四角く見えますか?

四角く見えますか?
この展示のテーマは,四角く見える(フラクタル)立体です。
人間・環境学研究科 数理科学講座/総合人間学部 認知情報学系
准教授 立木秀樹
http://www.i.h.kyoto-u.ac.jp/~tsuiki
フラクタルユニバーシティ KYOTO
正四面体を4つの頂点を中心に1/2に縮小して
合わせると,真ん中に穴のあいた正四面体になります。
同じことをもう一度繰り返すと,16 個の正四面体から
なる立体,さらに繰り返すと,この 64 個の正四面体
からなる立体が出来ます。
正四面体は,辺の方向から見ると正方形に見えます。
それは,こうやってつくった穴あき四面体でも同じで
す(なぜかは裏面参照)。そのことを利用して,それ
ぞれのピースに写真の断片を貼って,四角く見える瞬
間に写真が見える立体を作りました。
これは 64 個ですが,さらに繰り返して 256 個,1024
個にしても正方形に見えます。無限に繰り返してでき
る立体(シェルピンスキー四面体)も,辺の方向から
射影すると正方形になります。想像できますか?
立体図形の形は見る方向によって変わります。それは
当たり前ですが,この立体の姿の変化には驚かされます。
正方形になったり,雪の結晶になったり,線状(デンド
ライト)になったり。しかも,正方形に見える方向が 12
個もあります。立方体と同じように 6 方向から正方形に
見える立体はたくさん考えられますが,12 方向から正方
形に見える立体は非常に限られます。なぜ正方形に見え
るのでしょう?どうやったらこんな立体を見つけられ
るのでしょう?個々のピースはどんな形ですか?
この立体を囲む透明アクリルの立体は正方形に見え
る方向を示すためのものです。12 個正方形の面をもって
おり,そこからみると正方形に見えます。正方形に見え
る方向は,どんな配置になってますか?
この立体は,正方形に見える時に,スウドクパズルと
同じ9x9の正方形のグリッド状になります。この立体
は 81 個のピースに 9 色が塗られていますが,1から9
という数字の代りにこの 9 色を用いて,12 方向どちらか
ら見てもスウドクの解,すなわち,どの行,列,3x3 ブ
ロックにも 9 色すべて現れるようにしています。普通の
スウドクの解が 1017 通り以上あるのに対し,この立体ス
ウドクの解は 30 通りしかありません。
重六角錘フラクタルのスウドク色づけ
箱に入れてみよう
展示台の上に置いてある立体はすべて,透明な立方体の箱
に入ります。入れてみましょう。入ったら,立方体の 6 個の
面から見てください。複雑な形をしていたはずの立体が四角
く見えるはずです。こうすると,これらの立体は,直交する 3
方向から見て正方形に見えることが分かります。箱に入れず
に正方形に見える方向を見つけられますか?
同じ様に,直交する 3 方向から見て正方形に見える,凸な
(つまり,へこみがない)立体の中で,極小な(それより小
さくしたらこの凸でなくなるか正方形に見えなくなる)もの
は,立方体の辺上の頂点は辺の中点にとることにすれば,展
示ケースの下段にある 15 種類に限られます(1 つは鏡像あり)。
なぜか,考えてみましょう。
展示台の上にある立体のなかで,写真の4つに注目して
ください。一番左の正四面体は,辺の方向から見ると正方
四角く見えるフラクタル
形に見えますが,1/2の大きさにしたもの4つをこのよ
うに配置しても,また正方形に見えます。すると,この4
つそれぞれをまた1/2の大きさのもの4つに置き換え
ても全体が正方形に見えますよね。どれだけ繰り返しても
正方形に見えます。これを無限に繰り返した立体は,4つ
の部分が全体と同じ形になります。それを,自己相似とか
フラクタルとかいいます。次の重六角錘は,12 方向から
見て正方形に見えますが,1/3の大きさのもの 9 個をこ
のように配置すると,また正方形に見えます。あとの2つ
も考えてみましょう。これらの立体の,この置き換えでで
きるフラクタルも,同じように正方形の射影をもちます。
狼と少年
これは,三角形の紙が 2 枚立方体の中に入っただけ
ですが,これも立方体の面の方向から見ると,正方形
に見えます。見る方向によって,少年が狼を狙ってい
たり,狼が少年に襲いかかろうとしていたりします。
2 枚の絵をあわせると,エッシャの絵のような,2 種
類の三角形の繰り返し模様になります。
展示台には,透明アクリルで作った作品が入ってい
ます。その横には,立方体の代りにひし形六面体で作
ったものがあります。
絵:井原有美子
数学は美しいと数学者は口にします。それなら,数学的に定義された図形も美しくて,驚きに満ち
ているはずです。これからも,そういう驚きを見つけて人々に伝えていければと思っています。
参考文献:(ホームページに,より詳しい解説があります。
)
フラクタルマジック(1),(2),
(3) 数学セミナー2006 年 4,5,10 月号
Hideki Tsuiki "Does it look square? in Proceedings Bridges Conference, 277—287, 2007.