KUIS授業見学 ラテンアメリカ政治論1 事前課題 <はじめに> ※本講義に参加される方は、このプリントをよく読んでおいてください。 □当日の講義は、ラテンアメリカの政治・社会に関する映画を鑑賞します。そしてこの映 画を通じて、以下 3 点の問いを明らかにすることを目的としています。 ①富裕層と貧困層にはどのような違いがあったか? ②チリではなぜ軍事政権が登場したのか? ③貧富の格差は、ゴンサロとマチュカのまわりでどのような問題を生んだのか? □ただし、当日に皆さんが鑑賞する映画は、本講義全体の授業計画に従って開始 30 分後頃 から放映されます。あらかじめご了承ください。 1.鑑賞する映画「マチュカ~僕らと革命」 (制作:2004 年、監督:アンドレス・ウッド) □あらすじ 1973 年のチリ。首都サンチャゴに住む 11 歳のゴンサロ・インファンテは裕福な家庭で 育った成績優秀な少年だけど、苛められっ子である。そんな彼の学校に、貧民窟に住む 先住民の少年たちが入学して来た。社会主義政権の新方針で、貧しい子供たちに無料で 教育を受けさせることになったためだ。ゴンサロは、そんな少年の一人ペドロ・マチュ カと友人になる。ゴンサロとマチュカは、互いの生活格差を乗り越えて友情を深めてい く。社会主義政権の同化政策は、貧富格差や人種差別を乗り越えてチリ国民みんなを幸 福にすると期待されていた。しかし、長い歳月をかけて形成された差別意識や生活格差 は一朝一夕には払拭できず、大人たちの軋轢は、次第に子どもたちの心も蝕んでいく。 2. 「軍部支配型」権威主義体制の成立:なぜ、軍が国を支配するのか 1) 背景としての社会の混乱 □ 政権交替の一形態としての(クーデター)と反乱 国家機構内の一部勢力によって起こされる非合法的な政権奪取 クーデターの諸機能(秩序維持、政権交代、政策路線の交替) 2)軍事政権の基本的性格 □基本的性格 ①支配集団としての軍 ・ 「テクノクラート」 (技術官僚)との共同統治 ・協調組合主義(corporatism)の利益調整 ②体制理念「国家安全保障ドクトリン」 (=反共+開発) ③政治参加の抑制と弾圧 3)クーデター後の政治過程 ①軍事評議会設置・憲法の一時的停止→憲法体制の復活[=短期介入] 例)20 世紀半ばまでの中南米諸国、トルコ、タイ ②軍事評議会設置・憲法の長期的停止/新憲法制定[=長期政権] 例)南欧、60 年代以降の中南米諸国、韓国→今日の検討事例 3. 「軍部支配型」権威主義体制の諸事例:チリの事例 1)軍部官僚型 例)チリ(1973~90)ブラジル(64~85)アルゼンチン(66~73、76~83)ウルグアイ (73~85) 、韓国(61~79、79~88) 社会の混乱と中間層・上層の危機意識 クーデター後、軍による本格的政権運営 2)チリ:長期軍政 [1973~90 年] □ 成立の経緯 ◇アジェンデ共産党政権期 (1971~73)の経済・社会の 不安定化、政治の分極化 ⇒ 軍部が政権を掌握 ◇ピノチェト大統領 憲法停止、議会閉鎖・政党活動禁止 □軍事政権の終焉:正当性の低下 (経済政策の失敗、自由化要求) ◇民主化運動~国民投票(88)~民政移管(90) <さいごに> □映画を鑑賞した後に、皆さんにはリアクションペーパ(質問・疑問・コメントを自由に 書き込むことができるシート)を書いて頂きます。 とくに、 ① 富裕層と貧困層にはどのような違いがあったか? ② チリではなぜ軍事政権が登場したのか? ③ 貧富の格差は、ゴンサロとマチュカのまわりでどのような問題を生んだのか? という3つの問いのうち、どれか 1 つ以上に関連づけて論じてみてください。当日、皆さ んにお会いできることを楽しみにしています。 舛方周一郎(イベロアメリカ言語学科専任講師)
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