鼻の手術について - NTT東日本

2016年2月 健康セミナー
鼻の手術
NTT東日本札幌病院耳鼻咽喉科
劉 澤周
鼻の構造
正常な鼻のCT
鼻のはたらき
呼吸の経路
温度、湿度をコントロール
異物を排除
においを感じる
患者さんの訴え
鼻が詰まる
鼻水(水っぱなや青っぱながでる)
くしゃみがでる
においがわからない
頭や顔が痛い、重い感じがある
症状を起こす疾患
慢性副鼻腔炎
アレルギー性鼻炎,肥厚性鼻炎
鼻中隔彎曲症
慢性副鼻腔炎
いわゆる蓄膿症
鼻腔の周りの副鼻腔の炎症
膿のような色のついた鼻汁がでる
ときに鼻茸(ポリープ)を合併し、鼻づまりの
原因となる
慢性副鼻腔炎の鼻内
膿のような鼻汁
鼻茸(ポリープ)
慢性副鼻腔炎のCT画像
アレルギー性鼻炎
家の中のダニ、花粉などが原因となり、鼻炎
症状を起こす
くしゃみ、鼻汁、鼻づまりが3大症状
鼻づまりは鼻汁が多く出ること以外に粘膜
(主として下鼻甲介)の腫れが原因となる
風邪の炎症やアレルギーの炎症が長引いて
下鼻甲介粘膜の腫れが慢性的に残ったもの
を慢性肥厚性鼻炎という 市販の点鼻薬の乱
用による点鼻薬性鼻炎もこれにあたる
アレルギー性鼻炎の鼻内
(粘膜腫脹、水のような鼻汁)
鼻中隔彎曲症
鼻の中を左右に分けるしきりである鼻中隔が
曲がっている状態で、著しいと鼻づまりの原
因となる
発育過程で鼻中隔を構成している骨や軟骨
の成長スピードが違うため、また、頭の重み
でも曲がるとされている
外傷によっておこることもある
アレルギー性鼻炎+鼻中隔彎曲症のCT画像
まずは手術によらない治療
慢性副鼻腔炎に対しては粘液溶解剤(去痰
剤)、マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシ
ン、エリスロマイシンなど)の少量長期投与
アレルギー性鼻炎に対しては抗アレルギー薬
の内服、ステロイド点鼻薬の使用
慢性肥厚性鼻炎の治療はアレルギー性鼻炎
の治療に準じることが多いが、市販の点鼻薬
の連用は止めることが重要
鼻中隔彎曲症については薬物による治療適
応はない
手術を考えるのはどんな時?
慢性副鼻腔炎
保存的治療が無効で
1 膿のような鼻汁が止まらないとき
2 鼻茸ができていて鼻づまりが強いとき
3 頭痛、顔面の痛みがよくならないとき
4 においがわからない原因が副鼻腔炎だと考
えられるとき
アレルギー性鼻炎(慢性肥厚性鼻炎)の場合
通常は保存的治療が主体だが
1 粘膜腫脹がもとにもどらず、鼻づまりが強い
とき
2 くしゃみ、鼻汁が著しく多いとき
鼻中隔彎曲症
治療は基本的には手術のみ
完全に鼻中隔がまっすぐな場合はまずないの
で、彎曲の程度がひどい場合に手術を考える。
どんな手術?
慢性副鼻腔炎に対する手術
かつては歯肉部を切開、顔面骨に穴をあけて
上顎洞に入り、病的粘膜をすべて除去すること
が原則であった。
昔の手術の問題点
術後の痛み、頬部の腫れ
頬部のしびれ感が残ることがある
粘膜を取り去ってしまうため、治りが自然では
ない
手術後長期間を経て、術後性上顎嚢胞という
頬部に液体のたまる疾患を発症することがあ
る
現在は内視鏡下副鼻腔手術が主流
鼻の中から内視鏡を挿入し、鼻腔と各副鼻腔
の交通路をつけ、粘膜は病的なもののみを切
除する手術
鼻と交通をつけることにより、副鼻腔の機能
は元に戻り、自然な治り方が期待できる
手術自体は簡単なわけではなく、それなりの
技術が必要
術後の治療が重要
鼻内の形は術後徐々に変わっていくため手
直しの手術が必要な場合もある
入院期間はおよそ1週間から10日程度(当
院)
術後の鼻の清掃、鼻洗浄、薬剤投与により粘
膜を正常状態にしていくことが大事
手術しても短期間で容易に再発する難治性
の副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)が問題と
なっている
アレルギー性鼻炎に対する手術
下鼻甲介粘膜焼灼術
アレルギー性鼻炎で特に鼻づまりがつよいもの
に下鼻甲介粘膜をレーザーなどで焼く手術を行
う
外来手術なので入院不要
くしゃみ・鼻汁にもある程度有効である
当院ではアルゴンプラズマを使用
非接触で操作ができる
一度凝固層が形成されると電気抵抗が増加
し、それ以上深部への凝固が進みにくく、安
全に焼灼できる
レーザーなどに比べ、発煙が非常に少ない
操作性がよい
などの特徴を有する
問題点
長期的効果は得られるが、根本的ではない
(再発する)2年程度か(諸家により異なる)
鼻中隔弯曲が著しいときは本手術だけでは
鼻閉が改善しない
術後鼻汁の増多、痂皮(かさぶた)の付着が
みられるため、効果が出るまでは1ヶ月程度
かかる
焼灼しすぎると正常の鼻粘膜機能を失う可能
性がある
重症例(鼻づまり)には
粘膜下下鼻甲介切除術
粘膜の腫脹が著しい場合は粘膜の下の下鼻甲
介骨を切除することで、下鼻甲介の縮小をはか
ることができる
重症例(くしゃみ・鼻汁)には
後鼻神経切断術
後鼻神経は鼻の感覚、鼻汁の分泌をつかさど
る。
この神経を切断することでくしゃみ、鼻汁を抑え
ることができる。
難治性のくしゃみ、鼻汁例に対して後鼻神経切
断術を行うことがある。
有効率90%程度で2年を超えても有効とされて
いる。
効果は高いがアレルギー素因が治る訳では
ない
本来鼻に備わっている防御反応を落とす手
術であることに留意する必要はある
鼻中隔矯正術
鼻中隔彎曲症に対して行う手術。鼻中隔粘膜
を切開し、中の曲がった骨を切り取る
実際の場ではこれら手術は単独でなく、組み
合わせて行うことも多い
長引く鼻の症状にお困りの際は耳鼻咽喉科
にご相談ください