第4節 稼得資本 留保利益

第12章
財務諸表の作成と公開
第1節 財務諸表の体系
1 財務諸表の種類
2 会社法の計算書類
3 金融商品取引法の財務諸表
1.財務諸表の種類
株式会社は資本か借入資本を活用して利益を
獲得するとともに、配当後の留保利益を再投資して
株主の資本を増殖させる活動を継続して営む組織
である。
したがって結果を利害関係者に伝達することを
任務とする財務会計では、 企業は利益決定に対
する書類(損益計算書)と株主資本に関する書類
(貸借対照表)の2種類を作成しなければならない。
2.会社法の計算書類
会社法で全ての株式会社に義務付けている
のは以下の6種類の報告である。
①貸借対照表
②損益計算書
③株主資本等変動計算書
④注記表
⑤事業報告
⑥付属明細書
3.金融商品取引法の財務諸表
有価証券報告書は
①企業の概況
②事業の概況
③設備の状況
④株式・配当・役員等の状況
⑤経理の状況
⑥株式事務の概要
などから構成されている。
第2節 損益計算書
注記とは
• 財務諸表本体の内容に関連する重要事項を
財務諸表本体とは別の箇所に言葉や数値を
用いて記載したものである。
• これにより財務諸表本体が簡潔になり、重要
な情報が詳細に伝達されるため、注記は
会計情報の明瞭表示に役立っている。
3つの注記事項の種類
• 継続企業の前提や重要な会計方針
(accounting policy)など、財務諸表作成の
基本となる事項。
• 貸借対照表など個々の財務諸表の記載項目
の内容・内訳その他の関連情報。
• 重要な後発事象(subsequent event)。
財務諸表別記載方式
• 各財務諸表別にその本体に続けて注記事項を
記載する方式
一括記載方式
3つ全ての財務諸表を記載した後、一括して
注記事項を記載する方法
継続企業の前提(Going Concern)の注記
• GCに重要な疑義を抱かせる状況が、事業年度の末日に
おいて存在する場合(財務諸表の悪化や債務の不履行等)、
関連する情報を財務諸表に注記することが求められている。
• そのような場合、次の事項を注記しなければならない。
(1)そのような事象や状況が存在する旨とその内容。
(2)継続企業の前提に関する重要な疑義の存在の有無。
(3)そのような事象や状況を解消したり大幅に改善するため
の経営者の対応および経営計画。
(4)その重要な疑義の影響(例えば倒産に起因して回収
不能となる売上債権の金額など)が計算書類に反映されて
いるか否か。
ゴーイングコンサーンに関する注記のある銘柄一覧
• 2009年06月08日の時点で約185社(引用元:帝国
データバンク)
(例)イエローハット、フルキャストホールディングス、
ラオックス、ユニチカ、USEN等。
• IT系企業にはGC注記が多い。
• その理由として・・・
(1)ビジネスモデルが陳腐化しやすく、継続的に
収益を上げられない。
(2)資産が小さく、担保価値が小さいため、
借り入れが難しい 。
会計方針
• 採用される会計処理方法が相違すれば・・・
利益額等の測定結果が異なってくる。
• そのため、利害関係者は財務諸表を適切に
解釈するため企業が採用した会計方針を知
ることが不可欠。
次のような領域を例示して、企業が採用した会
計方針を重要なものとして注記する
(a)有価証券の評価基準および評価方法
(b)棚卸資産の評価基準
(c)固定資産の減価償却方法
(d)繰延資産の処理方法
(e)外貨建資産・負債の本邦通貨への換算基準
(f)引当金の形状基準
(g)収益・費用の計上基準
(h)ヘッジ会計の方法
(i)キャッシュフロー計算書における資金の範囲
個々の財務諸表に関連する注記
• 会計方針など、他の注記事項と共に一括して
記載するのが一般的。
1株当たり利益(Earnings Per Share)
• 1株当たり当期純利益の金額は、[普通株式に係る
当期純利益÷普通株式の期中平均株式数]として
算定する。
• 利益から分配された優先配当額は、普通株主には
帰属しないので、当期純利益から控除される。
• 期中に株数が変化した場合は、日割計算で期中
平均株式数を算定する。自己株式は控除される。
EPS 株式分割の例
前期EPS 165 円 = 当期純利益 165 万円 / 発
行済株式数 10,000株
一株を二株に分割
今期EPS 100 円 = 当期純利益 200 万円 / 発
行済株式数 20,000株
重要な後発事象の注記
• 当期の決済日後に次期以降の経営成績や
財政状況に重要な影響を及ぼす事象の発生を後発
事象と呼ぶ。
• 決済日後に発生した事象でも次期以降に重要な
影響を及ぼすため、最新情報として注記の形で
伝達しなければいけない。
(例)火災等による損害、会社の合併、主要な取引先
の倒産など
附属明細書と附属明細表
• 附属明細票は、貸借対象表や損益計算書の
記載内容を補足するために、重要項目の
期中増減や内訳明細などを表示した書類で
ある。
有形固定資産および無形固定資産の明細
引用元:SBIホールディングス
四半期財務諸表の公表制度
• 金融商品取引法により、上場会社などに対して四半
期報告書を作成し、その中に四半期財務諸表を含
めて開示することを要求している。
• 連結ベースの情報のみ必要で、子会社の
個別ベースでの財務報告は必要ない。
• 株主資本等変動計算書は含める必要なし。
• 損益計算書は両方必要。
• キャッシュフロー計算書は累計期間のみの
情報
四半期財務諸表の構成と対象期間
財務諸表の構成
四 貸借対照表
半
期 損益計算書
連
結
作成対象となる
時点/期間
その四半期末
対比情報
前年度の
その四半期年度 対応する時
の期首からの累 点・期間の
情報
計期間
キャッシュフロー 年度の期首から
計算書
の累計期間
実績主義
• 3ヶ月間を年度と並ぶ独立の会計期間とみな
し、正規の年度決算と同じ会計処理を行うや
り方。
予測主義

3ヶ月間を1事業年度の構成部分と見なし、
1事業年度の経営成績や年度末の財政状況
の予測を可能にする情報を表示するよう努め
るやり方。
日本で採用されているのは実績主義
• その理由として
(a)季節変動の影響をあらかじめ会計上で調節する
よりも、情報利用者がみずから季節変動の存在を
念頭において実績情報を解釈するようにしたほうが、
利用者にとって有益であること。
(b)営業費用の繰延処理や繰上計上には懇意的
操作の介入の余地が大きいため、実績主義により
客観性を確保する必要があること。
年次報告書と四半期報告書の違い
• 年次の有価証券報告書が決算日から3ヶ月
以内に届出を求められるのに対して、四半期
報告書は四半期末から45日以内に届けださ
ねばならない。そのため、年度の決算に比べ
て簡便な会計処理によることが許容されてい
る。
四半期特有の会計処理
• 第1は、原価差異の繰延処理である。標準原
価計算等を採用している企業で、操業度の季
節変動等に起因して四半期末現在で原価差
異が発生しているが、原価計算の期間末まで
に差異がほぼ解消すると見込まれる場合は、
継続適用を条件として、その原価差異を流動
資産または流動負債として繰り延べることが
出来る。
原価差異とは標準原価や予定原価などあらかじめ指標とし
て定められた原価と、実際の製造において要した実際原価と
の差額のことを言う。
• 第2に、後入先出法における売上原価の修正が必
要となるケースがある。例えば単価が単調に上昇し
ている棚卸資産に対して後入出法が適用され、
四半期末の数量が期首の数量より少なくなると、そ
の食込み部分の単価が他の部分より非常に低いた
め、その四半期の売上原価の金額は小さく算出さ
れる。しかし年度の末日までに食込み分を補充する
ことが合理的に込まれるのであれば、安い単価の
期首数量は在庫として繰り越されるから、年次の
売上原価は小さくならない。従ってこのような場合に
は、継続適用を条件として、期首在庫の単価とその
再調達価額との差額分だけ売上原価を修正し、そ
の金額を流動資産または流動負債として繰り延べ
ることが出来る。
• 第3に、税金費用の計算についても、(a)年
度決済と同様の方法のほか、(b)年間の見積
実効税率を用いた四半期特有の会計処理が
存在する。また(c)重要性が乏しい連結会社
については、税引き前四半期純利益に、前年
度の損益計算書による税金負担率[=(法人
課税など±法人税等調整額)÷税引き前当
期純利益]を乗じて計算することが出来る。
会社の臨時計算書類
• 株式会社による剰余金の配当は、年次配当
と中間配当だけに限らず、年度の途中におい
ていつでも何度でも実地することが出来る。し
かもその配当に際しては、年度の期首からそ
の時点までに獲得した純利益を分配可能額
に含めても良い。
剰余金とは創業以来の利益の累積額(その他利益剰余金)と
資本・準備金の減少等により株主に払い戻しをすることが可
能になった額の累積額
• 臨時計算書類は、臨時決算日における会社
の財産の状況を把握するための計算書類で
あり、(a)臨時決算日における貸借対照表と、
(b)事業年度の期首から臨時決算日までの
期間の損益計算書から構成される。
• 臨時計算書類を作成しても、剰余金の額は
影響を受けず、分配可能額の計算に期首か
らの純利益が反映されるだけである。した
がって期首からの純利益を加算しなくても、
分配可能額が十分に存在するのであれば、
臨時計算書類を作成する必要は無い。