1999年2月発行 No.25 筑波学園病院薬剤部 くすりばこ編集委員会 美白のメカニズム 美白化粧品とは、メラニンの生成を抑えることによって、シミ・そ ばかすを防ぐ基礎化粧品のことです。シミのもとであるメラニンは 表皮の一番下にある基底層のなかのメラニン色素生成細胞メラノサ イトで作られます。メラノサイトのなかでアミノ酸の一種であるチ ロシンが、チロシナーゼと言う酵素によって酸化されメラニンにな ります。生成されたメラニンは、表皮の新陳代謝とともに垢となって 排泄されますが、多量のメラニンが生成されて新陳代謝が遅くなる と表皮内にとどこおりシミとなります。現在の美白化粧品は、ほと んどがチロシナーゼの働きを抑えてメラニン色素をできにくくする 「エンドセリン」のはたらき タイプです。コウジ酸やコケモモに含まれるアルブチン、もみの木 のルシール等がそれにあたります。では、なぜメラニンは生成され おまけ 朝日新聞より掲載 しわを防ぐには 30 代前後にできる細かなしわの予防 るのでしょう。紫外線を浴びると皮膚の表皮細胞よりエンドセリン が大切で、その一つは、紫外線をいかにシャットアウ という血管収縮性のペプチドが出てメラニンを作るようメラノサイ トするかということです。深いしわは必ずしも一挙に出来るという トに働きかけることがわかっています。エンドセリン以外にもメラ わけではなく、30 代前後から細かな凹凸の数が増えてきて、それが ノサイトにメラニンを作るよう働きかける物質はあるのですが、ま だんだん集約されていって深いしわになるという経過をたどります。 だはっきりと解明されていません。このエンドセリン発見のように、 外での作業で紫外線を浴びる人のほうが 30 代前後で出来る細かな 何がきっかけでメラニンが作られるのかがもっとわかれば<日差し 凹凸のでき方も顕著になり、より高齢になったときに深いしわが発 を浴びてもシミを残さない>美白化粧品の登場につながるに違いあ 生しやすい傾向があるそうです。 りません。 花粉前線北上中!? 今年も花粉症のシーズンが近づいてきました。 “えっ!?まだ早 いんじゃないの?”と言う方もいらっしゃるでしょうが、1月下旬 ように、局所としては合目的に働いています。しかし、これらの症 状は本人にとっては極めて苦痛です。 から2月上旬にはもう準備が必要です。花粉症を発症させる抗原花 大半の患者は花粉シーズンに入ってから、それも鼻や眼の症状が 粉は 50 種余り報告されており、春のスギ・ヒノキ科、初夏のイネ科、 ひどくなってから“なんとかして欲しい”と外来に飛び込んで来ま 秋のキク科が3大花粉抗原とされています。現在国民の約 30%はス すが、患者もベテランになると症状が発現する前に薬を用意してお ギ花粉に感作されており、約 10 人に1人が実際にスギ花粉症を発症 くようです。花粉症に対しては、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤 していると言われています。花粉症の増加は、直接的には 1960 年頃 が有効ですが、季節前投与として花粉が飛散を始める前に抗アレル のスギ造林面積の拡大によるスギ花粉の増加ですが、寄生虫の減少 ギー剤をスタートさせるのが効果的です。抗アレルギー剤の効果発 とも関係があると言われています。IgE 抗体は、元来寄生虫に対す 現までには約2週間かかるため、花粉の飛散1∼2週間前から抗ア る抗体でした。しかし近年の環境衛生の改善により寄生虫が激減し レルギー剤を服用します。季節前投与を行うと、花粉量が少量から たため、本来は抗原性の低かったダニや花粉などに対して抗体を産 中等量のときは、季節中の全期間を通じて自覚症状の軽減傾向を認 生するようになったと言うのです。花粉症はくしゃみ、鼻汁、鼻閉、 めているそうです。花粉症は致死 眼の痒み、咽頭の痒み、咳、頭重、倦怠感、不眠、身体のほてり、 的な疾患ではありませんが、1度 顔のほてり、いらいら感など多彩な症状を呈し、ひどくなると死に 発症すると生涯の付き合いとなる たくなるほどつらいという人もいるようです。花粉症の3大症状は ことが多いものです。毎年花粉症 “くしゃみ・鼻汁・鼻閉”ですが、 “くしゃみ”は鼻内に侵入してき に悩まされている方は医師に相談 た敵(抗原:花粉等)を空気の圧力で追い出し、 “鼻汁”は大量の水 のうえ抗アレルギー剤の季節前投 で洗い流し、 “鼻閉”は入口を閉鎖して侵入を防ぐという 与を試してみてはいかがですか?
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