知っておきたい会計・税務の知識(第24回) 役員給与の決定と改訂-2

知っておきたい会計・税務の知識(第24回)
役員給与の決定と改訂-2
公認会計士・税理士
井村
登
[一時金支給]
社長
前回、役員給与の改訂について勉強しました。
これは、月額給与(定期同額給与)の問題でしたが、それなら従業員のように夏や冬に一時金支給
はできないのですか?
会計士
はい。会社法では支給するのは構いませんが、税務ではその一時金支給は原則損金になりません。
社長
原則というと、例外があるのですね。
会計士
[事前確定届出給与]
.......
はい、次のいずれか早い日までに、税務署へ「支給時期」・「支給額」等を記載した届出をした場
合、支給する給与を事前確定届出給与として損金に算入することができます。
・役員給与に係る定めに関する決議をする株主総会等の日から 1 カ月を経過する日(A)
・役員の職務執行開始の日の属する会計期間開始の日から 4 カ月を経過する日(B)
社長
具体的なスケジュールで教えて下さい。
[スケジュール例]
会計士
(ケース例:3 月決算 6 月総会、8 月と 12 月に一時金支給)
定時総会
職務執行開始日
24.4.1 24.6.27
支給
支給
24.8.10
24.12.10
決議総会等の日から 1 ヶ月経過日(A) 24.7.27
いずれか早い日まで(H24.7.27)
会計期間開始の日から 4 カ月経過日(B) 24.7.30
24.7.27 までに 8/10、12/10 に支給する個人別金額等を届出ます。
社長
でも、こんなに早く届出るには、利益処分的な一時金では無理ですね。
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25.3.31
[年俸の分割払]
会計士
そうです。税務では利益調整的な発想はなく、この事前確定届出給与は一般的に次のような使い
方をします。
確定している年俸 12,000 千円の役員給与を
プラン 1
1,000 千円×12 ヵ月=
12,000 千円
定期同額
800 千円×12 ヵ月=
9,600 千円
定期同額
or
プラン 2
1,200
千円
× 1 ヵ月=
1,200
1,200 千円× 1 ヵ月=
事前確定届出
1,200 千円
計
これならば、確定年俸 12,000
千円
12,000
〃
千円
千円
をどう支給するかの問題ですから所定の日までに届出すること
が可能です。
社長
なるほど、すると、税務ではこの「事前確定届出給与」や前回の「定期同額給与」に該当すれば
全て損金になるということですね。
[不相当に高額な場合の損金不算入]
会計士
いいえ、両給与に該当しても次の場合は不相当に高額となって損金になりませんので注意が必要
です。
不相当に高額な場合
形式基準
実質基準
社長
定款や株主総会で定めた取締役全員での
報酬総額限度額(月額とか年額)を超えた場合
その役員の職務等からみて不相当な額
損金不算入
超過額
同不相当な額
分りました。会社法や税法の関係を十分注意して検討が必要ですね。
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