密集市街地とは

松塚充弘 招聘准教授(関西電力株式会社)、山本孝夫 教授
川口 潤 草分剛瑠 津田泰介 乗峯笙汰 張 凌雲
海外の人から見た密集市街地
密集市街地の現状
密集市街地とは
世界各国から来日する留学生にヒアリング調査を実施
減少する密集市街地
長屋住宅
国交省による定義
① 狭小な敷地に高密度で建築物が建て
並ぶ
② 地域内の道路・公園等の公共施設が
不十分
③ 老朽木造建築物が多く存在する
耐久性や可燃性の観点より
解消すべき負の遺産としてとらえている
我々の定義
① ヒューマンスケールの空間
② 古くから続く長屋・併用住宅・木造
住宅が並ぶ地域
③ 昔ながらの雰囲気を有する市街地
古い併用住宅 古い木造住宅
Meriç Kırmızı (トルコ)
「ヒューマンスケールの魅力ある空間」
Claire Leung (マカオ)
「観光地として面白い所」
吴京泽 (中国)
88,
370
70,
420
43,
900
H.15 H.20 H.25
12,
900
9,4
20
H.15
H.20
84,
020
57,
370
「ビルばがり建てるのは安易過ぎる、残すべきでは」
44,
100
康子晨 (中国)
H.15 H.20 H.25
密集市街地を構成する3つ要素は
ここ10年間で約50%減少
「日本の歴史は木造の歴史であり、残すべき」
Ahmed (サウジアラビア)
「私の国では壁に耐火塗料を使って古い街並みを残している」
このままでは密集市街地が
消滅してしまうのでは…?
Stefo(ブルガリア)
「補修して使い続ける方が経済的負担が少ないはず」
研究目的
危険性の回避
大阪市に存在する密集市街地の価値・課題を把握し
同市におけるその有効活用法を考案する
区画整備以外による密集市街地の持つ危険性の回避を模索
ハード面による対策
ソフト面による対策
内壁に耐震防火同時補強技術を用いた
密集市街地の延焼シュミレーションに
関する研究
密集市街地の価値
▼ 整備率による累積焼失棟数の変化
(着火後360分後の焼失数)
3つの主体が感じる密集市街地の価値
住む人
① 安心:互いに顔見知りであり不審者がすぐ分かる
② 安全:通過交通が少なく子供も安全に過ごせる
③ ヒューマンスケール:人々が落ち着ける
働く人
焼失棟数 (棟)
整備率
(%)
非地震時
地震時
0
2000
1200
30
1000
300
50
250
50
70
10
10
補強技術により著しく焼失数を
減少できることが示唆された
① 自分のライフスタイルを表現できるまち
② 成果効率ばかりではない働き方
避難地・避難経路の設定、避難訓練の実施
消火栓使用方法に関する講習会実施
住民への意識改革といった
ソフト面の対策を行なっている
2班の提案
訪れる人
密集市街地を大阪市のシンボルへ
① 都会の喧騒を離れリフレッシュ
② 歴史的街並みを体験できる
③ 生のコミュニケーションを味わえる
①価値の認識とシビックプライドの向上
地域力の向上
B班
尼崎市潮江地区密集市街地(兵庫県)では、
密集市街地ならではの防災まちづくりに
取り組んでいる
• 住民同士の連携
• 木密地区ならではの災害対応力
仮想評価法(CVM)による評価
環境の価値を金額で評価する手法
各年代各性別の平均支払意志額
大阪府における各年代各性別の人口
中崎町の潜在的経済価値
160 億円
京都の歴史的町並みに対して
約2/3の経済価値
新たな観光コンテンツの創出
▼主なCVM研究例
評価対象
ライフスタイルの多様化と質の向上
• 大都市と歴史を同時に感じる名所 都市と昔の街並みが混在する
支払意志額 (円) 集計額 (億円)
釧路湿原の生態系
16414
361
四万十川の水質
14611
6150
霞ヶ浦の水質
5454
589
琵琶湖の水質
3964
6184
横浜市の水源林
1524~3210
7~37
京都の歴史的街並み
1000~4000
200~1800
都市ブランドイメージ向上
• メディアへの露出
②大阪市のシンボル化
観光関連産業の拡大
• 大阪観光における一つの候補地
大阪まちづくりの推進
NPO等の活動活性化と
連携促進
• NPO間の連携
• 地域やNPO、企業の連携
CSR活動の増大
③経済活性
経済活動の拡大
• 観光客の増加
• 密集市街地ブランドを活用した新たな産業
以上のような、密集市街地を大阪における1つのシンボルとして
取り上げた場合のまちづくりによる効果のモデルを考案
大阪市への提案
密集市街地を地域資源とした
まちづくりを大阪市へ提案
●それでも市は密集市街地の整備を続けます。
●しかし、密集市街地を地域資源とする視点は
新しく、可能性としてアリです!
●密集市街地というネーミングを変えてみては?
まとめ
1. 都市における密集市街地の有用性を研究
2. 密集市街地は近年、減少傾向にあることを把握
3. 失われつつ密集市街地の価値について、中崎町を選択し調査
【椎名辰之氏】
●大阪市都市整備局
住環境整備課長
●大阪市内の密集住宅
市街地の住環境整備
を担当
4. 密集市街地には価値が存在し、日本独自の雰囲気を持つことを認識
5. 密集市街地を1つの資源とみなすまちづくりを大阪市に提案
6.「密集市街地を整備対象」とみなす大阪市に「資源」という捉え方を提供
7. 密集市街地を活かしたまちづくりの具体案創出が今後の課題