「日本版インダストリー4.0」が始動 課題と展望が明らかに - Tech-On!

生産革新、トレンド
「日本版インダストリー4.0」が始動
課題と展望が明らかに
ドイツの「Industry 4.0(インダストリー4.0)
」
いる」
(三菱電機の山本氏)ものの、ハードウエ
をはじめ、世界の各地でITを活用した工場の
アとソフトウエアの進化で、より大量かつ詳細
スマート化に向けた動きが加速する中、
日本で
なデータを扱えるようになった。今後は、FAと
も同様の取り組みが始まりつつある。2015年7
ITの連携を深める必要があると同氏は語る。
月に開催されたスマート工場に関するイベント
システムの連携によって、個別の顧客の要望
「FACTORY 2015 Summer」では、
各界のキー
に合わせたカスタマイズ品を大量生産品と同
パーソンによる議論が交わされた 。
等の効率で生産する「マスカスタマイゼーショ
そのうち、行政と産業界の代表者が登壇し
ン」などが本格化すれば 、部品調達や物流と
たパネルディスカッションでは、日本が現在抱
いったサプライチェーンにも影響が出てくる。
*
*
主催は日経ものづくりと日経
テクノロジーオンライン。
えている課題と今後の展望が明らかになった
「需要や在庫量などをビッグデータによって分
(図1)
。登壇者は、経済産業省製造産業局もの
析・予測するような技術も重要になる」
(富士
づくり政策審議室長の西垣淳子氏、三菱電機
役員理事FAシステム事業本部副事業本部長
の山本雅之氏、富士通産業・流通営業グルー
通の熊谷氏)
。
インテグレーターがいない
ププリンシパル・コンサルタントの熊谷博之氏
しかし、このシステムをつなぐという部分が
である。
日本の産業界は遅れていると経済産業省の西
課題については、FAとITで個別に動いて
垣氏は指摘する。例えば、生産工程をサイバー
いたシステムを「つなぐ」ことだという。
「IT自
空間上で作り込み、
リアル空間で再現するシス
体はずっと前からものづくりの現場に入って
テムが必要になるが、
そうしたシステムの開発・
図1 パネルディスカッ
ションの様子
左から、経 済 産 業省の西
垣 淳子氏、三菱電機の山
本雅之氏、富士通の熊谷
博之氏。
26 August 2015 NIKKEI MONOZUKURI
SID=ca2276789015732835b6f5729c492796097b387865575183 無断複製・無断転載禁止 日経BP社
REPORT
モデル”構築を目指した民間団体「Industrial
Value Chain Initiative(IVI)
」
(理事長は法政
大学デザイン工学部教授の西岡靖之氏)が立
ち上がった。こうした団体がそれぞれの強み
を生かし、
スマート工場の実現に向けた課題を
解決していくことで、世界と戦えるようになる
と西垣氏は期待を寄せる。
業績に反映させなければ
各企業の取り組みも進んでいる。前出のイ
ベントで基調講演を行ったDMG森精機取締
役社長の森雅彦氏は、
「技術の話が注目され
がちだが、最終的には業績に反映させなけれ
図2 DMG森精機取締役社長の森雅彦氏
スマート工場の成果を業績に反映させることの重要性
を語った。
ば世間から評価されない」とスマート化への意
気込みを語る(図2)
。同社では、
「自社で実践」
「顧客に価値を提供」という2つの観点から取
利用については日本よりも欧米が進んでいる
り組んでいるという。
という。さらに、
「基幹システムと現場のシステ
そのうち「自社で実践」については、社内に
ムをつなぐインテグレーターが不足しており、
ミニプラントを構築し、その中でさまざまな活
特に中小企業で深刻な問題になる」
(同氏)
。
動をしている。例えば、スマート工場ではERP
裏を返せば 、多くの企業にとってビジネス
などの基幹情報システムとPLMなどの設計・
チャンスがたくさん転がっている状況でもあ
製造情報システムの連携が不可欠となる。だ
る。システムの連携を進める上では、役割分担
が、現状ではこれらのシステムは十分に連携し
を決めることが非常に難しくなると富士通の
ていない。そこで同社は、
「CELOS(セロス)
」
熊谷氏は語る。ハードやソフトの進化によって、
と呼ぶオペレーションシステム(OS)を介して、
例えば「どのデータをどこで処理する」という
基幹情報システムと設計・製造情報システム
ことの妥当な基準そのものが揺らぎつつある
を高度に連携させようとしている。
からだ。
「境目がなくなることで、
業界全体が一
「顧客に価値を提供」については、ITの活用
種の“戦国時代”になるのではないか」
(同氏)
。
による製品の強化を進めている。特に力を注
今後の展望について、経済産業省の西垣氏
いでいる分野の1つがセンシングだ。具体的に
はさまざまな団体が連携することの重要性を
は、MNNS(Mori Neural Network System)
指摘した。2015年5月に政府主導の「ロボット
として工作機械のさまざまなデータを計測する
革命イニシアティブ協議会」が設立されたほ
ことで、そこから得られた知見を顧客にフィー
か、同年6月にはスマート工場の“リファレンス
ドバックしている。
(高野 敦)
August 2015 NIKKEI MONOZUKURI
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