知っておきたい会計・税務の知識(第 18 回) 自己株式の評価、取得の税務他-2 公認会計士・税理士 井村 登 [具体的な計算方法] 社長 前回、相続や贈与でどのような株主が「原則的評価方式」や「特例的評価方式」を使うのか大体 分りました(ステップ 1)。では、具体的な計算方法を教えて下さい。 [原則的評価方式・類似業種比準方式] 会計士 はい、今回は(ステップ 2)ですね。原則的評価方式には、類似業比準方式と純資産価額方式があ ります。 (1)類似業種比準方式 類似業種比準方式とは、その会社の事業内容と類似する上場会社株価から、特定の「物差し」 =「比準要素」を使ってその会社の株価を評価しようとする方法です。 その比準要素は、一株当たりの「年配当金額」 、一株当たりの「年利益金額」及び一株当たり の「純資産価額」の三要素です。 類似業種比準方式の計算式では、類似業種と比較して配当が多い会社、多額の利益を計上して いる会社、純資産が大きい会社などは評価額が高くなる。つまり実力比較株価です。 [例]こんなイメージです。 類似:当社 類 似 業 種 当 株価 357 円 ( 1 株当りの年配当金額 4.8 円 4.2 円 1 株当りの年利益金額 60 円 48 円 1 株当りの純資産価額 460 円 245 円 データ 社 ? ) この場合、当社の株価は次の計算式で求めます(端数処理済)。 4.2 357 円× 4.8 + 48 60 ×3+ 245 460 5 ×0.7(安全余裕率)=189.9 円 [データ] 社長 なるほど、3要素での実力比較ですね。ところで、類似業種の各データはどう入手するのですか。 1 [原則的評価方式・純資産価額方式] 会計士 データは国税庁が発表し、ホームページから入手できます。 次に、純資産価額方式は下記のとおりです。 (1)純資産価額方式 この考え方は、会社を清算したと仮定した場合において、株主に帰属する価値がいくらになる かという観点から計算するものです。 評価会社が所有する資産を相続税評価額で処分し、負債を清算し、清算法人税(45%)を支払っ たと仮定した場合の残額(純資産)を求め、これを発行済株式数で割って 1 株当たりの純資産価額 を算出します。 [例]こんなイメージですね。 B/S (単位;億円) 負 債2(時価 2) 発行済株式数 2 万株 資産 5(時価 15) 純資産 3(時価 13) 時価純資産 13(15-2)-評価差額の法人税 4.5(15-5)×45% 2 万株 =42,500 円 [規模と組合せ] 社長 なるほど、会社を解散し税引後の時価純資産を 1 株当たりどの程度分配できるかという計算です ね。又、ステップ 2 では、会社規模によってこの「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」を 使いわけるのですが、会社規模はどのように見るのですか。 [建設業での規模区分] 会計士 次のように国は定めています。 取引金額 総資産価額 および従業員数 ・5,000 万円未満 または 5 人以下 ・5,000 万円以上 ・5 人以下を除く ・4 億円以上 ・30 人以下を除く ・7 億円以上 ・50 人以下を除く ・10 億円以上 ・50 人以下を除く 8,000 万円 8,000 万円以上 7 億円以上 14 億円以上 未満 7 億円未満 14 億 円 未 満 20 億円未満 20 億円以上 小会社 (L=0.50) 中会社の小 (L=0.60) 中会社の中 (L=0.75) 中会社の大 (L=0.90) 大会社 (L の数値は併用方式での類似業種比準価額のウェートです。) 例えば、先ほどの会社が仮に「中会社の中」ならば次のように計算します。 189.9 円(類似業種比準価額)×0.75(L)+42,500 円(純資産価額)×(1-0.75)=10,767 円 2 社長 なるほど、規模が大きくなればなるほど「解散・分配」の可能性が少ないので類似業種比準方式 のウェート(L)を高めているのですね。 [特例的評価方式・配当還元方式] 会計士 そのとおりです。最後に配当還元方式は次のように考えます。 ①配当還元方式 1 株当り 2 年平均配当額 10% で計算します。つまり、利廻り実績を 10%で逆算します。 [例]こんなイメージですね。 50 円(2 年平均 1 株当り配当実績) 10% =500 円 [比較少数株主] 社長 そうですね。その会社における同族株主等以外の比較少数株主にとっては、結局配当を得る楽し みですから 1 株 50 円配当なら投資価値は 500 円ということですね。 [芸の細工] 会計士 つまり、 「株主の立場」と「会社規模」の組合せで、株価と計算するという芸の細かさを国は求め ています。 3
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