医食同源を見直す

阿佐ヶ谷教会
シルバー会
ぴんぴんころりんの食生活
H25 年 6 月 30 日
-- 医食同源を見直す --
「見よ、わたしはあなたたちのために、天からパンを降らせる。民は出て行って、毎日必要な分だけ
集める。」 出エジプト記 16-4
・医食同源とは病気を治す薬と食べ物とは本来根源を同じくするものである、ということ。すなわち
食事に注意をすることが病気を予防する最善の策である、ということである。
●『健康 21』による「国民健康・栄養調査」の実態
・最近、日本人の健康志向への意識向上とは裏腹に、肥満、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病患者
数の増加と、誤ったダイエット法や不必要と思われるサプリメント摂取など、混迷状態ともいえる食
生活の変化が目立つ。
・近年、厚生労働省は『健康 21』というプロジェクトを提案し、「国民健康・栄養調査」というもの
を実施している。この調査実施の目的は「健康寿命を延ばすこと」と「健康格差をなくすこと」を目
標にあげ、この目標を達成するために、「生活習慣病の予防のための食生活、運動、保健衛生、社会
環境の改善」などを挙げている。
・この調査の実態は以下のとおりである。
1.肥満とやせ
いわゆる成人男性(20-60 歳)ではこの 15 年間に肥満は 30%の増加、特に 40 歳代(中年)のメタボ
リック症候群が増加。一方、中年女性(40-60 歳代)の肥満は減少傾向にある。
2.高血圧症
高血圧症患者の年次変化を見てみると、男性の高血圧症患者数はほぼ横ばいで、女性ではやや減少し
ている。
3.脂質異常症(高脂血症)
コレステロールに関しては女性が圧倒的に高い値だが、年次推移としては男女ともに横ばいである。
4.糖尿病
糖尿病は生活習慣病の中で最も増加の心配があった疾患で、1955 年から 2007 年までの 52 年間で 35%
の増加が見られたが、この増加傾向は予想よりも鈍化している。
5.慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病による患者総数は年々増加傾向にあり、2010 年では 1300 万人を超え、更に人工透析を受
けている患者は 300 万人を超えている。
透析導入に至った原因疾患は糖尿病性腎症の増加が際立っている。さらに高血圧症などによる腎動脈
硬化症(いわゆる腎硬化症)も増加している。
●塩分
・減塩促進運動の推移
減塩の目標値は健康人では 10g/日未満、疾病保有者では 6g/日以下とされている。
塩分の取りすぎによる健康への影響としては
①高血圧症を引き起こすこと。高血圧症は②動脈硬化を促進する。動脈硬化症は③心臓病(心筋梗塞
や狭心症など)、④脳卒中(脳出血や脳梗塞)、⑤腎臓病、⑥閉塞性動脈硬化症などの原因となる。
・塩分摂取量の年次推移
平均1日塩分摂取量は目標値(10g 未満)にわずかに届かなかったが、この 10 年余の期間の啓蒙運動
のおかげでかなりの減量に成功している。
・食塩摂取量の男女別平均値
年齢別の食塩摂取量は男女ともに 60 歳代に多いことが分かった。一方で男女とも 20-30 歳代の人は平
均より低めであった。これは食材の嗜好の違いによるもの、また親世代の減塩志向が子どもたちに良
い影響を与えていると考えられる。母親の塩味の濃さが孫の世代にまで伝わってしまうというのは大
げさではないかもしれない。
・食塩の摂取源
和食は醤油文化ともいわれるだけあって、食塩の摂取源としては醤油が 20%と圧倒的に多い。次いで
漬け物、みそ汁がそれぞれ 10%で、この三者で 1/3 を占めている。
◎食品に含まれる食塩量を知る方法
公式としてはナトリウム量(mg)×0.254=食塩量(mg)
簡易法:ナトリウム量(mg)×10÷4≒食塩量(mg)
・減塩の工夫:まず、醤油、低塩醤油、減塩醤油を使用する。微量噴霧器を利用する。
漬け物:摂取量を減らす。塩抜きする。
-1-
みそ汁:1日一杯以上飲まない、味噌の量を出来るだけ減らし、出汁をたっぷり効かせる、汁をこれ
までの半分以下にする、具沢山にする。
香辛料を用いることで塩味を抑える。
カリウムを多く含む食品(野菜、海草、果物)を摂取する:カリウムはナトリウムを血管外に追い出
し、降圧効果がある。
●脂質
・動脈硬化の成り立ち
・中性脂肪はエネルギー源として肝臓に取り込まれ、そこから必要に応じてエネルギー源として代謝
され、過剰な分は脂肪組織に置き換えられて予備の熱源として体内に蓄えられる。一方、コレステロ
ールは組織の細胞膜やステロイドホルモンの材料として利用されるが、過剰な分は血管内膜下に取り
込まれてアテローマという脂肪の塊を形成する。
・動脈硬化の発生の第1の原因は高血圧症:高血圧による血管内膜の損傷部からコレステロールが 内
膜内に蓄積され、コレステロールの塊(アテローマ)を形成する。さらに損傷部の傷口を塞ぐために
血小板という血球が集まってきて、これも塊を作りる(白色血栓)。
・こうしてアテローマと血小板血栓により血管腔が狭くなり、血流が障害されたり、血管が閉塞した
りする。これが心臓の血管(冠動脈)に起これば狭心症や心筋梗塞となり、脳の血管に起これば脳血
栓症や脳梗塞を引き起こしてしまう。
・脂質異常症および肥満者(BMI>25)の男女別割合
油脂の過剰な摂取は高脂血症という病態を引き起こす。コレステロールは特に中高年の女性に多く、
この年代の約4人に1人の割合で基準値(LDL コレステロール(いわゆる悪玉)=149mg)を超えて
いるのではないか、と思われる。これは、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)分泌減少による。
さらに中性脂肪が増えると体内の脂肪沈着が増加し、肥満になる。
・食事でとる油脂の種類:
・油脂は構造上の違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。
飽和脂肪酸は動物性脂肪(肉の脂身、バター、乳脂肪など)であれ、植物性油脂(パーム油など)で
あれ、一般に動脈硬化を促進するといわれている。
一方、一般的に体によいとされる不飽和脂肪酸の中にも動脈硬化を促進するものがある。このために
あまり偏った種類の油脂を長期大量に摂取しないことが勧められる。
・ただし植物性ではしそ油、エゴマ油、大豆油など、また動物性では青魚に多く含まれるエコサペン
ト酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は動脈硬化を抑制してくれるものとして積極的な摂取が勧
められている。
・トランス脂肪酸:
・マーガリンやショートニングは常温では液状の油脂であるが、パンやクッキーなどの製造には固形
化したものを使用する必要がある。液状から固形化する製造過程においてトランス型脂肪酸に変化す
ることが知られている。このトランス脂肪酸を長期間、過剰に摂取すると、動脈硬化が進行し、心筋
梗塞・脳梗塞のリスクが高まるといわれている。
・脂質異常症者の食事療法
・高コレステロール含有食品(鶏卵、魚卵、魚介類や家畜の内臓に多い)の摂りすぎに注意する。 ・
食事療法として、
①いろいろな種類の油脂を,少量ずつ摂取する。
②魚油は動脈硬化抑制に有効。ただし内臓は悪玉コレステロールの含有がが多いので注意が必要。
③いろいろな食品から「抗酸化物質」を摂取する;緑黄色野菜(ビタミン C,リコピン、カロチン)、果物(ブルー
ベリー;ルテイン)、ごま(セサミン)、大豆製品(イソフラボン)、緑茶(カテキン)など
●嚥下障害と誤嚥性肺炎
・2011 年から日本人の肺炎による死亡率は脳卒中を抜いて第3位に上昇した。
・高齢者の食生活の問題点
・加齢的な要因(噛む力の低下や唾液分泌量低下、義歯の不具合)と脳卒中の後遺症(嚥下障害、咳
反射低下)が嚥下困難による誤嚥性肺炎の原因として挙げられる。
・咀嚼された食べ物が喉(のど)の奥に到達したあと、わずか 0.5 秒で食道に入り込まれるが、この
タイミングのズレで食べ物が気管に入り込む(誤嚥)と誤嚥性肺炎を来す。
さらに加齢のため、唾液などの分泌物が気管内に流れ込んでも咳反射の低下のために分泌物を喀出で
きずに誤嚥してしまう。これを不顕性誤嚥と呼ぶが、これも誤嚥性肺炎の大きな原因になる。
・嚥下障害を来した高齢者の合併症:反復する誤嚥性肺炎、低栄養、長期臥床、床ずれ。
・誤嚥性肺炎の発症を予防するための工夫:口腔ケア、歯茎マッサージ、香辛料の積極的な摂取、
とろみ食などの摂取、そして少量をゆっくり、よく噛んで食べる。
・こうした工夫、努力により食事を口から摂ることのできる楽しみをいつまでも維持して行くことが
出来る。
-2-