会計と税務(第2回)

会計と税務(第2回)
公認会計士・税理士
井村
登
1.[目的の違い]
社長
会計と税務はよく違うといいますが、同じ会社の経済活動を記録・処理にするのにどう違うのですか。
会計士
目的が違うのです。その辺りを図で示すと次のとおりです。
会社の経済活動を記録・処理
会
目
的
相
手
計
税
務
企業の経営成績・財政状態を正しく 課税の公平を図り、正確な
把握・伝える
課税所得を計算する。
経営者、株主、その他の利害関係人 国・地方自治体
処理基準
一般に公正妥当な会計基準
同左+税法
表
目的から大いに関心あり
目的から余り関心なし
示
貸借対照表・損益計算書・株主資本
作成書類
等変動計算書等(計算書類)
同左+各種申告書(別表)
2.[会計上の利益と税務上の所得]
社長
なるほど、すると会計と税務は全く違うプロセスで計算する2本立てですか。
会計士
いいえ。元々別々に計算するということではなく、会社で作成され株主総会で承認された計算書類を
ベースに、税法を加味して課税所得を計算します。図表にすると次のとおりです。
貸借対照表
(損益計算書・目的から区分表示重視)
(目的から区分表示重視)
加 算 減 算
税
法
目 的 不 一 致 調 整
会計上の利益
損金不算入(A)
益 金 算 入(B)
財産に影響
損 金 算 入(C)
する項目
益金不算入(D)
税務上の所得
申告書別表五(一)
(申告書別表四・目的から区分表示なし )
目的から区分表示なし
社長
(A)∼(D)にはどんなものがありますか。
会計士
代表的なものは次のとおりです。
(A)交際費等の限度超過額、法人税や住民税など
(B)剰余金処分方式での特別償却準備金の取崩額など
(C)繰越欠損金など
(D)受取配当等の益金不算入、還付税金等の益金不算入など
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3.[会計と税務のこんな接点]
社長
A∼Dは判りましたが、他に注意例はありませんか。
会計士
ケース・スタディーを示しましょう。
ケースNo
1
2
3
4
ケ
ー
ス
判定
会計では減価償却費を計上せずに税務で
計上・減算する。
理
由
減価償却費や各種引当金は会社決算で損
×
金(費用・損失)として経理しなければ、
税務上も損金にならない。
会計では工事進行基準、税務では完成引渡
基準を適用する。
税務上、工事進行基準は強制適用を除い
×
て会計上処理した場合に認められるの
で、会計と税務は一致。
法的に貸倒れが決定した債権を会計上処
理せず、税務上で処理減算する。
会計上の賞与引当金を税務上は加算する。
×
○
会計も税務も一般に公正妥当な会計基準
によるので。
会計は正しいが、税務上賞与引当金は損
金不算入。
4.[申告書別表四・五(一)の利用]
社長
なるほど、会計と税務は一般に公正妥当な会計基準で処理するという基本は同じで、法人税申告書別表
四・五(一)の利用は基本的に「両者の目的の違いに基因する項目(前述A∼Dなど)」に限られるということ
で、自由に使うというものではないですね。
会計士
そのとおりです。
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