知っておきたい会計・税務の知識(第 19回) 自己株式の評価、取得の税務他-3 公認会計士・税理士 井村 登 [会社の自己株式取得手続] 社長 前二回で自己株式の評価方法や具体的な計算方法は判りましたが、自己株式の具体的な取得手続 はどうするのですか。 会計士 はい、取得手続は会社法に定められていて、一般的には定時株主総会で ②取得対価の総額 ③取得期間(1 年以内) ①取得する自己株式数 などを決議し、実際の実行は上記決議内で取締役会 決議に基づいて行ないます。 なお、特定の相手からの取得は上記株主総会決議は特別決議がいります。 [財源規制] 社長 会計士 では、株主総会決議さえあればどんな会社でも、自己株式を取得できるのですね。 .. .. .. いえ、必ずしもそうではありません。株式の発行が資本の増加ですから逆に、自己株式の取得は .. 資本の払戻し(減少)となります。 したがって、会社の分配可能額(概ね、その他利益剰余金とその他資本剰余金の合計額)の範囲内 でしか取得できません。 社長 ということは、剰余金が▲の欠損会社では取得できないのですか。 会計士 そのとおりです。 [取得の会計と税務] 社長 次に取得したときは会計処理は次のとおりです。 (借方)自己株式 ×××/(貸方)現預金 ××× 又、表示は次のとおりです。 貸借対照表(B/S) 資産の部 負債の部 純資産の部 資 本 金 ××× 剰 余 金 ××× 自己株式 ▲××× 社長 なるほど、資本の払戻しだから資産の部ではなく純資産の部の▲で表示するのですね。 会計士 これが会計ですね。次に税務ですが、取得(払戻し)の金額が資本金からなるものは正に元本の戻 りですが、それを超える部分は剰余金の分配つまり配当と考えます。 1 [みなし配当] 社長 いつものように具体的な数字で教えて下さい。 会計士 では、例えば、次のように考えます。 株主の元々の 売却価額 ②のうち資本 みなし配当金額④ 売却損益⑤ 取得価額① (払戻し価額)② 金の部分③ (②-③) (②-④)-① 600 1,300 800 500 200 ②のうち③の部分が「元々の払戻し」で、それを超える④が「みなし配当金額」となります。 又株主の②と①の差 700 のうち④のみなし配当金額 500 を除いた金額 200 が結局売却損益となる のです。 社長 すると、会社側でも④の金額を配当として認識するのですね。 会計士 はい、あくまでも税務上(決算書ではなく、法人税の申告書で)ですが。 情報伝達重視の会計と課税関係重視の税務の違いがよく出ていますね。 2
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