経済分析レポート 2015 年 3 月 2 日 全4頁 Indicators Update 10-12 月期法人企業統計と二次 QE 予測 変動費率低下で増益幅は拡大/二次 QE は下方修正と予測 エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 橋本 政彦 エコノミスト 久後 翔太郎 [要約] 2014 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比+11.6%と、 12 四半期連続の増益となり、増益幅は前四半期(同+7.6%)から拡大した。売上高に ついては前年比+2.4%と 6 四半期連続の増収となったものの、増収幅は前期(同+ 2.9%)から縮小しており、原油安を主因とした変動費率の低下が増益幅拡大の要因と なった。 2014 年 10-12 月期の全産業の設備投資(ソフトウェア除く)は前年比では+3.9%と 7 四半期連続で増加した。季節調整値で見ると、前期比+0.6%と 2 四半期連続の増加と なり、設備投資はごく緩やかながらも増加基調となっている。業種別に見ると、非製造 業は前期比▲0.1%と伸び悩んだものの、製造業が同+1.8%と増加したことが全体を押 し上げた。 今回の法人企業統計の結果を受けて、2014 年 10-12 月期 GDP 統計二次速報(3 月 9 日公 表)は、一次速報から下方修正されると予想する。大和総研では、実質 GDP 成長率は前 期比年率+1.8%(一次速報:同+2.2%)とみている。設備投資は前期比+0.3%(一 次速報:同+0.1%)へと上方修正されると見込むものの、在庫投資、および公共投資 の下方修正によって実質 GDP 成長率が押し下げられる公算である。 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/4 企業収益動向:12 四半期連続の増益、変動費率低下で増益幅は拡大 2014 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の経常利益は前年比+11.6%と、12 四半 期連続の増益となり、増益幅は前四半期(同+7.6%)から拡大した。売上高については前年比 +2.4%と 6 四半期連続の増収となったものの、増収幅は前期(同+2.9%)から縮小しており、 原油安を主因とした変動費率の低下が増益幅拡大の要因となった。なお、賃上げの動きが広が ったことで人件費は 2 四半期連続の増加となったが、売上が増加する中で労働分配率は前年か ら低下しており、利益に与える影響は限定的であった。 収益(前年比)の動きを業種別に見ると、製造業では売上高が前年比+0.1%と 6 四半期連続 の増収、経常利益は同+16.4%と 2 四半期連続の増益となった。製造業全体の増益に対する寄 与が特に大きかったのは、 「輸送用機械」 (前年比+38.0%)、 「情報通信機械」 (同+57.7%)、 「電気機械」(同+56.6%)。「電気機械」および「情報通信機械」は、売上高が前年比 2 桁の 高い伸びとなっており、円安進行を主因とした輸出の増加が利益の押し上げに寄与したとみら れる。「輸送用機械」についても同様に、円安が収益の押し上げに作用したとみられるが、前 年の売上高が消費税増税前の駆け込み需要によって高水準であったことから、売上高の前年比 増加率は小幅なものに留まっている。一方で、変動費の大幅な減少が利益を押し上げる要因と なった。これに対して、減益になった業種を見ると、原油価格急落の影響を受けた「石油・石 炭」(前年比▲562.2%)は赤字に転落した。また、「食料品」(同▲13.3%)は売上の低迷を 主因に 3 四半期連続の減収減益となっている。 図表 1:経常利益の動向(全規模) 業種別経常利益(前年比) 経常利益の要因分解(前年比) 60 (前年比、%) 30 25 40 20 20 (前年比、%) 非製造業 製造業 15 10 0 5 -20 その他要因 変動費率要因 人件費要因 売上高要因 -40 -60 -80 経常利益 (全産業、除く金融・保険) 0 -5 -10 経常利益 (全産業、除く金融・保険) -15 -20 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ (四半期) (年) 11 12 13 14 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ 11 12 13 (四半期) (年) 14 (出所)財務省統計より大和総研作成 非製造業では、売上高が前年比+3.4%と 7 四半期連続の増収となり、経常利益も同+8.3% と 7 四半期連続で増加した。増益幅が前期(同+1.4%)から拡大したことに加えて、主要業種 の大半が前年比増益となる堅調な結果であった。経常利益を業種別に見ると、高水準の公共投 資等を背景に「建設業」(同+31.4%)が増益を維持したほか、売上が好調だった「情報通信 3/4 業」(同+15.8%)、「運輸業、郵便業」(同+23.5%)の経常利益が大幅に増加し、全体を 押し上げた。一方、「電気業」は 3 四半期ぶりの赤字となり、全体の足を引っ張った。 企業収益動向を季節調整値で見ると、全産業(金融業、保険業除く)の売上高は前期比+0.6% と 2 四半期連続で増加し、経常利益も前期比+10.0%と大幅に増加した。業種別に見ても、製 造業の売上高は前期比+0.6%、非製造業は同+0.6%と、いずれも 2 四半期連続の増加。経常 利益についても、製造業では前期比+13.7%と 3 四半期連続の増加、非製造業は同+7.7%と 3 四半期ぶりに増加に転じるなど、幅広い業種で収益の改善を確認させる堅調な結果であった。 図表 2:売上高、経常利益(季節調整値)の推移 売上高・経常利益の水準(季節調整値) (兆円) 450 業種別経常利益(季節調整値)の推移 (兆円) 24 (兆円) 20 全産業 (除く金融・保険) 売上高 400 20 350 15 16 300 10 250 12 200 非製造業 5 8 150 製造業 100 経常利益 (右軸) 50 0 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 4 0 (年) 0 -5 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ (四半期) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (出所)財務省統計より大和総研作成 設備投資動向:製造業の増加が全体を押し上げ 2014 年 10-12 月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は前年 比では+3.9%と 7 四半期連続で増加した。季節調整値で見ると、前期比+0.6%と 2 四半期連 続の増加となり、設備投資はごく緩やかながらも増加基調となっている。業種別に見ると、非 製造業は前期比▲0.1%と伸び悩んだものの、製造業が同+1.8%と増加したことが全体を押し 上げた。 設備投資(ソフトウェア除く、前年比)の動きを業種別に見ると、製造業は前年比+10.5% と 2 四半期連続で前年を上回った。収益が好調だった「電気機械」(同+32.3%)、「情報通 信機械」(同+20.7%)、「輸送用機械」(同+5.4%)などの加工組立業種の増加が全体を牽 引した。また、素材関連でも幅広い業種で設備投資は増加しており、このところ低迷が続いて いた「化学」(同+20.6%)が 7 四半期ぶりの増加に転じるなど、総じて底堅い結果であった。 非製造業は前年比+0.8%と、7 四半期連続で前年を上回ったものの、前期から増加幅が縮小 した。「卸売業、小売業」(同+3.7%)や「不動産業」(同+7.1%)、「サービス業」(同 +13.0%)などでは増加傾向が継続しているものの、「情報通信業」、「電気業」はそれぞれ 6 四半期連続、4 四半期連続の減少と、低迷が続いている。 4/4 図表 3:設備投資(除くソフトウェア、季節調整値)の動向 業種別の動向 設備投資とキャッシュフロー (兆円) 20 (前期比、%) 20 製造業 15 キャッシュフロー 18 設備投資 16 10 14 5 12 0 10 -5 8 -10 非製造業 6 -15 減価償却費 4 -20 2 -25 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 (年) ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ(四半期) 全産業(除く金融・保険) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (注1)減価償却費の季節調整は大和総研。 (注2)キャッシュフロー=経常利益/2+減価償却費。 (出所)財務省統計より大和総研作成 二次 QE 予測:10-12 月期 GDP 二次速報は小幅下方修正を予想 今回の法人企業統計の結果を受けて、2014 年 10-12 月期 GDP 統計二次速報(3 月 9 日公表) は、一次速報からわずかに下方修正されると予想する。大和総研では、実質 GDP 成長率は前期 比年率+1.8%(一次速報:同+2.2%)とみている。設備投資は前期比+0.3%(一次速報:同 +0.1%)へと上方修正されると見込むものの、在庫投資、および公共投資の下方修正によって 実質 GDP 成長率が押し下げられる公算である。 図表 4:2014 年 10-12 月期 GDP 二次速報予測 2014年10-12月期 二 次 QE 一次QE (予想) 実質国内総生産(GDP) 前期比% 前期比年率% 民間最終消費支出 前期比% 民間住宅 前期比% 民間企業設備 民間在庫品増加 前期比% 前期比寄与度%pt 政府最終消費支出 前期比% 公的固定資本形成 前期比% 財貨・サービスの輸出 前期比% 財貨・サービスの輸入 前期比% 内需寄与度 前期比寄与度%pt 外需寄与度 前期比寄与度%pt 名目GDP 前期比% 前期比年率% GDPデフレーター 前年同期比% 0.6 2.2 0.3 ▲ 1.2 0.1 0.2 0.1 0.6 2.7 1.3 0.3 0.2 1.1 4.5 2.3 (出所)内閣府統計より大和総研作成(予想は大和総研) 0.4 1.8 0.3 ▲ 1.2 0.3 0.0 0.1 0.4 2.7 1.3 0.2 0.2 0.9 3.7 2.3
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