HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの in silico 計算

Original Article(Clinical haemophilia )‒ Full Translation
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの in silico 計算
による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者の
インヒビター発生を予測する
In silico calculated affinity of FVIII- derived peptides for HLA class II alleles predicts
inhibitor development in haemophilia A patients with missense mutations in the F8
gene
A. D. Pashov, T. Calvez, L. Gilardin, B. Maillère, Y. Repessé, J. Oldenburg, A. Pavlova and S. V. Kaveri and
S. Lacroix-Desmazes on behalf of Abirisk Consortium
Centre de recherche des Cordeliers, INSERM, UMR S 872; Centre de Recherche des Cordeliers, Université Pierre et Marie CurieParis6, UMR S 872; Centre de Recherche des Cordeliers, Université Paris Descartes, UMR S 872, Paris, France; Department
of Immunology, Institute of Microbiology, BAS Sofia, Bulgaria; Inserm et UPMC, UMR S 943, Paris; CEA, iBiTecS, Service
d’ Ingé nierie Molé culaire des Proté ines, Labex LERMIT et VRI, Gif Sur Yvette; Laboratoire d’ hé matologie, CHU de Caen,
Caen, France; Institute of Experimental Haematology and Transfusion Medicine, University Clinic Bonn, Bonn, Germany;
and International Associated Laboratory IMPACT ( INSERM, France– Indian Council of Medical Research, India) , National
Institute of Immunohaematology, Mumbai, India
要約:血友病 A( HA )患者の 40% が F8 遺伝子に
来ペプチドの HLA クラス II に対する親和性が,イ
ミスセンス変異を持つ。しかしながら,同一変異患
ンヒビター発生と関連付けられるかについて検討
者のすべてが同様の第 VIII 因子( FVIII )インヒビ
した。ミスセンス変異が報告された 1456 例と対応
ター発生リスクに曝されてはいない。重症 HA 患者
す る, 主 な 野 生 型 FVIII 由 来 ペ プ チ ド の HLA ク
において,ヒト白血球抗原( HLA )ハプロタイプが,
ラス II 対立遺伝子 10 種類に対する親和性につい
FVIII インヒビター発生の危険因子として同定され
た。我々は,内因性 FVIII にミスセンス変異を生じ
ると,HLA クラス II に対する変異ペプチドの親和
性が変化することにより,FVIII 特異的 T 細胞寛容
を歪め,補充療法中,対応する野生型 FVIII 由来ペ
プチドによる抗 FVIII 免疫応答の誘導リスクが上昇
するという仮説を立てた。本稿では,Haemophilia
A Mutation, Structure, Test and Resource データベー
ス収載のミスセンス変異に対応する野生型 FVIII 由
て,平均値を予測した。線形回帰分析により,予
Correspondence: Sé bastien Lacroix- Desmazes, INSERM UMRS
872, Team 16, Centre de recherche des Cordeliers, 15 rue de l’Ecole
de Médecine, F-75006 Paris, France.
Tel.: +33 1 44 27 82 02; fax: +33 1 44 27 81 94;
e-mail: [email protected]
Haemophilia (2014), 20, 176–184
© 2013 John Wiley & Sons Ltd
4
測されるペプチド親和性の平均値と,変異インヒ
ビターの状況との間に有意な関連が確認された( P
= 0.006 )。FVIII ドメインの変異部位調整後には,
有意差が消失した。A1-A2-A3-C1 ドメインの解析
では,予測される HLA 結合親和性とインヒビター
の状況との間に正の相関が認められたが( 三分位
値の低親和性については,OR = 0.29[ 95% CI:
0.14 ∼ 0.60 ],P = 0.002 ),C2 ドメインに限定し
た解析では逆相関が示された( OR = 3.56[ 95%
CI:1.10 ∼ 11.52 ],P = 0.03 )。FVIII ペプチドの
ミスセンス変異患者の HLA 対立遺伝子への親和性
が FVIII 製剤の免疫原性に重要な役割を果たしてい
ることを本研究データは立証するものである。
Key words:第 VIII 因子,免疫原性,MHC クラス
II,ミスセンス変異,予測,T 細胞エピトープ
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの insilico 計算による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者のインヒビター発生を予測する
性の抗 FVIII IgG( 5,6 )および FVIII 反応性 T 細胞( 7–9 )
緒 言
が循環しても,中和抗イディオタイプ抗体( 10,11 )
血友病 A( HA )は,凝固因子である第 VIII 因子
および制御性 T 細胞( 12 )により制御される( 関連レ
( FVIII )をコードする遺伝子の変異に起因する,稀
ビュー( 13 ))。従って,「 後天性血友病 」と呼ばれる
な X 連鎖劣性遺伝性の出血性疾患である。HA 患
非血友病患者における病原性の抗 FVIII 免疫応答
者は FVIII 活性( FVIII:C )値の残存レベルに基づ
は極めて稀な事象であり,発生例は毎年 100 万人
き,その血漿と正常な血漿との比較により識別され
当たり 5 人にも達しない( 14 )。一方,CRM 陰性 HA
る( 1 )。即ち,重症表現型を呈する患者の FVIII:C は
患者の免疫系は,FVIII に対する教育を受けていな
検出不能レベル(< 1% )であるのに対し,中等症お
い。そのため,抗イディオタイプ B 細胞のクロー
よび軽症の HA 患者の場合,残存する血漿 FVIII:C
ンおよび制御性 T 細胞は産生されないと考えられ,
はそれぞれ 1 ∼ 5%
(注:欄外参照)
,
5 ∼ 40% である。
患者が治療用 FVIII に対し同種免疫をもつリスクは
重症 HA 患者のうち,交差反応性物質( CRM )陽性
高く,そのリスクは経験的に 15 ∼ 50% の間であ
である患者群では循環血中に変異 FVIII 分子がみら
ると推測されている( 15 )。興味深いことに,HA 患
れる一方,CRM 陰性である患者群では変異分子が
者の約 40% に相当する( 16 )ミスセンス変異を有す
みられないという事実は,HA 患者集団の不均一性
る CRM 陽性患者は,中間的状況に当たり,その免
をより一層増大させている。こうした表現型の不均
疫系は「 ほぼ正常 」な FVIII に対する教育を受けて
一性は,FVIII の不活化をもたらす多種多様な遺伝
いる。治療用の野生型 FVIII が投与されると,議論
子異常に起因している。これには,大小の欠失,ナ
の的となっているハプロタイプの差を例外とすれ
ンセンス変異を生じる一塩基置換,スプライス部位
ば( 17,18 ),ミスセンス変異を担う内因性 FVIII のペ
のミスセンス変異または変化,イントロン 1 または
プチドが FVIII 製剤分子のペプチドに対応していれ
イントロン 22 の逆位,ヌクレオチドの欠失/挿入
ば,制御性抗体および制御性 T 細胞に直面しない。
(2)
などが挙げられる
。
FVIII 製 剤 補 充 療 法 は,HA 患 者 の 出 血 性 エ ピ
ソードを抑制する治療選択肢である。残念ながら,
HA 症例の 5 ∼ 40% において,FVIII 注射製剤に
対 し,IgG ア イ ソ タ イ プ で あ る 抗 FVIII 抗 体( イ
従って,CRM 陽性患者は,FVIII 製剤に対し部分
的に寛容であり,FVIII インヒビター発生リスクが
低く,5 ∼ 10% の範囲であると報告されている。
遺伝と環境の両方からなる複数の危険因子は,
り,生活の質を悪化させ,治療費の大幅な増加をも
FVIII インヒビターの発生と関連している。遺伝
的 危 険 因 子 に は,HA の 重 症 度, よ り 具 体 的 に
は FVIII 障害の原因となる遺伝子異常型( 19 )が挙
げられ,また可能性として患者の内因性 FVIII と
治療用の外因性 FVIII 分子とのハプロタイプミス
たらす( 4 )。
マッチ( 17,18 ),免疫応答の制御に関与する遺伝子( す
ンヒビター)を産生する同種免疫応答が発生する。
そのため本治療は困難をきたす( 3 )。FVIII インヒ
ビターの発生により,患者の臨床管理は困難にな
個体の免疫系が FVIII を判断する方法は,内因性
なわち,TNFα,IL-10,CTLA-4 )プロモーター多
の FVIII 分子の存在自体および性質により指示され
型の存在( 20–23 ),ヒト白血球抗原( HLA )系の一部
る。従って T 細胞および B 細胞が個体発生過程で
の主要組織適合遺伝子複合体( MHC )クラス II ハ
それぞれ胸腺,骨髄で受ける教育によって指示され
プロタイプ( 23–26 )などがある。
ることとなる。健康な個体の場合,FVIII は免疫系
ミスセンス変異患者の場合,一部のミスセンス
に提示され,
免疫系によって認識される。その結果,
変異は,インヒビター発生について他のミスセン
一部の非血友病個体では,自然抗体である自己反応
ス変異と比較した場合,4 倍の高リスクと関連付け
られている( 16,27 )。しかしながら,補充療法後,同
注 )原著では 2 ∼ 5%となっていますが以下の資料をもとに変更しました。
・インヒビターのない血友病患者に対するガイドライン( 2013 年改訂版)
・インヒビター保有先天性血友病患者に対するガイドライン( 2013 年改訂版)
じような変異を有する患者のすべてが FVIII インヒ
ビターを発生するわけではない。例えば,Eckhardt
5
Full Translation: A. D. Pashov, et al.
ら に よ る 研 究 は,Arg593Cys 変 異 患 者 52 例 中 8
( 27 )
例がインヒビターを発生することを見出した
。
スコドン生成例を除去した( 585 例 )。抗原発現確
認例( すなわち,FVIII:Ag および/または FVIII:C
興 味 深 い こ と に,HLA-DRB1*01,DRB1*11,
が 陽 性,1129 例 )を 解 析 対 象 と し て 保 持 し た。
DRB1*15 など特定の HLA クラス II ハプロタイプ
インヒビターの状況と FVIII 変異との関連の有無に
が,同様のミスセンス変異を共有するインヒビター
ついて,「 いいえ」と「 はい 」以外の回答例を除去し
( 28 )
陽性患者コホートに高頻度に認められている
。
た( 571 例 )。サイレント変異例を除去した( 3 例 )。
総合すると,こうした知見から,患者の MHC クラ
B ドメイン変異例を除去した( 3 例―インヒビター
ス II 分子と,外因性の治療用 FVIII 由来ペプチド
との関連性がないため)
。こうして得られた計 1456
との結合親和性の重要性が指摘される。本研究で
例は,FVIII 分子の各種変異 500 例,変異部位の
は,in silico 予測により,HLA クラス II 対立遺伝
差異 383 例であるとみなした( Table 2 )。変異の約
子に対する治療用 FVIII 由来ペプチドの親和性が,
64%( 321 / 500 )は単独例,30%( 149 / 500 )は 2 ∼
ミスセンス変異をもつ HA 患者の FVIII インヒビ
ター発生と関連付けられるかどうかについて検討
した。
方 法
血友病 A に関連する FVIII 変異の HAMSTeRS
データベース
Haemophilia A Mutation, Structure, Test and
Resource( HAMSTeRS )は,HA の原因となる遺伝
子異常のパブリックドメイン中最大のリポジトリ
( 29 )
。今回の解析実施時
である( http://hadb.org.uk/ )
点では計 3783 例が登録され,3747 例が FVIII 塩基
。
配列のエクソンにおける点変異であった
( Table 1 )
解析例を以下の手順でさらに絞りこんだ。ナンセン
6
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの insilico 計算による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者のインヒビター発生を予測する
10 例,6%( 30 / 500 )は 10 例以上である。最も
代表的な変異は R593C( 75 例),R2150H( 50 例 ),
R2159C( 40 例 ),R531C( 34 例)であった。一部
の解析では,重症度( 重症/中等症/軽症 HA )の
情報が入手できなかった 115 例を除き,変異例を
重症度によりさらに 3 クラスに細分した。
野生型 FVIII の塩基配列
野 生 型 ヒ ト FVIII の 塩 基 配 列 は, 複 数 の ウ ェ
ブ サ イ ト( http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/
AAA52484. 1, http: / / www. uniprot. org/ uniprot/
P00451 )から FASTA フォーマットで入手可能で
ある。
る 15 アミノ酸長のペプチドに自動分割し 2337 本
とした。HLA クラス II 対立遺伝子のうち,欧州で
最も多くみられる対立遺伝子について,IEDB ウェ
ブサイトに提示されている中から 10 種類( HLA
DR- B1* 0101, 0301, 0401, 0701, 0901, 1101,
1201,1301,1501,1502 )を選択した。予測結果
を表にし,15 アミノ酸長のペプチドと 10 種類の
HLA 対立遺伝子との各組み合わせを 1 行に記す
( Table 3 )。従って,作業ファイルには,0 ∼ 100
の 範 囲 の 予 測 パ ー セ ン タ イ ル 順 位 が 23370 件
( 2337×10 )記載された。
統計解析
デ ー タ 解 析 対 象 は,3 ク ラ ス に お け る HA の
IEDB Analysis Resource
「 Immune Epitope Database( IEDB ) Analysis
Resource 」ウェブサイトから,各種ペプチドと多
数の HLA クラス II 分子との結合状況が予測され
る( 30 )。 本 サ イ ト で は,5 種 類 の ア ル ゴ リ ズ ム
( NN-align( 31 ),SMM-align( 32 ),コンビナトリアル
,ARB[ average relative
ライブラリー[ CombLib ]
binding ]マ ト リ ッ ク ス( 33 ),netMHCIIpan( 34 ),
Sturniolo 法( 35 ))と 1 種類のメタアルゴリズム( コ
重 症 度,FVIII の 重 鎖( B ド メ イ ン を 除 く )ま た
は 軽 鎖 の 変 異 部 位,FVIII ド メ イ ン( A1-A2-A3-
ス法は,3 種類以上の方法により結合が予測可能で
C1-C2-a1-a2-a3 統合領域 )の変異部位の 3 因子と
した。最終的に,インヒビターの誘発( Table 4 )
と,HAMSTeRS データベース登録患者毎の内因
性 FVIII 変異ペプチドに対応する,野生型外因性
FVIII ペプチドに予測される無差別性との相関につ
いて検討することを目的とした。点変異毎に,15
アミノ酸長のフレーム 15 本に変化が生じる( 例え
ば,R593 に つ い て は Table 3 参 照 )。 各 対 立 遺 伝
子については,影響を受ける 15 アミノ酸長のペプ
ある場合,いつでも適用される。コンセンサス法
チド中最も可能性が高い( パーセンタイル順位が
は,パブリックドメインで入手可能な他の方法に比
最小の )エピトープのみを考慮した。免疫原性は,
べ,無差別の MHC クラス II エピトープの検出に
10 種類の対立遺伝子のパーセンタイル順位最小値
ンセンサス法( 36 ))が提供されている。コンセンサ
( 37 )
優れた結果を示すことが報告されている
。対立
遺伝子によっては,コンセンサス法の予測因子の一
から平均値を採ることで予測した。この統合尺度
を「 結合スコア 」と呼ぶ( Table 3 )。「 結合スコア 」
部を入手不能であることから,コンセンサス法は
は,あるペプチドと 10 種類の HLA-DR 対立遺伝
適用できない。今回の例では,IEDB の推奨方針に
子の予測親和性の平均値を表すものである。その
より,次の効率順で利用可能な方法から選択する。
ため,ペプチドに対する「 結合無差別性( binding
コ ン セ ン サ ス 法 > NetMHCIIpan > NN-align >
promiscuity )」と呼ばれることもある。
Stata ソフトウェア( version 12, StataCorp LP 社 ,
米国 , テキサス州 College Station )を用いてロジス
ティック回帰分析を実施した。HAMSTeRS データ
SMM-align > CombLib。すなわち,本研究では,個々
の対象対立遺伝子について IEDB 推奨法を使用す
「パーセンタイル順位」
る。結果は 0 ∼ 100 の範囲の
に置き換えられ,0 の場合には所定の HLA 対立遺
伝子との結合親和性が高く,100 の場合には結合親
和性が低いことを表す。
FVIII 分子の全配列( 2351 アミノ酸 )を,隣接す
ベースの情報例は統計単位で表し,従属変数はイ
ンヒビターの状況とした。また独立変数は,HA の
,変異部位( ポリペプチド鎖およ
重症度( 3 クラス)
びドメイン )
,「 結合スコア 」
( 本ソフトウェアによ
7
Full Translation: A. D. Pashov, et al.
り自動的に三分位に分割 )とした。本研究は,2011
年 10 ∼ 11 月に利用可能であった HAMSTeRS デー
タベースを用いて実施した。本研究のため,最新の
データベース( 2012 年 12 月 )を用いて再度分析を
実施し,両解析結果とも同一の結果が得られた。
結 果
FVIII 分子のミスセンス変異の分布
最初に点変異患者を HAMSTeRS データベース
でスクリーニングした。コード配列のミスセンス変
異が,FVIII:Ag および FVIII:C の検出と関連付け
,ならびに患者にインヒ
られる例( CRM 陽性患者)
ビター発生が報告されている例を選択した( Table
1 )。今回の選択基準では,FVIII の A1a1A2a2 およ
び a3C1C2 ドメインのミスセンス変異を有した適格
例を 1456 例同定した。このうち FVIII のアミノ酸
変異部位が 383 例,異なるアミノ酸への置換が 500
例を占めた( Table 2 )。これは FVIII 分子の 907 ア
ミノ酸長の B ドメインにおいて少数報告されてい
るミスセンス変異について,B ドメインは FVIII 活
性に役割を果たさないという事実を示している。そ
のため,B ドメインは解析対象としなかった。既報( 2 )
では,F8 遺伝子点変異の約半分( 53% )が,FVIII
分子の重鎖によるものである。今回の選択基準を用
8
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの insilico 計算による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者のインヒビター発生を予測する
いたところ,F8 遺伝子ミスセンス変異が,A1 およ
結合スコアは,HAMSTeRS データベースに報告さ
び A2 ドメインに同様の割合( 54% )で認められた。
れた,ミスセンス変異に対応する野生型ペプチド毎
各ドメイン長の補正後では,今回選択したミスセン
に作成した。予測される親和性の平均値,すなわち
ス変異の発生範囲は,A1,A2,A3 ドメイン( 30.0
10 種類の HLA-DR 対立遺伝子に対する無差別性を
± 1.6% )の方が C1,C2 ドメイン( 22.9 ± 3.0% )よ
表す各ペプチドの結合スコアを用いて,次に対応す
。
りも大きかった( P = 0.038 )
る変異について,HAMSTeRS に報告されていると
おり,インヒビター陽性か陰性のいずれかの状況と
HAMSTeRS データベースにおけるインヒビター
の存在と関連付けられる因子
ミスセンス変異患者の 6.52% においてインヒビ
ターの存在が報告された( 95% CI:5.31 ∼ 7.92% )
。ミスセンス変異患者間の HA の重症度
( Table 4 )
は,インヒビターの存在と有意な関連を示さなかっ
た( P = 0.163 )のに対して,インヒビター発生頻
度は各ドメインの変異部位と統計的に有意な関連
,
A2[ 7.79% ],A3[ 4.71% ],
を示した( A1[ 2.02% ]
a1a2a3[ 0.89% ],C1[ 10.33% ],C2[ 12% ],P
< 0.001 )
。しかしながら,FVIII の軽鎖,重鎖の変
異部位とは関連を示さなかった( P = 0.087 )。
関連付けた。
各ペプチドと 10 種類の HLA クラス II 対立遺伝
子との結合スコアは,インヒビターの存在と有意な
関連を示した( Table 5 )。すなわち,結合スコアの
平均値は,インヒビター陰性例の場合 10.01( 9.54 ∼
10.48 ),インヒビター陽性例の場合 7.36( 6.32 ∼
8.40 )であった( P = 0.002 )。ここで注目すべきは,
この有意な関連性が HA の重症度の調整後( P =
0.002 ),および HA を引き起こすミスセンス変異
を担う FVIII ポリペプチド鎖の調整後( P = 0.004 )
とも持続したことである。これに対し,ミスセン
ス変異を担う性質がある FVIII ドメインの調整後に
は,有意な関連性が消失した。
予測結合スコアとインヒビターの存在との
関連性
HAMSTeRS データベースから選択された変異ペ
プチドに対応する野生型 FVIII ペプチドについて,
それぞれ結合スコアを予測した。R593 における一
例 を Table 3 に 示 す。R593 を 網 羅 す る 15 ア ミ ノ
酸長の各ペプチドについて,解析対象の 10 種類の
HLA-DR 対立遺伝子毎に IEDB を用いてパーセンタ
イル順位を予測し,15×10 のマトリックスを作成し
た。HLA-DR 毎に,15 アミノ酸長 15 本のペプチド
。
のパーセンタイル順位最小値を選択した
( Table 3 )
次に,この 10 種類のパーセンタイル順位最小値
から,10 種類の HLA-DR 対立遺伝子の平均値を
算出した。これを「 結合スコア」と呼ぶ( Table 3 )。
次に,結合スコアを自動的に三分位に分割するこ
とにより,カテゴリー変数に変換した。その結果は
Table 5 と一致し,結合スコアが最小のペプチド( 予
測される親和性の平均値が最も高いペプチド )に変
異を認める場合,インヒビターの割合は有意に高
くなった( P = 0.006,Table 6 )。重症度,個々の
FVIII ドメインの部位,FVIII の重鎖/軽鎖の部位
によるインヒビターの割合について二変量解析を
P 値はそれぞれ 0.168,< 0.001,0.086
行ったところ,
であった( Table 4 と一致 )
。インヒビターの割合
と結合スコアとの関連性は,HA の重症度およびミ
スセンス変異を担うポリペプチド鎖の調整後,多
変量解析においてなお統計的に有意であった( P =
0.0013 )。これに対し,個々のドメイン調整後の多
9
Full Translation: A. D. Pashov, et al.
変量解析では,統計的有意性が消失した( Table 6,
P = 0.113 )
。よって,本解析におけるそれぞれの
ドメインの重要性についてより詳細に検討した。
A1,A2,A3,C1 の統合ドメインの重要性と,
C2 ドメインの重要性を分けて検討した。A1,A2,
A3,C1 ドメインを解析したところ,変異ペプチ
ドがインヒビター陽性である状況と,対応する野
生型 FVIII ペプチドの結合スコアとの間に,統計
的に有意な関連性が認められた( Table 7,それぞ
。同様に,C2 ドメイン単独で解析す
れ P = 0.002 )
ると,予測結合スコアと,各ペプチドと関連付け
られるインヒビターの状況との間に有意な関連性
。なお,C1 および A ファ
が示された( P = 0.03 )
ミリードメインでは,この関連性については,イ
ンヒビター関連変異に対応するペプチドに対し低
た。しかしながら,C2 ドメインの場合,結合スコ
結合スコア( 予測される親和性の平均値が高値 )で
アとインヒビターの状況との OR は逆相関を示した
あるという当初の仮説と一致した( 予測される親和
( 予測される親和性の平均値が低い[ 結合スコアの
性の平均値が低い[ 結合スコアの三分位が高い ]場
三分位が高い ]場合,OR = 3.56[ 95%CI = 1.10 ∼
合,OR = 0.29[ 95%CI = 0.14 ∼ 0.60 ])と な っ
11.52 ])。この結果から,C2 ドメインの変異ペプ
10
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの insilico 計算による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者のインヒビター発生を予測する
チドに対応する野生型 FVIII ペプチドは,本解析対
解析とは異なり( 2 ),本研究例のインヒビターの状
象の HLA-DR 対立遺伝子全セットとの結合親和性
況は HA の重症度と関連付けられないことが示さ
が高くなく,無差別性を示す度合いが低いものであ
れた。こうした結果が得られるのは,今回の解析対
ると示唆される。従って,FVIII 分子の残りのエピ
象患者が,血漿により測定される FVIII の残存活性
トープとは異なり,C2 ドメインの変異では,イン
に関わりなく,すべて CRM 陽性であり,対象患者
ヒビター誘発リスクの最大化と,無差別性の低いエ
の免疫系が,内因性の変異 FVIII に対する教育を受
ピトープの減少とが関連付けられた。
けているためだと考えられる。今回の解析は,本研
究例のインヒビターの状況が,FVIII 重鎖または軽
鎖の選択的な変異部位と関連付けられないことも
考 察
示している( 2 )。
今回のデータが示すとおり,ミスセンス変異をも
本研究の仮説どおり,今回の結果には,HLA に
つ HA 患者においては,複数の HLA クラス II 対立
対する野生型 FVIII ペプチドの予測親和性の平均値
遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの予測親和性の
(無差別性)と,解析対象の対応する各変異ペプチ
平均値は,FVIII インヒビターの発生と関連付けら
ドに対するインヒビターの状況との間には,統計的
れる。FVIII 分子の大きさから,結合アッセイを用
に有意な関連が認められた。ここで注意すべきは,
いて今回の in silico 予測を確認することは不可能で
HAMSTeRS データベース収載の各患者の HLA ハ
( 38 )
。ここで重要なのは,IEDB のコンセン
プロタイプ自体は入手できないことである。そのた
サス法の予測検出力の検証が実際の結合データに
め,今回の方法では,公開されている野生型 FVIII
先立って実施され,所定の親和性の閾値に対する分
の塩基配列を用いて得られるペプチドを対象に,
類が行われていることである。この場合,親和性の
閾値 1 μM についてプロットした受信者動作特性曲
HLA クラス II 対立遺伝子に対する in silico 予測に
よる親和性と,FVIII 変異およびインヒビターの状
線の曲線下面積は約 0.8 であった( 36,39 )。注目すべ
況に関する経験的な臨床データとを単に人為的に関
きは,in vitro において HLA 対立遺伝子との結合
連付けている。従って,今回得られた統計的に有意
を認めるすべてのペプチドが,in vivo において必
な関連性は,HA 患者が外因性 FVIII に寛容である
あった
( 36 )
ずしも T 細胞応答を誘導しないことである
。
場合,ペプチドと HLA の相互作用とそれに伴う各
各ミスセンス変異が FVIII インヒビター発生リス
種 T 細胞の形成が重要な役割を果たしていることを
クに及ぼす影響を具体的に研究するため,また HA
示すものである。今回の結果は,各個体の HLA ハ
患者における不完全長 FVIII 分子産生例,または T
プロタイプに関し,野生型 FVIII 由来ペプチドによ
細胞個体発生中の胸腺における不完全長 FVIII 分子
るインヒビター発生に対し予測される親和性の平均
提示例と考えられる例を対象とすることにより,生
値(すなわち無差別性)の確定に道を開くものであ
じ得る不均一性を最小化するため,完全長 FVIII が
る。これにより,臨床試験では,CRM 陽性患者の
産生されないと関連付けられるミスセンス変異を
免疫系の状況,HA を引き起こすミスセンス変異,
本解析から除外した。よって,今回の解析では,収
HLA-DR ハプロタイプが同定され,対応する野生型
載例 1456 例に対応する,異なる型の変異 500 例に
ペプチドの in silico 予測による親和性が適合する。
付随する異なる変異アミノ酸 383 例に焦点を当て
こうした関連性は,これまでの研究でも in silico
た( Table 2 )。重要なのは,こうした選択例を用い
において示唆されてきたが( 41,42 ),今回の研究では,
た場合,FVIII 分子の様々なドメインにおけるミス
変異が位置付けられているドメインを多変量解析
センス変異の分布と,インヒビター関連の変異の分
により調整後,この統計的有意差が消失することを
( 19,40 )
の分布と本質的に類似することで
明らかにした。本稿の仮説どおり,A1,A2,A3,
ある。さらに今回の解析からは,ミスセンス変異患
C1 ドメインの変異部位のみを対象にした解析では,
者集団においては,HA 患者集団全体を対象とする
変異ペプチドがインヒビター陽性である状況と,低
布が,既報
11
Full Translation: A. D. Pashov, et al.
結合スコア( HLA クラス II に対応する野生型ペプ
少なくとも 1 つに対応することが認められている
チドに予測される親和性の平均値が高値 )との間に
( データは示されていない )
。例えば,W2229C 変
統計的に有意な関連性を認めた。反対に,C2 ドメ
異は,2 種類の HLA-DR 対立遺伝子( DRB1*0301,
イン単独で変異部位の解析を行ったところ,変異ペ
DRB1*1101 )のみ高結合親和性を示すと予測され
プチドがインヒビター陽性である状況は,HLA ク
る領域に生じるが,インヒビター陽性である状況に
ラス II 対立遺伝子に対し,野生型ペプチドの無差
関連付けられるのは対象例の 32% である。加えて,
別性のレベルが低い方が高頻度にみられることを
複 数 の「 高 リ ス ク 」F8 遺 伝 子 型 が FVIII の C2 ド
示した。
メインに位置付けられている( W2229C,P2300L,
にわたる親和性の平均値( 結合スコア )を分析し
( 18,45 )
N2286K )
。しかしながら,C2 ドメインの疎
水性が FVIII 分子のそれ以外のドメインに比べ上昇
た結果,FVIII 分子における無差別または免疫優
している( 46 )ことが今回認められた差異の原因なの
性の T 細胞エピトープの存在が明らかとなった。
か,あるいは C2 ドメインがフォン・ヴィレブラン
van Haren らは,本研究対象の対立遺伝子に一致
する HLA ハプロタイプを持つ健康供血者 4 名の
単球由来樹状細胞から,FVIII 由来ペプチドを分
離している( 43 )。同定されたペプチドは,FVIII 分
ド因子( 47 )または活性化膜のリン脂質に結合する際
今 回 10 種 類 の HLA ク ラ ス II 対 立 遺 伝 子 全 体
子のすべてのドメインから生じたものである。本
に果たす役割がそうであるのかは,未だ解明されて
いないままである。
謝 辞
知見とは対照的に,Steinitz らによる最近の研究で
本研究は国立保健医学研究所( INSERM ),フラ
は,免疫優性のペプチドが,C2 ドメインを除くす
ンス国立科学研究センター,ピエール・エ・マリー・
べての FVIII 分子のドメインに存在することが示さ
キュリー大学( パリ VI 大学 ),Partenariats Hubert
( 44 )
FVIII に関する免疫処置により抗 C2 抗体が生じて
も,C2 ドメインのエピトープに反応する T 細胞ハ
イブリドーマはみられなかった。C2 の変異ペプチ
Curien( Programme RILA 2011,25250XM ),フラ
ンス国立研究機構( ANR-07-MRAR-028-01 )の支
援を受け,CSL-Behring S.A. 社( フランス , パリ )
および助成契約番号( 115303 )の下で画期的新薬
構想合弁事業( Innovative Medicines Initiative Joint
Undertaking )から助成を受けた。助成内容は,欧
州連合第 7 次フレームワーク計画( FP7 / 2007 ∼
2013 年 )からの出資,および EFPIA 加盟企業の同
ドに対応する野生型ペプチドと,残りのドメインの
種の出資からなるものである( より詳細な情報につ
変異部位に対応する野生型ペプチドにより得られ
。LG は
いては,www.abirisk.eu を参照されたい )
た今回の結果の不一致は,上記知見に一致するも
INSERM( フランス , パリ )の客員研究員であった。
れている
。Steinitz らのグループは,A1,A2,
B,A3,C1 ドメイン由来ペプチドに対し増殖す
る FVIII 欠乏 E17 HLA-DRB1*1501 トランスジェ
ニックマウスから,CD4 + T 細胞ハイブリドーマ
を作製することが出来たのである。しかしながら,
のである。さらに,免疫原性を定義する複数の因
子は,FVIII 分子の様々なドメインに等しい影響を
及ぼさないことが示唆される。重要なことは,高
結合スコア( 複数の対立遺伝子に対し予測される親
和性の平均値が低値 )であっても,その野生型ペプ
チドが,分離された一部の HLA 対立遺伝子の優れ
各著者の貢献度
ADP,TC,SVK,SLD は本研究をデザインし,
本稿を執筆した。ADP,TC,LG,YR,SLD は本
研究を実施した。ADP,TC,LG,BM,JO,AP,
SLD は本データを解析した。
たエピトープでないという意味ではないことであ
る。それどころか,C2 ドメインの変異部位はすべ
て,きわめて低い結合スコア( 特定の対立遺伝子に
対しきわめて高い親和性 )をもつ野生型ペプチドの
12
開 示
著者らは,対立または偏りがあると認められる利
害関係がないことを表明している。
HLA クラス II 対立遺伝子に対する FVIII 由来ペプチドの insilico 計算による親和性は,F8 遺伝子にミスセンス変異を有する血友病 A 患者のインヒビター発生を予測する
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