか、今年に入り海外景気に対する見 方が一段と悲観的になっていることや、急速に進んだ円高・株安が企業に設備投資の計画実行を先送りさ せる恐れがある。設備投資の先行指標である機械受注は、昨年 9~10 月に持ち直しの動きを見せたが、均 してみれば依然として頭打ちの状況を脱していない。このまま設備投資が拡大基調を維持できるかどうか 予断を許さない。 以上の通り、10~12 月期の GDP 統計は個人消費の回復力の乏しさを浮き彫りにするとともに、需給ギャ ップが拡大していることを示した。さらに、年明け以降の内外の環境変化は、復調の兆しを見せる設備投 資に冷や水を浴びせる恐れもある。次回の消費増税を予定通り行うためのハードルは相当に高まったと言 えよう。 2 1995 年 7~9 月期(3.2%)以来。 2
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