新電力社会で変革を迎える地域と家庭のスマートエネルギー

新電力社会で変革を迎える地域と家庭のスマートエネルギーシステム技術
協同研究委員会
設
置
趣
意
書
家電・民生技術委員会
1. 目 的
本協同研究委員会「新電力社会で変革を迎える地域と家庭のスマートエネルギー
システム技術協同研究委員会」は,電力自由化に関連して新たな進化が予想される
地域と家庭のエネルギーシステム技術について,新電力サービスビジネスモデルと
しての複合システムの価値分析に関する技術,スマートエネルギーシステムの相互
協調に関する技術,スマートエネルギー複合システムの信頼性に関する技術を調査
し,現状の課題や今後のあるべき姿についての提言を行うことで,国内外における
これら新規分野の技術の進化に貢献することを目的とする。
2. 背 景 と 内 外 機 関 に お け る 調 査 活 動
1) 背 景
我 が 国 に お け る 家 庭 内 電 力 利 用 機 器 と し て の 家 電 製 品 は 1950~ 1960 年 代
に 冷 蔵 庫 ,洗 濯 機 ,炊 飯 器 ,エ ア コ ン ,電 子 レ ン ジ と い っ た 主 要 な 機 器 が 実 用
化 さ れ ,高 度 成 長 を 原 動 力 に 大 き く 普 及 拡 大 ,家 庭 生 活 の 向 上 に 大 き く 寄 与 し
て き た が , 家 庭 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 大 幅 に 増 大 さ せ 続 け た 。 1973 年 の 石
油 シ ョ ッ ク 後 ,産 業 部 門 で は 消 費 エ ネ ル ギ ー が 横 ば い 状 態 に 転 じ た が ,家 庭 部
門では「豊かな社会の本格志向」を背景とした機器の大型化,ハイパワー化,
ま た 所 帯 保 有 台 数 の 増 加 な ど に よ り 20 年 で 約 2 倍 と 一 貫 し て 増 加 を 続 け る と
こ ろ と な り , 省 エ ネ ル ギ ー が 強 く 要 求 さ れ て き た 。 さ ら に , 1997 年 の 京 都 議
定 書 や 1998 年 の 改 正 省 エ ネ 法 ト ッ プ ラ ン ナ ー 基 準 な ど に よ り ,家 電・民 生 分
野 に「 消 費 電 力 量 の 抑 制 と し て の 省 エ ネ ル ギ ー 」気 運 が 高 ま り ,と り わ け 1973
年以降日本で拡大した家電へのパワーエレクトロニクス応用が機器の省エネ
性 能 向 上 に 貢 献 し た 。一 方 ,京 都 議 定 書 を 背 景 に 低 炭 素 化 の 手 段 と し て 予 想 さ
れ た 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 大 規 模 導 入 と 原 子 力 発 電 比 率 の 大 幅 増 大 は ,系 統 安
定 性 確 保 の た め 前 者 は 発 電 出 力 の 平 準 化 ,後 者 は 負 荷 平 準 化 を 要 求 し ,蓄 電 シ
ス テ ム ,と り わ け そ の 分 散 設 置 と な る ス マ ー ト ハ ウ ス の 機 能 が 家 電 分 野 で 注 目
されるようになった。
2011 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 以 降 で は , 全 原 発 一 時 停 止 な ど の 影 響 で 電 力 の
最 大 供 給 能 力 の 不 足 が 危 惧 さ れ ,「 消 費 電 力 ピ ー ク の 抑 制 と し て の 節 電 」 の 理
解 が 浸 透 し , こ の 局 面 で も 負 荷 平 準 が 時 代 の 要 請 を 受 け て い る 。 ま た , 2012
年 7 月に開始された固定価格買取制度は再生可能エネルギーの大量導入の引
き 金 を 引 き ,発 電 出 力 の 平 準 化 が 一 層 求 め ら れ る と こ ろ と な っ て お り ,分 散 発
電 と 蓄 電 装 置 ,電 力 利 用 機 器 の 省 エ ネ・節 電 を 複 合 制 御 す る ス マ ー ト エ ネ ル ギ
ーシステムの役割がますます重要になりつつある。
2014 年 6 月 に 成 立 し た 改 正 電 気 事 業 法 で は ,2016 年 よ り 全 需 要 家 に 対 す る
電 力 小 売 り が 自 由 化 さ れ て 新 た に 8400 万 件 の 市 場 が 追 加 さ れ る と と も に ,多
く の 新 電 力 事 業 者 を 中 心 と し た 電 力 小 売 市 場 の 変 革 が ,家 庭 に お け る 電 力 利 用
に 大 き な 影 響 を 与 え る こ と が 予 想 さ れ る 。2018~ 2020 年 の 大 手 電 力 事 業 者 の
料金自由化と発送電分離はこの動き にさらに拍車をかけるものと予想される。
競争激化によって供給信頼性確保や長期視点の電源確保のための投資余力が
不 足 し ,電 力 供 給 の 不 安 定 化 や 価 格 高 騰 の リ ス ク も 危 惧 さ れ る 一 方 ,発 電 事 業
者 と 家 庭 を 結 ぶ 多 彩 な コ ー デ ィ ネ ー ト 事 業 が 考 え ら れ る 。さ ら に ,大 規 模 集 中
発 電 か ら 分 散 電 源 へ の 移 行 に 伴 い ,家 庭 が エ ネ ル ギ ー 選 択 の 主 体 者 に な り ,需
要 家 サ イ ド か ら 新 た に 生 ま れ る 新 電 力 サ ー ビ ス が ,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 自 給
率 向 上 と 地 球 温 暖 化 へ の 対 応 ,地 域 産 業 の 振 興 と 雇 用 拡 大 を も た ら す 効 果 が 期
待 さ れ る 。こ の 電 力 自 由 化 に 関 わ る 家 庭 に お け る ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム
と 地 域 に お け る ス マ ー ト コ ミ ュ ニ テ ィ の 付 加 価 値 の 向 上 が ,地 域 と 家 庭 に お け
る 電 力 利 用 の 重 要 な 技 術 群 を 形 成 す る こ と が 予 想 さ れ る と と も に ,そ の 普 及 拡
大に伴いシステムの相互協調や信頼性などの技術を新たに構築する必要が考
えられる。
2) 内 外 機 関 に お け る 調 査 活 動
近 年 ,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に よ る 分 散 電 源 や コ ミ ュ ニ テ ィ あ る い は 家 庭 規 模
の 蓄 電 シ ス テ ム や HEMS( Home Energy Management System ) な ど ス マ ー ト
エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 応 用 研 究 が 盛 ん に な り つ つ あ り ,国 内 で は 電 気 学 会 や 電
子 情 報 通 信 学 会 の 主 催 す る 会 議 で , 海 外 で は IEEE 主 催 の 国 際 会 議 に 加 え て ,
韓 国 ,台 湾 ,中 国 の 学 会 で 毎 年 多 く の 論 文 が 発 表 さ れ て い る 。電 気 学 会 の 調 査
専 門 委 員 会 に お い て も 2012 年 4 月 か ら 2014 年 3 月 に か け て「 家 庭 内 の 電 力 利
用 機 器 ・ 創 エ ネ 機 器 ・ 蓄 エ ネ 機 器 の 新 技 術 協 同 研 究 委 員 会 」, 2011 年 10 月 か
ら 2013 年 9 月 に か け て「 家 庭 等 に お け る 情 報 通 信 機 器・シ ス テ ム の エ ネ ル ギ
ー 技 術 動 向 調 査 専 門 委 員 会 」が 設 置 さ れ ,家 庭 内 電 力 利 用 に 関 連 す る 上 述 の 技
術 が そ れ ぞ れ の 視 点 で 調 査 さ れ て き た が ,電 力 自 由 化 で 変 革 を 迎 え る 地 域 と 家
庭 の ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム に つ い て 価 値 分 析 ,相 互 協 調 ,信 頼 性 に 関 わ
る技術を体系的に調査した例はない。
3. 調 査 検 討 事 項
1) 地 域 と 家 庭 の 電 力 利 用 形 態 に 影 響 す る 新 電 力 ビ ジ ネ ス モ デ ル に 関 連 す る 技 術
2) コ ミ ュ ニ テ ィ お よ び 家 庭 に お け る ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 相 互 協 調 に
関する技術
3) ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー 複 合 シ ス テ ム の 信 頼 性 に 関 す る 技 術
4. 予 想 さ れ る 効 果
今後,電力自由化に関連して新たな技術群を形成することが予想される,コミュ
ニティあるいは家庭規模のスマートエネルギーシステムの技術動向について,ビジ
ネスモデル,相互協調,信頼性の視点で詳細に調査し,現状の課題や今後のあるべ
き姿についての提言を行うことで,国内外におけるこれら新規分野の技術の進化に
貢献できることが期待できる。
5. 調 査 期 間
平 成 27 年 (2015 年 )9 月 ~ 平 成 29 年 (2017 年 )8 月
6. 委 員 会 の 構 成 (職 名 別 の 五 十 音 順 に 配 列 )
職
名
氏
委員長
中村
良道
(スマートエナジー研究所)
会員
委
員
有馬
仁志
(有馬マネジメントデザイン)
会員
委
員
入山
鋭士
(インフィニオン)
会員
委
員
大森
英樹
(大阪工業大学)
会員
委
員
菊池
珠夫
( 日 経 BP)
会員
委
員
岸本
圭司
(パナソニック)
会員
委
員
早川
潔
(府大高専)
会員
委
員
波多野祥二
( OTSL)
会員
委
員
長谷川
(ユビキタス)
会員
委
員
廣野
敦
(村田製作所)
会員
委
員
古田
康衛
(鹿島建設)
会員
幹
事
茂木
進一
(神戸高専)
会員
那須
隆志
(スマートエナジー研究所)
会員
幹事補佐
他
名
(所
聡
属)
会員・非会員区分
公募
7. 活 動 予 定
委員会
6 回/年
見学会
1 回/年
幹事会
1 回/年
8. 報 告 形 態
電気学会全国大会・産業応用部門大会等でのシンポジウム ,産業応用フォーラム
等を開催し,当該技術に関する調査・検討結果を広く報告する予定である。
9. 活 動 収 支 予 算
収入
委員負担金
0 円/2 年(会費は徴収しない)
支出
会議費・通信費
0 円/2 年
(運営に必要な経費が発生した場合には,参加者負担もしくは産業応用フォーラムの
開催等で補填し,活動期間中で精算することとする)