鈴木詩歩

「親の養育態度が青年の心理的自立および友人への依存に
影響しているかについて」
鈴木詩歩
1.目的
本実験では、親(父・母)の養護と干渉といった養育態度が青年の心理的自立および友人
への依存性に影響しているのかについて検討することを目的とした。また、親の養育態度
に対して青年が満足していたか不満だったかによって、青年の心理的自立及び友人への依
存性に影響するのかについても検討した。
2.方法
実験参加者は、158 名(男性 89 名、女性 69 名)であった。
用いた尺度は、子どもからみた両親の養育態度の自覚的評価スケールである PBI 日本語
版(小川, 1991)、これに、子どもからみて両親の養育態度に満足したかどうかの測定項目も
加えたもの、青年の自立の程度を測定する尺度である心理的自立尺度(Psychological
Jiritsu Scale ; PJS)(高坂・戸田, 2006)、依存を測定する対人依存欲求予備尺度(竹澤・小
玉, 2004)であった。
3.結果
①PBI 質問紙の回答結果の養護得点・干渉得点の平均値をもとに、得点が高い・低いに
分け、その組み合わせによって A.B.C.D 4 つのグループに分類して自立得点と依存得点の
違いを比較した。4 グループは、A グループは養護高×干渉高、B グループは養護低×干
渉高、C グループは養護低×干渉高、D グループは養護低×干渉低であった。
その結果、父親及び母親の A.B.C.D 4 グループ間で、自立得点及び依存得点ともに有意
差は認められなかった。
②さらに、養護得点と干渉得点の高い・低いと、この二つの養育態度に対する感じ方得
点の平均値をもとに得点が高い・低いに分け、その組み合わせによって E.F.G.H グループ
と I.J.K.L 8 つのグループに分類して自立得点と依存得点の違いを比較した。E.F.G.H グ
ループは養護得点と感じ方に関するもので、E グループは養護高×感じ方高、F グループ
は養護高×感じ方低、G グループは養護低×感じ方高、H グループは養護低×感じ方低、
I.J.K.L グループは干渉得点と感じ方に関するもので、I グループは干渉高×感じ方高、J
グループは干渉高×感じ方低、K グループは干渉低×感じ方高、L グループは干渉低×感
じ方低であった。
その結果、自立得点について、父親については、E.F.G.H 4 グールプ間で有意差は認め
られなかった。しかし、依存得点については、父親の E.F.G.H 4 グループ間で有意差が認
められた。Tukey の多重比較を行ったところ、E グループと G グループの間に有意な差が
認められ、E グループの方が G グループより、依存得点が高いということが明らかとなっ
た。自立得点及び依存得点について父親の I.J.K.L 4 グループ間の差をみたが、自立得点
及び依存得点ともに有意差は認められなかった。
母親についても、自立得点について、E.F.G.H 4 グールプ間の違いを検討したところ、有
意差が認められた。Tukey の多重比較を行ったところ、E グループと H グループの間、G
グループと H グループの間に有意な主効果が認められ、E グループの方が H グループより
自立得点が高い、また G グループの方が H グループより自立得点が高いということが明ら
かとなった。依存得点についても、母親の E.F.G.H 4 グループ間の違いを検討したが、有意
差は認められなかった。自立得点及び依存得点について母親の I.J.K.L 4 グループ間の差を
みたが、自立得点及び依存得点ともに有意差は認められなかった。
4.考察
①以上の結果から、心理的自立及び友人への依存には、親の養護が高い・低いだけでは
なく、子どもがそれに満足していたか・満足していなかったとの組み合わせが関連すると
いうことが示唆された。母親が子どもをよく養護し、子どもがそのことに満足すること
は、青年が心理的自立を獲得する過程において重要な要素であると考えられる。
②結果では、母親の養護態度が低く、それに満足していた青年の心理的自立は、母親の
養護態度が低く、それに不満だった青年よりも高くなるという結果も得られた。この結果
から、母親の養護態度が低くても、それに満足していれば、不満だった青年よりも心理的
自立は進むと考えられる。
父親の養護態度が高く、それに満足していた青年は、父親の養護態度が低くそれに満足
していた青年よりも友人への依存が高いという結果は、父親によく養護をされた青年は、
友人に依存し、親離れをすすめる準備ができていることを示したものと考えられる。