第 13 回課題解答のヒント (1)「国債発行は,将来,元金と利子の支払うので将来世代の負担となる」とい う論を批判せよ。 お金の面と物の面に分けて次の手順で批判する。 <お金の面> 1)国債発行時点では,国債購入資金の調達で民間資産は減少し(遠州の補足),国 債購入者から減税対象者または公共工事受注者・労働者にお金が回るとともに,国 債購入で減少した民間資産が国債という形で補填される(遠州の補足)。 2)国債が償還される将来時点では,元利返済のための増税で,納税者から国債保 有者へお金が回る。 従って,お金の面では国債発行時点も償還時点も民間の間でお金が回るだけで, 純負担はない。 <物の面> 3)国債発行時点で,好況=完全雇用ならば,国債購入資金が必要な民間投資を抑 止する(遠州の補足)。また,生産量は国全体の生産能力の上限で固定されているの で,財政出動による現在時点の購買力の増加も投資を抑制(=資本蓄積を阻害)し, 将来の生産力が低下して将来世代の負担となる。 4)国債発行時点で不況であれば,国債購入資金は需要不足で投資できない余剰資 金で行われるので,民間投資を抑止しない(遠州の補足)。また,財政出動による現 在世代の購買力の増加や公共事業で使う資源も,余剰資源を活用してまかなわれる ので,民間投資を抑止することにはならず,将来世代の負担とはならない。 5)国債発行による将来世代の購買力の削減は,失業者の生活をまかなうための物 である限り,国債を発行しなくても生じたものであるので,国債発行とは関係がな い(遠州の補足)。 6)さらに,財政出動が公共事業の場合には,できあがった公共財が将来世代にも 役立つならば,将来世代も便益を得,将来世代の購買力の減少分も(遠州の補足) 負担とはならない。 7)ただし,財政出動で増加した現在世代の購買力が,不況期には行使されずに完 全雇用期になってから支出されれば,3)のとおり民間投資を抑制するので将来世 代の負担となる。 以上から,国債発行は常に将来世代の負担となるわけではなく,不況期に発行さ れ,財政出動により増加した購買力も不況期に使い切るならば,将来世代の負担と はならないことを論証する。 (2)「国債発行は利子率を上昇せせ,資本蓄積が遅れて将来世代にマイナス」と いう論を批判せよ。 1)国債発行が,利子率を上昇させるのは,完全雇用期に財政出動による購買力の 増加が民間投資を抑止するから 2)不況期には,財政出動による購買力の増加は余剰資源でまかなわれるだけなの で,将来への投資分は減少せず,従って,利子率の上昇も起こらない 以上を適切に説明して批判する。
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