印刷で半導体後工程に革新 10µmピッチのバンプも開発 基板側にバンプを設け、多品種・少量・変量生産を可能に Web版 nkbp.jp/NE1510026 今後、IoT(Internet of Things) て脆化している半導体チップの実装、 クロバンプの形成には凹版の印刷技 機器の増大に伴って課題となる半導 高温に弱い基板への実装、 MEMS(微 術を使う(図1) 。インクには銀ナノペ 体パッケージの多品種・少量・変量生 小電子機械システム)のフリップチッ ーストを採用した。バンプ形成後は、 産に対応できる。そんなチップ実装 プ実装など、現在半導体の後工程で その上に非導電性樹脂を塗布する。 技術を持った企業が現れた。2009年 課題となっている問題を一気に解決 印刷方式のため、 「基板の材料を選 に創業した新潟県妙高市に拠点を置 できる」 (コネクテックジャパン 代表 ばずに配線を形成でき、多品種少量 くコネクテックジャパンだ。現在は、 取締役の平田勝則氏)という。 可能(平田氏)とする。またマイクロ 半導体後工程の受託開発・製造を主 業務としている。 バンプを形成する時間が短縮できる 凹版印刷で実現 上、装置も大幅に簡略化できる。 同社が独自開発した実装技術は MONSTER PACの肝は、チップ チップ側にマイクロバンプを形成 「MONSTER PAC」と呼ぶもの。 「多 と基板を接合するためのマイクロバ する従来の方法では、ウエハーにめ 品種少量生産に加え、low-k化によっ ンプを基板側に用意すること。マイ っき処理を施すことでバンプを作る。 そのためには、フォトレジスト膜の形 印刷済みソフトバンプ ●バンプ印刷 成、めっき処理、フォトレジスト膜の 剥離などが必要だ。装置も大規模に なる。印刷方式であれば、こうした 基板 処理は不要である。 ●非導電性樹脂塗布 非導電性樹脂 MEMSのフリップチップ実装も可 能にした。MEMSではチップ上に溝 などの構造体があるため、チップの チップ ●フリップチップ実装 チップ ソフトバンプ 非導電性樹脂 MONSTER PACであれば、チップ 側への加工が不要になるため、フリ 基板 図 1 基板側にバンプを印刷 基板側にバンプを印刷することで、多様な素材の基板に対応可能。非導電性樹脂はバンプの形 状を維持し、チップと基板の界面を保護する役割を果たす。 (図と写真:コネクテックジャパン) 26 電極にめっき処理できない。しかし、 ップチップ実装が可能という。 低温・低荷重で接合 MONSTER PACでは従来に比べ NIKKEI ELECTRONICS 2015.10 SID=f9b57910d35c6ec9ac81394838b4429641133152580ab746 無断複製・無断転載禁止 日経BP社 レプリカモールド 10µmピッチ 配線上 バンプ 基板 て、チップ実装の作業も簡単である。 マイクロバンプを印刷した基板の上 にチップを置き、170℃、0.12g重/バ 既存技術を使った ベース基板 (樹脂、 セラミックス、 フィルムなど) ンプの過重を与えることで接合でき る。チップ側にマイクロバンプを形 成する従来の方式では、接合荷重と 10µm 配線 して2.4g重/バンプ、260℃までの加 熱が必要だった。2.4g重/バンプは 小さな荷重に見えるが、数千個のマ イクロバンプがある場合、合算する 図 2 10µm 配線にメド 印刷技術とインクペース ト を 改 良 し て、10µm 配 線を描き、130℃で接合で きるようにした。具体的 には、レーザー照射で硬化 するインクを使って凸形 のマスターモールドを製 造。ここから凹形レプリ カモールドを作り、これを 原版にして印刷する。 (図: コネクテックジャパン) フリップチップボンダー 非導電性樹脂塗布装置 バンプ印刷機 と大きな力となる。この力によって、 チップが破損することがあるという。 特にこの問題は最近顕著になって きている。微細化により生じた配線 間の電気容量の影響を減らすため、 配線を支える層間絶縁膜材料に誘電 率の低いlow-k材料を使う傾向があ 1.4m 2.5m 0.8 m るためだ。low-kを実現するために一 た材料を選ばないところが、少量多 般的なのが、材料を多孔質にして誘 品種に向くとする。 電率を空気に近づけるという方法。 内部的に多数の穴が開いた状態なの フリップチップボンダーの試作機 図 3 コネクテックジャパンが描く将来の後工程 長机に置かれた 3 台の機械でパッケージングの工程を完了させることを狙う。 (図と写真:コネ クテックジャパン) 技術の外販も狙う 「2017年には10µmピッチ技術を使っ た製品を量産できるようになる」 (平 田氏)という。 MONSTER PACは現在、コネク で材料強度は弱くなる。MONSTER 同社は現在、10µmピッチのバン テックジャパン内部で利用している PACはこうした問題を考慮しなくて プ・配線技術を開発中で、実用化のめ だけだが、今後は後工程の製造装置 済むことから、ダメージフリーなのだ どを立てた(図2) 。ウエハー側にめっ を広く販売していく計画を立ててい という。 きでバンプを形成する従来方式では、 る。製造装置は、型の製造、バンプの この他、MONSTER PACでは1種 40µmで長い間頭打ちになっていた。 印刷や配線、実装までを含んで長机 類の実装装置でセラミックス、有機 接合時に加える熱で有機材料が大き に収まる程度の大きさにすることを 材料、フィルム材など、さまざまな基 く膨張するためだ。開発中の技術で 狙う (図3) 。これらは家庭用の100V 板材料に対応するという特徴もある。 は、130℃で接合できるため、膨張量 電源で稼働するようにする。平田氏 極端な例では1工程ごとに異なる基板 が少ない。このため、10µmピッチに は「コンビニエンスストア程度の小さ に実装することができる。従来方式 できるという。10µmにピッチ幅を減 な床面積で、半導体のパッケージング の場合、基板材料によって異なる装 らした結果、パッケージの面積を75 工程を受託する企業を日本に多数生 置を用意する必要があった。こうし % 縮 小 することが できるとする。 みだす」という夢を描く。 (中道 理) NIKKEI ELECTRONICS 2015.10 SID=f9b57910d35c6ec9ac81394838b4429641133152580ab746 無断複製・無断転載禁止 日経BP社 27
© Copyright 2024 ExpyDoc