第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙 芳香族炭素環の触媒的不斉水素化 Catalytic Asymmetric Hydrogenation of Aromatic Carbocycles 池田 龍平、桑野 良一(九大院理) 芳香環の不斉水素化は、天然物に普遍的に存在する光学活性環骨格を直接構築することができ、 また、複数の置換基を持つ基質を用いれば同時に複数の不斉点を導入することができるため、有機 化学的に優れた合成手法になりうる。これまでに様々な芳香環の高エナンチオ選択的な不斉水素化 が開発されてきたが、芳香族複素環に対し芳香族炭素環の不斉水素化の報告例は極めて少ない。今 回、新たに二つの芳香族炭素環の触媒的不斉水素化を開発したので紹介する。 2003 年に Zhou らが高エナンチオ選択的な反応を報告して以来、キノリンの触媒的不斉水素は多 数の報告がなされている。1 これらの報告では、いずれもキノリンの複素環側が選択的に水素化さ れており、炭素環側が不斉水素化されたという報告はない。ところで、以前当研究室では PhTRAP -ルテニウム触媒を用いることにより、ナフタレンの不斉水素化が高いエナンチオ選択的で進行す ることを報告している。2 この触媒をキノリンの水素化に用いたところ、予想外にも炭素環側の還 元された 5,6,7,8-テトラヒドロキノリンが得られた。検討の結果、8 位置換キノリンを基質とするこ とにより高いエナンチオ選択性で炭素環側の水素化が進行することがわかった。3 ところで、これまでに知られている芳香族炭素環の不斉水素化はいずれも多環式芳香族炭素環の 反応であり、単環式芳香族炭素環(ベンゼン環)の高立体選択的な触媒的不斉水素化は未だ達成され ていない。これはベンゼン環の水素化に高活性な金属錯体が知られていないためである。そこで、 ベンゼン環の部分還元と生じる中間体の不斉水素化を別々の触媒に担わせるという発想の元、ベン ゼン環の還元に高活性な金属担持触媒と -ケトエステルの不斉水素化に利用される不斉ルテニウ ム触媒を組み合わせて用いたところ、サリチル酸エステルが高い立体選択性で水素化されることを 見出した。 <参考文献> 1)Wang, W.-B.; Lu, S.-M.; Yang, P.-Y.; Han, X.-W.; Zhou, Y.-G. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10536. 2)Kuwano, R.; Morioka, R.; Kashiwabara, M.; Kameyama, N. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 4136. 3)Kuwano, R.; Ikeda, R.; Hirasada, K. Chem. Commun. Submitted. 発表者紹介 氏名 池田 龍平(いけだ 所属 九州大学大学院 りゅうへい) 理学府 化学専攻 学年 D3 研究室 分子触媒化学研究室
© Copyright 2024 ExpyDoc