Hirosaki University Repository for Academic Resources Title Author(s) Citation Issue Date URL Parental bonding and attitudes toward suicide among medical college students in Japan Hashimoto, Kojiro Neuropsychiatric Disease and Treatment , 10, 2014, p.2015‒2020 2015-03-24 http://hdl.handle.net/10129/5588 Rights Text version ETD http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 医共様式1 学位請求論文の内容の要旨 論文提出者氏名 脳神経科学領域精神・神経分子科学 氏名 橋本 浩二郎 (論文題目) Parental bonding and attitud es toward suicide a mong medical college students in Japan. (医学生における親子の結びつきと自殺への態度との関連について ) 【 背 景 】自 殺 に よ る 死 者 は 、世 界 で は 10 万 人 中 16 人 と い わ れ 、死 因 と し て 増 加 し つ つ あ る 。 生 産 年 齢 人 口 で あ る 15~ 44 歳 に 集 中 し て い る 。 わ が 国 で は 、 平 成 25 年 の 厚 生 労 働 省 の 報 告 で は 、 自 殺 者 は 27,283 人 で 、 自 殺 死 亡 率 は 10 万 人 あ た り 21.4 人 で 、20~ 40 歳 の 死 因 の 一 位 は 自 殺 と な っ て い る 。こ の よ う に 、自 殺 は 生 産 年 齢 人 口 に お け る 死 亡 原 因 と し て 高 い 順 位 を 占 め 、大 き な 公 衆 衛生上の問題になっている。ここで、医療従事者の自殺に対する否定的態度、 た と え ば 「 怒 り 」 や 、「 自 殺 は 個 人 の 権 利 で あ る 」 と い う 信 念 は 、 治 療 に 不 適 切 で あ る 。医 療 従 事 者 の “ 自 殺 へ の 態 度 “ は 、自 殺 企 図 者 に 対 す る 治 療 上 の 関 わ り 方 と 関 連 す る 、と 報 告 さ れ て い る 。こ の “ 態 度 ” に 影 響 を 与 え る 因 子 の 同 定 は 、適 切 な 自 殺 企 図 後 の 医 療 介 入 を 構 築 す る た め に 有 用 で あ る と 考 え ら れ て いる。 近 年 、愛 着 理 論 の 普 及 後 、幼 少 期 に お け る 親 子 の 結 び つ き が 、う つ 病 や 不 安 障 害 、適 応 障 害 な ど の 精 神 疾 患 発 症 の 素 因 と な る 、こ と が 報 告 さ れ て い る 。親 子 の 結 び つ き と 、発 病 前 の 性 格 特 性 は 、成 人 後 の ス ト レ ス へ の 対 処 や メ ン タ ル ヘ ル ス に 影 響 を 与 え て い て 、様 々 な ス ト レ ス に 適 応 す る 能 力 を 身 に つ け る 上 で 重要な役割を果たしていると考えられている。 医 療 従 事 者 に お け る 、親 子 の 結 び つ き と 精 神 状 態 と の 関 連 は 、こ れ ま で に い く つ か の 報 告 が あ る が 、親 子 の 結 び つ き と 自 殺 へ の 態 度 と の 関 連 を 報 告 し た 研 究 は な い 。親 子 の 結 び つ き の 潜 在 的 な パ タ ー ン は 、自 殺 へ の 態 度 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ て い る 。本 研 究 で は 、医 学 生 に お け る 、親 子 の 結 び つ き が 自 殺に対する態度と関連があるかどうか、を検討した。 【 対 処・方 法 】対 象 は 、書 面 に て 同 意 の 得 ら れ た 大 学 医 学 部 の 5 年 生 226 名( 男 116 名 、 女 44 名 ; 平 均 年 齢 25.2±4.0 歳 ) に 対 し て 本 研 究 の 説 明 を 行 い 、 対 象 者 の う ち 全 項 目 へ 回 答 を 行 っ た 160 名 (70.8%)を 解 析 対 象 と し た 。評 価 尺 度 に は 、親 子 の 結 び つ き に つ い て は Parental Bonding Instrument (PBI)を 、“ 自 殺 へ の 態 度 ” へ は Attitudes Toward Suicide questionnaire (ATTS) を 用 い て 測 定 を 実 施 し た 。PBI に つ い て は 、父 と 母 双 方 の 養 育 態 度 に つ い て 養 護 因 子 と 過 保 護 因 子 の 下 位 尺 度 を 用 い 、ATTS に つ い て も Kodaka ら の 6 因 子 モ デ ル に 基 づ い た 下 位 項 目 (① 自 殺 へ の 容 認( 自 殺 へ の 権 利 を も っ て い る と 思 う こ と ), ② 自 殺 の 一 般 性 ( 自 殺 を 一 般 的 な も の と 捉 え る こ と )、 ③ 自 殺 表 明 へ の 解 釈 ( 単 な る 脅 し と し て の 自 殺 表 現 ) ,④ 自 殺 の 非 正 当 性 ( 不 当 な 行 動 ) , ⑤ 予 防 ・ 援 助 可 能 性 , ⑥ 衝 動 性 )を 使 用 し て の 検 討 を 行 っ た 。 統 計 解 析 に お い て は 、 ATTS の 各 下 位 尺 度 を 従 属 変 数 と し て 、年 齢 、性 別 、父 母 双 方 の 養 護 因 子 と 過 保 護 因 子 を 独 立 変 数 と し て 重 回 帰 分 析 を 実 施 し 、 p<0.05 を 有 意 水 準 と 設 定 し た 。 な お、本研究は弘前大学医学部倫理委員会の承認を得て行っている。 【 結 果 】ATTS で は 、回 答 者 の う ち 、88.8%が 誰 も が 自 殺 す る 可 能 性 が あ る と 回 答 し 、86.3%が 自 殺 は 防 ぐ こ と が で き る 、と 回 答 し た 。Pearson の 相 関 分 析 で 、 PBI score と ATTS score と の 相 関 を 示 し た と こ ろ 、 以 下 の よ う で あ っ た 。 ① 父親からの養護は、父親からの保護、母からの養護、母からの保護、自殺 への容認、に相関があった。②父親からの保護は、母からの養護、母から の保護、に相関があった。③母からの養護は、母からの保護、自殺への容 認、そして自殺の一般性、に相関があった。④母からの保護は、自殺への 容認、と相関があった。⑤自殺への容認は、自殺の一般性、自殺の非正当 性、予防・援助可能性、と相関があった。⑥自殺の非正当性は、衝動性と 相関があった。 PBIscore と ATTS 下 位 項 目 と の 多 重 回 帰 分 析 で は 、母 か ら の 養 護 と 、自 殺 へ の 容 認 ( 権 利 が あ る と 思 う こ と ) で は 、 p= 0.058 で あ り 、 有 意 な 関 連 性 は ん か っ た 。 母 か ら の 養 護 は 、 自 殺 の 一 般 性 ( 一 般 的 な も の と 捉 え る こ と )、 と の 相 関 を 示 し た 。ほ か は 、親 子 の 結 び つ き と 、自 殺 へ の 態 度 と の 、有 意 な 関 連 性 はなかった。 【 考 察 】 本 研 究 で は 、 ATTS 結 果 よ り 回 答 者 の 8 割 以 上 が 誰 も が 自 殺 す る 可 能 性があり、また自殺は防ぐことができるという選択肢に同意した。 また、多 重 回 帰 分 析 の 結 果 か ら 、母 親 か ら の 養 護 因 子 の 高 い 対 象 者 は 、自 殺 は 一 般 的 な も の と 捉 え 、人 は 自 殺 す る 権 利 は 持 っ て い な い と 捉 え る 傾 向 に あ っ た 。学 生 に お け る 自 殺 へ の 態 度 に 関 す る 過 去 の 研 究 で は 、国 や 文 化 に よ っ て 自 殺 へ の 態 度 は 異 な っ て お り 、ま た 、学 年 ご と に よ っ て も そ れ ら の 傾 向 は 変 わ っ て い く と い う 報 告 が あ る 。親 子 の 結 び つ き に 関 す る 研 究 に つ い て は 、母 親 の 保 護 レ ベ ル の 低さは重度抑うつ症状および自尊心の低さに関連するという報告や 、母親か らの愛着はストレスを受けている間の精神衛生に大きな影響を与えるという 報 告 が あ る 。ま た 、親 子 の 結 び つ き の 潜 在 的 な パ タ ー ン は 、異 な る 機 能 不 全 ス キ ー マ の 発 達 に 貢 献 し 、自 殺 へ の 態 度 に 結 び つ く 可 能 性 が あ る と い う 報 告 が あ ることから、これらの報告は本研究結果を支持するデータであると考えられ る。 【 結 論 】本 調 査 に よ り 医 療 従 事 者 自 身 の 親 子 の 結 び つ き が “ 自 殺 へ の 態 度 ” と 関連することが明らかにされた。医療従事者の“自殺への態度”については、 教 育 に よ り 変 容 す る と 報 告 す る 先 行 研 究 も 存 在 し て お り 、今 後 、適 切 な 自 殺 対 策教育が求められる。
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